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山下耕太郎

私募REIT(不動産投資信託)とは?J-REIT(日本版不動産投資信託)との違いとメリット・デメリットを解説

機関投資家が買っている私募REITとは?

少額からできる不動産投資として人気のJ-REIT(日本版不動産投資信託)は、取引所に上場していることから、金融商品として取引することが可能です。一方、同じREITでも私募REITは上場しておらず、取引所での取引はできません。今回はこの私募REITの特徴とメリット・デメリットについて、元証券マンの山下耕太郎さんにご解説いただきました。

私募REIT(不動産投資信託)とは

J-REIT(日本版不動産投資信託)私募REIT(不動産投資信託)
対象一般投資家機関投資家
最低投資額数万円1億円程度
流動性
募集随時定期的
運用期間無期限無期限
価格変動大きい小さい
価格決定証券取引所での価格鑑定評価額

J-REIT(日本版不動産投資信託)は少額から投資が可能で流動性が高い一方、上場しているので株式市場との相関性が高く、価格変動リスクが高いというデメリットがあります。

一方の私募REIT(不動産投資信託)とは、上場していない不動産投資信託のことです。

私募REIT(不動産投資信託)は、借入および増資により資金調達を行ったうえで不動産を取得し、決算期ごとに投資家に対して分配金を支払うという一連の流れはJ-REITと同じです。

私募REIT(不動産投資信託)はその特徴もあり、年金や金融機関などの機関投資家を中心に人気を集めています。

J-REIT(日本版不動産投資信託)と同じように、運用期間の制限がないのが大きな特徴です。運用期間が無期限の投資法人とすることで、保有している不動産の売却時期を柔軟に選択でき、短期的な不動産市況に影響されにくいのです。

価格があまり動かない点も特徴に挙げられます。私募REIT(不動産投資信託)の投資口価格(株価)は、決算期ごとに取得する不動産鑑定評価額にもとづいて算出された値段をもとに決められます。そのため、証券や資本市場の影響を比較的受けにくく、投資口価格は大きく変動しません。

長期投資を前提にしている投資家にとって、毎日時価を算出する必要がない点もメリットです。

こうした特徴から、年金や金融機関などの機関投資家を中心に人気を集めています。

私募REIT(不動産投資信託)の誕生は2010年

J-REIT(日本版不動産投資信託)は、2001年9月に「日本ビルファンド投資法人」と「ジャパンリアルエステイト投資法人」が東京証券取引所に上場しスタートしました。その後、J-REIT(日本版不動産投資信託)の数は増加し、2020年4月時点で63銘柄が上場。時価総額は17兆円に成長しています。

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出典:不動産証券化協会

一方、私募REIT(不動産投資信託)は2010年11月に第一号ファンド「野村不動産プライベート投資法人」が組成されました。そして、不動産証券化協会の資料「私募リート・クォータリー№18」によると、2020年3月時点の投資法人数は35、資産総額は3兆6,953億円になっています。

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出典:私募リート・クォータリー№18

私募REIT(不動産投資信託)の投資者は機関投資家

募集とは、新たに発行される有価証券の取得申し込みの勧誘です。J-REIT(日本版不動産投資信託)のように多くの投資家に対しておこなわれる募集を「公募」、年金や金融機関など特定の投資家や少数の投資家だけに対してのみ行われる申し込みの勧誘を「私募」といいます。

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私募REIT(不動産投資信託)は上場していないことから、金融市場の動きに強く影響されることなく、不動産の市場価格を直接反映した価格形成がなされ、投資リスクを減らす効果が期待できます。ですから、長期で安定的に資金を運用する要求に応えられるので、金融機関や年金基金のような機関投資家が主な投資者になっているのです。

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出典:私募リート・クォータリー№18

また、私募REIT(不動産投資信託)の保有物件はオフィスが42.5%ともっとも多く、賃貸住宅18.0%、物流施設16.9%、商業施設12.4%と続きます。

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出典:私募リート・クォータリー№18

オフィスは賃料水準や空室率が景気動向に左右されやすく、景気感応度が高くなります。しかし、賃貸住宅は賃料水準が景気に左右されにくく、景気感応度は低いといえます。

物流施設は長期かつ決まった賃料での契約の場合が多く、賃料の安定性(落ち着き度)は比較的高い用途です。また、商業施設はテナント契約が長期契約かつ賃料固定なら景気感応度は比較的低いといえますが、賃料が売上による歩合制なら景気感応度は高くなります。

