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山下耕太郎

積立投資の売り時はライフイベント・目標金額・リバランスの3つで考えよ

投資の「売り時」は悩ましい

近年、老後資金2,000万円問題が取りざたされたことなどもあり、老後に備えて長期の資産運用を始めた方も多いのではないでしょうか。

その際難しいのは、金融商品売却のタイミングです。

今回は元証券会社勤務で金融ライターの山下耕太郎さんに、人生を通じた資産形成のための「積立投資の売り時」についてご解説いただきました。

積立投資とは

積立投資とは、毎月一定金額を定期的に購入していく投資手法で、投資信託で行うのが一般的です。

ネット証券を利用した投資信託の場合、100円からと少額で始めることができ、自動買付を利用すれば手間もかかりません。

価格が変動する金融商品を常に一定の金額で、かつ時間を分散して定期的に買い続ける手法を「ドルコスト平均法」といいます。投資信託の基準価額は毎日上がったり下がったりしますが、基準価額が低いときにたくさん購入し、高いときに少ししか購入しないことになります。その結果、平均購入価格を下げる効果があるのです。

また、積立投資専用の少額投資非課税制度「つみたてNISA」も、2018年から始まりました。つみたてNISAは、毎年の非課税枠(上限40万円)までの投資で得られた利益に対し、最長20年間非課税になる制度です。つみたてNISAで投資を始めようと考えている人も多いでしょう。

積立投資でよくある失敗

買った投資信託の値動きを気にしてしまい、短期売買してしまうというのは、初心者にありがちな失敗です。積立投資は最低でも10年という長期投資が基本です。長い目で売り時を判断する必要があります。

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しかし、投資初心者は慣れていないため、毎日の値動きに反応してしまうのです。相場が下落しているときには評価損が増えていくので怖くなり、積立投資を止めてしまう人が増えます。「ドルコスト平均法」で考えると、せっかく量が仕込めるチャンスなのにもったいないことです。

また、相場が上昇しているときも、「利益をいったん確定し、下がったらまた買おう」と考える人が増えます。しかし、ふたたび価格が下がるかは分かりませんし、積立をストップしている間は投資する量も増えません。積立投資は時間をかけて量を増やしていく投資手法なので、途中でストップすることはオススメしません。

投資信託は部分的な売却ができる

投資信託を売るときは、「全額売らなければいけない」と考えていませんか?

全額を売却した後に上昇が続くと、高い値段で買い直すことは難しいでしょう。

「前に売却した値段まで下がったら買おう」と考えても、そのまま上昇相場が続くと再スタートできなくなるのです。

ですが、投資信託を部分的に売ることで、残りの資産で上昇機会を待つことができます。

そして、もし値段が下がっても一部分を利益確定させたという納得感を得られるのです。

積立投資での売却ルール

それでは、どんな時に投資信託を売却すればいいのかについて解説します。

ライフイベントに合わせて売却

資産運用は10年以上の長期で考えるべきですが、先ほども述べたように投資信託は途中で一部を売却することもできます。積立投資での資産運用の計画は人それぞれです。ですから、「長期目標」と「短期目標」を立ててみてはいかがでしょうか。

たとえば、現在30歳であれば、「60歳の定年までに2,000万円の資産を作りたい」というのが長期目標です。しかし、人生には結婚や住宅購入、子どもの進学、親の介護などさまざまなライフイベントが発生します。

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そうしたライフイベントではまとまったお金が必要になるケースが多いので、かかる費用だけ積立投資の一部を売却して活用するのです。

ですからライフイベントに合わせ、いくら資産形成をするかという短期目標も立てておくことが大切なのです。

目標の達成度合いを定期的に確認する必要はありますが、あまり頻繁に価格を見ない方がいいでしょう。月に1度程度チェックすれば十分です。

とくに、価格が気になって毎日チェックするのは逆効果になります。相場の値動きが気になって解約してしまう恐れがあるからです。

目標金額に達したとき

ライフイベントの時に必ず相場が上昇しているとは限りません。ですから、ライフイベントの数年前に相場が大きく上昇し、目標金額を達成したら売却しても構いません。

短期目標であるライフイベントは時期と金額が決まっていますが、老後資金である長期目標は柔軟に考えた方がいいでしょう。「60歳までに2,000万円の資産を作る」という目標を立てることは大切ですが、何歳まで生きるか分かりません。「人生100年時代」を迎え、長生きリスクにも備えなければいけないからです。

ですから、60歳以降も資産運用は続けます。70歳、80歳になっても継続するべきです。もちろん、年齢が上がるにつれ債券を増やして株を減らすなど、大きく資産を減らさないようにリスクを下げて運用することになりますが、資産運用をしなくていい時期はないと考えるべきです。

短期的な値上がりには「リバランス」

日々の値動きに一喜一憂することはありませんが、保有する投資信託が大きく値上がりしている場合に考えたいのが「リバランス」です。先ほど、ライフイベントに合わせて短期の目標金額が貯まっていたら売却してもいいと書きましたが、そうしたイベントがなくても大きく値上がりした資産を売却するのです。

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たとえば、国内株式・国内債券・外国株式・外国債券の投資信託を25%ずつ購入していたとします。

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株式市場が上昇して日本の株式の比率が35%になったら、10%売却してその資金を債券などに回します。そうして、ふたたび25%ずつの比率に戻すのです。

ただ、リバランスは頻繁に行う必要はありません。年に1回程度で十分でしょう。また、リバランスが手間だという人は、最初から「バランス型投資信託」を購入しておけば、自動的にリバランスしてくれるので便利です。

暴落相場が来たらどうする

2008年のリーマンショックや、2020年のコロナショックのような大暴落は定期的にやってきます。老後資金として長期で積み立てた資金が、このような大暴落で30~50%減ってしまったら、大きなショックでしょう。

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積立投資を始めたばかりなら損失は少ないものの、10年、20年と積立投資をしていたら、数百万~数千万円の資産を失うことがあります。ただ、投資信託で長期運用している以上、値動きがあって当然です。

ほぼ10年に1度大暴落は起こりますが、過去のITバブル崩壊(2000年)やリーマンショック(2008年)などの大暴落があっても、2~3年で下げ止まっています。そこから急回復するか時間がかかるかの違いはありますが、その後に好調な相場が来るのです。

市場が上昇していても下落していても、積立投資を淡々と継続するようにしましょう。

まとめ

積立投資は少額から始められ、自動積立を利用すれば手間がかかりません。ですから、投資初心者に適した投資手法といえます。しかし、難しいのは資産を売却するタイミングです。いつ売却するかを決めるためには、ライフイベントに合わせた資産運用計画を立てておく必要があります。

短期目標(結婚や住宅購入などのライフイベント)では、目標金額に達したら売却するようにしましょう。一方、老後資金のような長期目標はある程度大雑把に考えるようにします。70歳や80歳になっても運用は続くからです。

また、年に1回はポートフォリオ(資産の組み合わせ)を見直し、リバランスすることもオススメです。リバランスが面倒だという人は、バランス型の投資信託を購入するようにしましょう。


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Profile

金融・投資ライター
山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。


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