お役立ち・トレンド
不動産投資は、代表的な長期投資のひとつです。
一般的に長期投資はリスクを小さくする効果や、安定的に資産を形成できるというメリットがありますが、長期的に不動産を保有することで、自分では予測できないハプニングが起こることも。
今回は、ライターの木元楓さんに、自身が実際に不動産経営で経験したハプニングと対応について、体験談をご紹介いただきました。
あなたがお持ちの物件は居住用ですか? 事業用ですか?
わたしの所有している物件は居住用です。個人で不動産投資をする場合、事業用物件は流通市場に出ている数が少ないため、居住用物件を保有している大家さんが多いと思います。賃貸に出ている物件も居住用がほとんどです。しかし、近年はSOHO*1という働き方も増えてきているため、住居物件を事務所で使用したいという人も増えてきています。
*1 SOHO(ソーホー)は、Small Office Home Office=スモールオフィス・ホームオフィスの略称で、企業などから委託された仕事を、情報通信を活用して自宅や小規模事務所等で個人事業主として請け負う労働形態のことです。(財団法人日本SOHO協会より引用)
賃貸物件を事務所として使用したい場合、基本的には大家さんの許可をとる必要がありますが、個人事業の場合は看板を掲げず、お客さんの出入りがなければ、許可をとる必要はないそうです。
わたしの場合もその「大家さんに許可をとる必要がない」ケースだったのですが、同じアパートの住人からこんなクレームが入ったのです……。
クレームが入った物件は6部屋が入る1棟アパートの1階にある部屋でした。2階の住人の方から入ったクレームの内容は、「裸に近い格好の女性が何人か出入りしている」「共用部分で座り込んでタバコを吸っており、下着がほとんど見えている。マナー違反ではないか」「外から見るとその部屋のカーテンは破けており、どんな人が住んでいるのか不安に思ってしまう」というものでした。
真相はわかりませんが、住人の方の憶測では「風俗店か何かの待機所か女性の居住用に使われているのではないか?」とのこと。
賃貸契約時に借主から「事業用として使用する」という話は聞いていませんでした。しかし、“看板を掲げず、お客さんの出入りがなければ、許可をとる必要はない”ため、もし風俗店等の待機所か女性の居住用に使われていたとしても「大家さんに許可をとる必要がない」ケースになってしまうのです。居住用として利用している実態があるのかはわかりませんでしたが、女性が数人出入りしていることも「その人たちは友人です」と言われてしまえばそこまで。このクレームをどう処理していいものか悩んだわたしは、この部屋を仲介してくれた不動産会社に相談しました。
不動産会社はそのクレーム内容だと、契約違反等には該当しないとのこと。タバコのマナー・玄関前や廊下などの共有部分の使い方については、改善を求める文書で警告することを提案され、警告文書を作成してもらいました。
幸いその文書を出したあと、共用部分の使用については改善されました。そして何のトラブルも起こらずに1年くらいたったころ、その部屋の住民は退去していきました。退去後の部屋は、トイレの便座のふたが壊れていたり、たばこのヤニで壁紙がビックリするほど黄ばんでいましたが……結局、何の目的でこの部屋が使用されていたのかは、闇の中です。
それまでわたしは、借りてもらえるなら入居者は誰でもいいと思っていましたが、この出来事から、トラブルが起こる可能性が高いと思われる人には入居を断る必要があるのだなと感じさせられました。入居前であればある程度借主は選べますので、トラブルを避けたい場合は、仲介の不動産会社に入居を希望している人の雰囲気や属性を確認することも大切だと思います。
また先ほど登場した、6部屋が入る一棟アパートの話です。もう10年以上同じ部屋に住む1階の住人の方から「窓からの雨漏りがすごいので、対処してほしい」と連絡がありました。わたしは遠方に住んでおり、その物件を直接見に行けないため、知り合いの不動産会社の人に状況の確認と必要な対応を依頼しました。知り合いの不動産会社が外から雨漏りの状況を確認すると、窓一面に雨漏り対策のペットボトルが並べられており、とても困っている様子だったと教えてくれました。
雨漏りの修繕は、軽度の雨漏りですと、雨漏りをしている部分をコーキング剤で埋める軽作業となりますので、修繕費用は3万円程度です。しかし、わたしの場合は物件が築25年。老朽化に伴いコーキングだけでなく外壁全体の塗装をし直さなければならず、その工程と費用がビックリするほど大きかったのです。3階建てのアパートは塗装をするための足場を設置する必要があり、その足場設置費用が高くなるとのことで、比較のために3社に見積もりをお願いしましたが、最低でも300万円は必要でした。
正直、そんなに大きなリフォームや修繕をしたことがなかったので、「する必要があるのか……」「しなければならないのか……」と思う気持ちもありました。そのことを見積もりをお願いした修理業者に相談すると「外壁塗装は、10年から20年に1度はする必要がある。今まで一度も外壁塗装をした様子がないので、今回は避けられないだろう。お金が用意できないようであれば、この物件をわたしが買い取って修繕してもいいよ」と相談した修理業者2人に言われました。
2人に相談して、2人ともそう提案してくれるということは、もちろん善意もあるとは思いますが、“この雨漏り物件は外壁塗装前でも買い取る価値がある“、“外壁塗装をしてもそれ以上のメリットがある“ということを感じました。
そんな経緯があり、外壁塗装の工事をすることを決めました。工事を決めたのが梅雨時期だったので、すぐには作業ができず依頼してから2か月半くらいかかりました。
