お役立ち・トレンド
株式投資や不動産投資などと比べて、まだ歴史の浅い太陽光発電投資。そもそもなぜ太陽光発電が投資対象となるのでしょうか。元銀行員のライター・織瀬ゆりさんに解説していただきました。
いまや様々な投資手法が存在しますが、「太陽光発電投資」という投資手法を耳にしたことはありますか。
太陽光発電投資は不動産投資や株式投資に比べるとまだまだ認知度が低く広く知れわたっていないものの、上手く活用すれば中長期的に収益を挙げることができます。
今回は、太陽光発電投資の概要と仕組みをはじめ、メリットやデメリット、そして今後の展望についてまとめてみました。
「太陽光発電投資ってなに?」と思っている方はぜひ、参考になさってください。
太陽光発電投資とは、土地や太陽光パネルをはじめとした設備を活用し、実際に発電した電気を電力会社に売却して利益を得る投資手法のことを指します。
太陽光発電投資が人気である理由の一つに、国が定めた「固定価格買取制度(FIT)」が関係しています。
再生可能エネルギーの普及を意図し始まったFITでは、発電した電気を一定期間は同一価格で買い取ってもらうことができ、太陽光発電投資に使われる産業用太陽光発電であれば、20年間は買い取ってもらうことが可能です。なお、家庭用太陽光発電は一定要件を満たせば、10年間は同一価格での買取をしてもらうことができます。
また、初期費用は少々かかるものの、不動産投資や株式投資等に比べて難しい知識が求められることもありません。
初期費用の相場ですが、住宅用だと平均kW単価が34万円から40万円ほど、産業用だと平均kW単価が20万円から30万円となっています。
規模が大きくなることで、kW単価が値下がりするため、このような数字となります。住宅用は屋根などに5kWほど取り付け、産業用は10kW以上の導入がほとんどです。(目安費用、住宅用5kWで170~200万円、産業用で200~300万円となります)
災害や盗難、故障のリスクは存在するものの、一度設置すればよほどのことがない限りシミュレーション通りにいくケースが多く、良くも悪くも基本的にほったらかしで大丈夫な投資方法だといえるでしょう。
そして、2017年4月の改正FIT法にて、低圧(50kW未満)の太陽光発電についてはメンテナンスが義務化されました。もちろん、産業用のみならず家庭用の太陽光発電も対象となっています。
メンテナンスの対象は太陽光パネル、パワコン、架台、ケーブル等の構成機器となっており、メンテナンスをすることで安全を確保できるだけでなく、発電性能の維持にも繋がります。
そのため、義務化されていない50kW以上の高圧発電についても、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
一見、面倒くさいと思われがちな太陽光パネルの定期メンテナンスですが、管理業者に一括でお願いすることで管理が楽になります。
ある程度、初期費用が準備できることに加え、中長期的に収益を得たいと考えている方にとっては検討する価値のある投資手法だといえるでしょう。
先日、経済産業省によって発表された、2020年度の売電価格(FIT単価)は次の通りでした。
10kW未満 | 21円/kWh |
10kW以上50kW未満 | 13円/kWh |
50kW以上 | 12円/kWh |
そして2019年と比べ、2020年度から変更となった点がいくつか挙げられます。
なお、上記はあくまで2020年度以降に認定を受けたり、稼働を開始させたりした発電所に限られます。
つまり、
については、2020年度からの売電価格は適用されず、従来の価格や制度の下に売却することができます。
低圧発電所で求められる、「地域活用要件」は自家消費率が30%以上で自立運転機能を備えており、災害時でも活用できることと定められています。
そのため、従来認められていた遠隔地での低圧投資ができなくなりました。
とはいえ、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の場合には次のどちらかの要件を満たすことで、「全量売電」が可能です。
ソーラーシェアリングとは農地において農作物を育てながら太陽光発電をすることを指します。
しかし、20年間のFITを適用するためだけに、ソーラーシェアリングをすることはなかなかリスクの高い行動であり、基本的にはあまりおすすめできません。
FIT制度の適用期間が終わってしまった後、売電価格は大幅に下落してしまいます。
もし土地を購入して太陽光発電をしていた場合は、そのまま自家消費に回すことができますが、土地を賃貸している場合は更地に戻す必要があったり、場合によっては賃貸借契約の延長を検討しなければなりません。
また、更地に戻すときはソーラーパネルを撤去することになりますが、中には所定の手順を踏んで処分しなければならないケースもあり、それなりの費用がかかるでしょう。
