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年間1,000万人以上の外国人旅行者が訪れる大阪。2025年の大阪万博開催や、リニア中央新幹線の大阪延伸も予定されており、今後もインバウンド需要が続くことが見込まれます。
そんな大阪の繁華街・難波や梅田からもアクセスのよい谷町六丁目に、地元の不動産会社「株式会社ラシュール」が民泊施設を建築中です。建築のための資金は、クラウドリアルティで募集。
今回は、大阪にゆかりのある不動産ジャーナリスト・四宮朱美さんに、大阪と谷町六丁目の将来性について解説していただきました。
いきなり私事ですが、半世紀前の思い出にさかのぼります。1970年、大阪で日本初・アジア初の万国博覧会が開催されました。その6年前の東京オリンピックと併せて、当時の日本人にとっては、日本が国際社会に先進国として名乗りを上げる第一歩になったと実感できた出来事です。オリンピックの記憶は幼すぎて鮮明ではありませんが、大阪万博は家族で参加して、その空気に触れてドキドキしたものです。テレビ電話や電気自動車、動く歩道など、今ではあたりまえになっている技術が、子どもの頃の思い出として強く印象に残っています。
そして今年2020年の東京オリンピック・パラリンピックに続いて、2025年に再び大阪万博が開かれることになりました。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを体験できる「最先端技術の実験場」にするというコンセプトがあげられています。半世紀前の記憶がよみがえり、否が応にも期待が高まることになります。
クラウドリアルティの次のプロジェクトが大阪だと聞き、なるほどと納得しました。オリンピック・パラリンピックは約1ヶ月の期間ですが、大阪万博は約半年の長期間になります。来場者数約2,800万人、経済波及効果は約2兆円を見込んでいるようですが、1970年の万博の約6,421万人という来場者数や現在のインバウンド状況を考えると、もっとたくさんの人が訪れるのではないかと期待してしまいます。
加えて注目したいのが、大阪市全体が特区民泊として位置づけられているということです。特区民泊は通称で正式名称は、「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」。国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊のことを指します。2018年4月で、東京都大田区、大阪府、大阪市、北九州市、新潟市の一部、千葉市が特区民泊の実施地域として指定されています。
通常の住宅宿泊事業(いわゆる民泊)では年間180日までしか営業できませんが特区民泊では年間を通じて受け入れ可能、さらに当初6泊7日以上だった最低滞在期間が2泊3日に緩和されました。この制度を使えば旅館業法の許可を取得する必要はありませんので、かなりハードルが低くなります。需要と要件がうまくかみ合い、大阪では今後ますます宿泊施設運営のニーズは高まるでしょう。
今回、クラウドリアルティで資金調達を行い、民泊施設を建設するのは、大阪の人々に「谷六(たにろく)」の愛称で親しまれる「谷町六丁目」。地下鉄谷町線と長堀鶴見緑地線が交わり、梅田や心斎橋、天王寺といった大阪の主要な都心部は地下鉄で4分~8分とスムーズにアクセスできるのが魅力。まさに大阪市中央区、大阪の中心に位置しています。
太古の時代は現在の大阪市のほとんどは海で、大阪城から住吉まで連なる「上町台地」だけが半島のように海に突き出していたといわれています。谷町六丁目がある「谷町」一帯も上町台地が縦断し、坂や階段の多い街。飛鳥・奈良時代には壮大な難波宮が築かれ、安土桃山時代には豊臣秀吉が大阪城を中心に町を整備していた場所です。
実は私にとって「谷六」は身近な存在です。というのも私の実家が10年前から同じ谷町線の駅に変わり、帰阪するたびによく訪れている街だからです。
なぜ、たびたび足を運ぶかというと、第二次大戦の空襲で焼け残った古い大阪の風情が残っていること、周辺に空堀商店街というユニークな商店街があること、そして個性的でおもしろい店が次々に開店して目が離せないというのが大きな理由です。