費用が大きくなることを心配してくれた修理業者から、もしかしたら火災保険から保険金がおりるかもしれないとアドバイスをもらいました。その内容は、5年前にその地域で降った大雪の影響で屋根が破損したことが証明できれば、保険で一部の費用が補填されるというもので、その地域の一棟マンションのオーナーが何人も適用になっているので、書類を提出してみてはどうか? というものでした。親切に、大雪で屋根が破損したことを証明する書類を作成してくださり、それが適応になれば150万円は火災保険が下りるとのこと。
5年前に入っていた火災保険は、書類を提出するときには保険の契約期間が満了となっていたので、適応になるのか心配をしていましたが、大雪が降ったときが保険期間内であれば、きちんと保険金が支払われるとのことでした。
150万円の保険金が下りれば、外壁塗装工事の費用の一部にできます。とてもありがたい! と保険会社に電話をしたのですが……わたしの保険の契約内容だと大雪に対しての保証がなかったため、その請求はできず、保険金もおりないとのこと。
内容を聞いてみると、わたしが入っていた保険会社の建物に対する保険には、火災保険と総合保険の2種類がありました。そのうち、火災保険は「火災、落雷、破裂、爆発、建物外部からの物体の衝突」が対象、総合保険は「火災保険の対象及び風水害などの自然災害、地震」が対象になる保険です。
わたしは火災保険には加入していましたが総合保険に加入していなかったため、大雪によって屋根が破損したという内容だと、保険の対象外になったようです。
教えてくれた修理業者の人もそんなケースがあるのかと驚いていましたが、残念ながら外壁塗装工事の費用は全額自己負担になりました。
賃貸でも分譲でも持ち家でも、火災保険に加入することは必須事項のように感じますが、「火災保険に加入しているから何かがあったときに安心」ではなく、保険の補償内容に関しても確認をする必要があるということが今回分かりました。また、修理業者の人のアドバイスがなければ火災保険を請求しようとは思いませんでしたので、ただ加入するだけではなく保険の内容を把握し、どんな時に保険金を受け取れるのかも知っておくと、いざというときに出費を抑えられるんだなということも勉強になりました。
同じ火災保険でも、保険会社によって保証の内容がそれぞれ異なりますので、一度ご自身の加入している保険の内容を確認してみることをおすすめします。
一棟マンションの外壁塗装をするときに、古くなっていたアパート内の共有部分の塗装とタイルと壁紙の張替えも行うことにしました。リフォーム会社との打ち合わせで、外壁の色や内装の色を細かく決めていくのですが、そのリフォーム会社が今までリフォームしてきた物件は、赤をアクセントに入れたときの評判が高く、赤をアクセントカラーにすることを勧められました。自分一人で決めていたら、きっと無難な色を選んでしまっていたと思うので、その提案はとても好印象で、アパート内の階段手摺部分を赤く塗ることにしました。
一通り色を決めた後、わたしは遠方に住んでいるため作業はリフォーム会社におまかせして進めてもらったのですが……。
リフォーム作業の途中で経過を確認しに行ったところ、リフォーム会社とわたしで赤く塗装する範囲の認識に相違があったようで、手すりだけでなく階段部分がすべて赤く塗られていたのです!!
もう、『赤!!』の印象が強すぎて、ほかのところには目がいかない……いくらなんでもここまで赤くておかしいと思わなかったの? と思ってしまうほどでした。
しかし、赤くすることを決めたのも、赤の範囲を細かく指定しなかったのも自分の責任……住むのは自分ではないけれど、どうしても赤すぎることに納得できなかったわたしは、作業していただいた後に申し訳ないけれど、塗りなおしてもらうことに決めました。現場にはリフォーム会社の人もいたので、言いづらい状況でしたが、今言わなければアパートが「赤!!」になってしまう……と勇気を出して「申し訳ないのですが、思っていたイメージより全体的に赤いので、この階段部分を塗りなおしたいのですが費用はどのくらいかかりますか?」と聞きました。リフォーム会社の人はわたしの気持ちを汲んでくれたのか、「まだ、マスキングテープがはがされていない状態だからそんなに手間はかからないし、最初の見積もりのまま希望の色に塗りなおしますよ」と言ってくださいました。本当に今言ってよかった! と心から安堵したことを覚えています。
遠方に住んでいたので、正直途中経過を見に行くのも面倒でしたが、経過を確認しに行かなければ、何百万も払ったのに納得がいかないモヤモヤした塗装になってしまうところでした。リフォーム会社の人に迷惑はかけてしまいましたが、本当にあのタイミングで経過を見に行ってよかったと思います。
また、リフォーム会社との打ち合わせ場所が現地ではなかったことと、写真などを使わず言葉のやり取りだけで色の采配を決めたことなどが、この認識の相違が起こった原因だと思いました。リフォームをするときは完成のイメージをきちんと映像化して伝えることが重要だなと思いました。
不動産経営で起こったハプニング3選、いかがでしたでしょうか。
不動産投資は長期投資のため、ほかにも予測のつかないハプニングが起こることがあります。
わたしのハプニングは、「入居者をある程度選別すること」「建物の保険は補償範囲をしっかり確認すること」「リフォームをするときは完成のイメージを明確に伝えること」で防げるものだったかと思います。このように事前の対策で避けられるハプニングもありますので、このハプニング体験談を、皆さんの不動産経営にお役立ていただけますと幸いです。
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ライター
木元楓
投資用不動産の売買をしている不動産会社での営業事務経験あり。現在は自身でも投資用不動産を所有し、個人で不動産貸付業に9年従事。