前もって出口戦略を考えたうえで、太陽光発電を開始することが大切です。
2012年度において、発電量が10kW以下における1kWあたりの売電価格は42円でした。
2020年度の21円と比較すると、ここ8年ほどで売電価格が半減していることがわかります。
これだけ見ると、今から始めてもあまりリターンが得られないように感じてしまうかもしれません。
しかし、FITが開始されて間もないころは太陽光発電の設置費用や運転維持費がかなり高額であったことから、トータルで見るとそこまで大幅に下落したと一概に言うことはできないでしょう。
また、太陽光発電は設置タイミングに関わらず、10年前後で設置費用を回収できるように設置費用と買取価格が調整されています。
そのため、売電価格を気にするよりも、始めようと思ったタイミングで投資をスタートしたほうが結果として早く収益を得ることに繋がります。
太陽光発電投資の概要について理解したところで、ここではメリットについてご紹介します。
太陽光発電投資における主なメリットは、次の通りです。
それぞれ見ていきましょう。
太陽光発電は一度設置してしまえば、比較的管理に手がかからないというメリットがあります。
株やFXなどの投資と異なり値動きを負う必要はありませんが、日々の発電量だけはチェックしておくようにしましょう。
もし発電量が急激に低下したり、数値に異常があれば、それはパネルの故障や汚れが溜まっているサインになるので、あわせて押さえておいてください。
また、ソーラーパネルの故障を防ぐうえで数年に1度(場合によっては1年に1度)、定期メンテナンスが必要です。故障や破損が生じた際も、対応が必要となります。
とはいえ、所有者自身がするのではなく、基本的には専門業者に依頼して行いますので、やはりそれほど管理・運用に関する手間は大きくないといえるでしょう。
太陽光発電投資における利回りはFIT(固定価格買取制度)によって、一定額が保証されています。
FIT制度を利用して太陽光発電をすることで、20年の間は同じ価格で電気を売却することが可能です。FIT制度があることから、初期費用の回収シミュレーションがたてやすいことも特徴でしょう。
太陽光発電にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。
ここでは主なデメリットを2つ、ピックアップしてみました。
太陽光発電投資の最大のデメリットはなんといっても、天候や天災による影響から逃れられないことといえます。
日の出や日の入りの時間はある程度予測がつくものの、日々の天気ばかりはいつも予報通りにいくとは限りません。
そのため、売電量のコントロールができないところはデメリットだといえるでしょう。
また、天災でパネルそのものが故障してしまったり、滅多に起こることではありませんが、パネルそのものを盗難されてしまうことも。
とはいえ、天災による一定の被害や盗難は損害保険でカバーすることができるため、太陽光発電投資をはじめるときは保険加入についても、検討することをおすすめします。
先述したように2020年度からFIT要件が少し厳しくなったこともあり、今から太陽光発電投資を始めようと考えている場合には、2019年度以前にFIT認定が得られている新築・中古物件を探してみるのがおすすめです。
中古の太陽光発電であれば、稼働したときの価格がそのまま20年間(住宅用の場合は10年間)適用されるので、効率的に投資をおこなうことができます。
太陽光発電投資とよく比較される投資手法に、「不動産投資」が挙げられます。
不動産投資では太陽光発電投資のようにFITのようなものはなく、入居が安定してさえいれば一定の収入を生涯にわたって得ることが可能です。
とはいえ、人口減少による不動産需要の低下や、居住環境の変化に伴う空室率の上昇など、太陽光発電投資にはないリスクも存在します。
一方で太陽光発電投資もFIT制度終了後の見通しが不透明なことに加え、天災が生じた場合の損害は不動産投資より深刻になるケースも多く、一概にどちらの投資の方が儲かるといった断定的な判断を下すことはできません。
自身の状況を踏まえたうえで、いずれかニーズに合致する方を選択するようにしましょう。
今回は太陽光発電投資の概要について、お伝えしました。
以前お伝えした「ESG投資」が、昨今注目を集めていることと相まって、再生可能エネルギーである太陽光発電への注目も高まっています。
そのため、2020年度以降も一定の需要がある投資手法といえるでしょう。
不動産投資に比べるとまだまだ知名度は低い太陽光発電投資ですが、この記事をきっかけに少しでも興味を持っていただけていたら幸いです。
【投資初心者必見】NISAや積立投資といった、まず知っておくべき情報配信中!
その他の記事はこちらから