大正時代から昭和初期の古い町家や長屋が数多く残り、レトロな雰囲気の残る街並みは今ではかなり珍しい景色。風情あふれる細い路地が縦横無尽に交差しています。そんな場所でここ数年注目を集めているのが、古民家や長屋を再生した飲食店や雑貨店に複合ショップです。個性的なヴィンテージ雑貨や洋服が売られていたり、ジェラートやチョコレートといった一品に力を入れているカフェがあったり。迷い込むことが楽しい街は外国からの旅行者にも人気が出てくるはずです。
また、忘れてはいけないのが商店街。松屋町筋から谷町筋を挟んで上町筋まで、東西約800mにわたる「空堀どーり商店街」「はいからほり」「空堀商店街」の3商店街が一つにつながっています。昔ながらの庶民的なお店や安売りスーパーが並んでいるかと思えば、フレンチやイタリアンのレストラン、お昼時には行列ができるカレー屋や蕎麦屋もあり、外食には困りません。
東京でいえば谷根千と戸越銀座をミックスして、20年前の代官山の裏通りを加味したような街だと勝手にイメージしています。このユニークな街並みに、今回の民泊施設がどんな風に影響を与えるかは興味深いところです。
以前は「天下の台所」として日本経済を支えていた大阪ですが、ここのところヒト・モノ・カネなどの全てが東京に集中しすぎて、少しおとなしい存在になっていました。けれども東日本大震災以降、全てを東京に一極集中させることはリスクと考え始めた企業が、あらためて西日本の中心地である大阪に支社や支部を作ってリスク分散を行っていると聞きます。
関東エリアの人にはわかりにくいかもしれませんが、訪日外国人に人気のある岡山・広島は山陽新幹線を利用すれば1時間あるいは1時間20分程度で大阪からは行くことができます。加えてリニア中央新幹線・北陸新幹線の開業で新大阪駅が、広域交通ネットワークのハブ的な存在になろうとしています。
リニア中央新幹線は東京(品川)から名古屋まで最速40分、大阪までを最速67分で結ぶ計画です。着工済みの東京~名古屋間は2027年に開業予定、名古屋~大阪間はさらに18年後の2045年完成を予定していました。というのも大阪まで延伸することで増える総事業費を懸念し、東京~名古屋間の開通から大阪延伸着工までに8年程度の空白期を設ける予定でした。それを民間では困難なインフラ整備などに低金利で融資する「財政投融資」と呼ばれる国の制度を活用し、2037年に前倒ししようとしています。
東京~金沢間ですでに開業している北陸新幹線も、金沢~敦賀間については工事着工済で敦賀以降のルートは2017年3月に敦賀~小浜~京都~松井山手~新大阪というルートに決定しました。いずれにしても西日本の中心として期待は高まっていくはずです。
また、空からのアクセスで考えると、関西国際空港から南海電鉄「ラピート」なら、・新今宮・天下茶屋につながり、JRの特急「はるか」ならば、新大阪駅・天王寺駅に停車します。さらにJR西日本は、うめきたエリアで梅田貨物線の地下化をすすめていて、2023年春に完成予定、同時に北梅田駅(仮称)が設けられ、「はるか」も停車する予定です。加えて白浜や那智勝浦など和歌山方面へとつながる特急「くろしお」も停車予定。和歌山・関西国際空港・天王寺・西九条(USJ)・大阪(梅田)・京都が一本につながる訪日外国人が好むゴールデンルートになります。
いずれにしても近い将来、東京をはじめとした国内からのアクセスはもちろん、世界各国からのアクセスもより便利になることが予想できます。すでにクレジットカード運営の米マスターカードが毎年発表する「世界渡航先ランキング」では、2016年度版で「急成長渡航先ランキング」で大阪が1位になっています。
外国から来た友人に大阪を説明するときに、「日本の中のラテン文化の街」というと、一様に納得してくれます。
大阪が築いてきたフレンドリーで気楽なムードは、多様な人たちにとって親しみやすい環境だと思います。特区民泊としていち早く名乗りを上げたのも、そんな気質からかもしれません。ダイバーシティのある街・大阪のポテンシャルは投資の視点からも高いと思います。
不動産メキキスト
四宮朱美
宅地建物取引士、マンション管理士、マンション管理業務主任者、ファイナンシャルプランナー、ホームステージャー。20代で自宅マンションを購入、以後、数々の売却・購入を体験、老朽化マンションの建替えにも建替推進委員として取り組む。不動産・住まいの分野を歩み、SUUMOの不動産広告を20年以上制作。首都圏・関西の不動産・街情報に特化。現在は不動産全般のコンサルティング、ジャーナリストとして活動している。著書「マイホーム物件 得なのはどっち?」(河出書房新社)
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