私募REIT(不動産投資信託)のスポンサー

スポンサーとは、私募REIT(不動産投資信託)で運用する不動産の原所有者で、投資法人に対して対象物件を譲渡します。スポンサーは物件情報の提供という観点でも大切な役割を担っているので、私募REIT(不動産投資信託)の銘柄選定においても考えるべき重要事項です。

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私募REIT(不動産投資信託)は物件の追加・取得を必要に応じて行なっていくため、将来的に銘柄の構成や内容は変化していきます。長期投資を前提とし、流動性の制約もある私募REIT(不動産投資信託)への投資に関しては、スポンサーや投資法人がどのような物件を追加取得していくかという成長戦略も注目すべき点なのです。

私募REIT(不動産投資信託)のメリット

リターンの安定性

J-REIT(日本版不動産投資信託)は、上場市場での需給が投資口価格に影響を与えます。つまり、不動産市場のほかに資本市場や金融市場の影響を受けやすく、国内株式との相関も比較的高くなるのです。一方、私募REIT(不動産投資信託)は非上場なので、時価(価格)は決算期(一般的に半年)ごとの鑑定評価にもとづき算定される価格となります。

そのため、J-REIT(日本版不動産投資信託)に比べて資本市場や金融市場が与える影響は限定的で、価格変動は相対的に少なくなります。また、私募REIT(不動産投資信託)の投資期限は無期限です。

ですから、物件入れ替えのための売却はあるものの、一時期に保有物件をまとめて売却することはありません。その結果、不動産市況の影響を抑えられるのです。さらに、投資期間が長期になることでインカムリターンが蓄えられれば、キャピタルロス(不動産価格の下落)を補えるため、より安定したリターンの獲得が見込めるのです。

物件や用途の分散

J-REIT(日本版不動産投資信託)は、個人投資家を含む幅広い投資家層からの資金調達を想定していて、数万~数十万円から購入できます。一方の私募REIT(不動産投資信託)は機関投資家限定ですが、年金基金や地方金融機関、中央金融機関など幅広い投資家から資金調達を行なっており、最低投資金額も1億円程度からとなっているのが通常です。

ですから、運用資産規模が大きい私募REIT(不動産投資信託)は数千億円以上の規模となっており、物件や用途の分散度が高いポートフォリオを組めるのです。分散を十分に図ることができるので、リスクを抑えながら、安定的なリターンを望めます。

私募REIT(不動産投資信託)のデメリット

J-REIT(日本版不動産投資信託)に比べると売却しにくい

J-REIT(日本版不動産投資信託)は上場しているので、市場での売却は比較的容易です。一方、私募REIT(不動産投資信託)は非上場のため、J-REIT(日本版不動産投資信託)と比べると売却はしにくくなります。つまり私募REIT(不動産投資信託)は、投資家が資金を回収したいときに換金できるかどうか、つまり売却できるかどうかの問題があるのです。

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流動性を担保する仕組みには、投資家同士で私募REIT(不動産投資信託)の売買を行う方法と、投資法人に対して払戻請求を行う2つの方法があります。

J-REIT(日本版不動産投資信託)に証券取引所が存在するように、投資家同士で私募REIT(不動産投資信託)の売買を行う方法が有効に機能するためには、取引できるマーケットの形成が必要であり、私募REIT(不動産投資信託)市場のさらなる拡大が求められています。

投資法人に対して払戻請求する方法に関しては、内部留保を払戻の原資に充てることが考えられます。私募REIT(不動産投資信託)もJ-REIT(日本版不動産投資信託)と同じように、減価償却費相当分の資金を内部留保することが可能だからです。

ただ、内部留保資金は保有物件の修繕費や配当など様々な用途に利用されるため、戦略的に運用していく必要があります。そのため、いざというときに売却しやすい、投資金額の小さい物件を組み入れるなどの対策をしている私募REIT(不動産投資信託)もあります。

まとめ

個人投資家でも売買できるJ-REIT(日本版不動産投資信託)と異なり、私募REIT(不動産投資信託)は金融機関や年金などの機関投資家が投資するREITです。非上場なので流動性は劣りますが、証券市場や資本市場の影響を受けにくいというメリットがあります。

J-REIT(日本版不動産投資信託)の17兆円に対して3兆7,000億円程度と、まだ市場規模は小さいものの、今後も機関投資家のニーズが高い市場として成長していくでしょう。

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Profile

金融・投資ライター
山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う


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