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四宮朱美

プロが語る、京都の不動産探しの難しさと不動産クラウドファンディングの魅力

長年京都の不動産を見てきたプロが解説

年間8000万人を超える観光客が訪れる京都は、単に観光地としてだけでなく不動産投資の対象としても注目を集めています。しかし、京都はプロでも物件探しが難しいエリア。なぜ京都での物件探しは難しいのか。そんな京都の物件に「不動産クラウドファンディング」で投資をする利点や注意点について、京都を愛する不動産ジャーナリスト・四宮朱美さんにレポートしてもらいました。

目次

京都で“よそ者”が不動産を探すのが難しい理由

京都にもう一つの居場所が欲しいと思いついてからすでに10余年。学生時代から何度も訪れていたけれど、大人になってから眺める京都はさらに魅力的に。単に歴史的建造物が多い、観光スポットがたくさんあると言ったわかりやすい魅力だけではなく、昔から醸成してきた文化的な厚みがあることに気づいたのです。

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それは長年愛されてきた喫茶店があったり、店主の好みが色濃く打ち出されたブックショップがあったり、伝統の技術を保ちながら時代に合わせた商品開発から生まれる作品が手に入れられる店があったり。大資本のチェーン店ではカバーできないインデペンデントな魅力にあふれた場所を見つけられる点でした。

くわえて都心のマンション住まいの私にとって、京都の町家が醸し出す風情は格別なものでした。効率とか快適といった視点とは異なる、京町家独特のしつらえが贅沢な空間に感じて魅了されてしまったのです。

また当時は外国人観光客が今ほど多くなく、不動産価格も東京に比べればリーズナブル。新宿や六本木の開発が進み、個人での不動産投資のハードルが高くなっていた東京に比べて買うにしても借りるにしても、将来の投資の面からもポテンシャルが高いと感じ始めていたからです。

けれども別の面でのハードルがありました。首都圏にいたのでは圧倒的に得られる情報が少ないのです。首都圏や大阪の物件情報はインターネットや情報誌などで比較的簡単に手に入りますが、歴史のある京都市内、ましてや古い町家の情報は他のエリアに住んでいたら簡単に知ることはできません。訪れるたびに町の不動産屋の張り紙を見て回りましたが、町家の情報は簡単に手に入れることはできません。何度も足を運んではさまざまなエリアのホテルやゲストハウス、京町家に泊まり、どのエリアが自分買うべきかを模索していました。

その間に京都の人気は急激に上昇、インバウンドの大きな流れが始まり、京町家ブームが起こりました。当然、価格は高騰。しばらく京都での不動産購入は無理だとあきらめていました。

ところが、別のカタチで京都の不動産投資に参入できる方法があることを知りました。それが不動産クラウドファンディングです。一口5万円から京都の町家に関わるチャンスがあると聞き、俄然身近に感じたのです。

新旧が融合する京町家宿泊の魅力

そこで、不動産クラウドファンディングで資金調達を行い宿泊施設に生まれ変わった京町家「紡 松原御幸町」の内覧会に参加し、試泊をさせてもらうことにしました。

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京都市下京区にある「紡 松原御幸町」の外観(株式会社レ・コネクション提供)

場所は四条通と五条通の中間点にあり、ロケーションとして理想的です。町家リノベーションの宿泊施設は増えていますが、今後、立地によって人気に大きな差が出てくるのは容易に想像できます。

内覧会当日は土砂降りの雨にもかかわらず、たくさんの人が参加していました。隣接するご近所の方も顔を出されていたのが印象的でした。「親戚が集まったときに使用したい」と高評価のようです。住宅の密集した京都中心部では、やはりご近所と良好な関係を築くことが宿泊施設の成否につながる可能性が高く、その点でも安心感を覚えました。

また出資者の方も参加されていました。「不動産を自分で所有するのは知識や経験が必要だが、クラウドファンディングなら挑戦しやすい」「3年という短い期間での投資なので不動産価格の変動の影響が少ない」といったクラウドファンディングで投資をする理由を聞くことができました。

室内のしつらえは京町家の良さを十二分に生かしつつ、水回り等は最新の設備で整えられています。たとえば要所々々に使われた建具は古材が活かされ、にじんだようなガラスや格子戸は古民家好きには堪えられないポイントです。

また台所には井戸が残されていたり、昔ながらの竈(おくどさん)があったりしますが、実際にはIHヒーターが設置されていて、新旧のバランスが絶妙。現代生活に慣れた人間にとって、最新設備が整えられたうえで、意匠に関しては古民家の趣が再現されているというのが大切なポイントです。台所の火袋を活かした吹き抜けやベッドルームの窓から眺められる庭も特別な場所に滞在しているという満足感が感じられます。

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竈の上にはIHヒーターが設置されている(株式会社レ・コネクション提供)

何といっても特筆すべきはベッドです。シモンズ製のマットレスでの寝心地は朝まで深い眠りに誘われました。宿泊施設の一番の評価ポイントは眠りの快適さだと思っていますが、その点でも高評価です。

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緑が見えるベッドルーム(株式会社レ・コネクション提供)

京町家に滞在するゲストが何を望んでいるかをしっかり把握した空間は、京都リピーターにとっても満足できるものだと感じました。

「紡 松原御幸町」とは

築100年を超える京町家を一棟貸しの宿泊施設に再生。運営する株式会社レ・コネクションは、京町家の転借・改装等の資金1,650万円をクラウドリアルティのプラットフォームを利用し調達しました。

参考:~紡~石不動之町 京町家再生プロジェクト

今後淘汰が始まる京都の宿泊市場

外国人観光客が増え、京都の宿泊施設の予約が取れなくなってきていると感じていたのは私だけではないでしょう。

それがここ数年はホテルの建設ラッシュが起こったうえに、個人が賃貸マンションやビルをリノベーションしてホテルとして運営する例や、京町家を改装してAirbnbを通して提供する例も多くなってきました。

最近では季節を外せば平日の宿泊施設確保はそれほど困らないようになっていました。現在計画中の宿泊施設も多く、全て稼働しはじめる頃には、宿泊施設がさらに増え、利便性が悪い施設や特徴のない施設は苦戦を強いられる可能性も出てきました。

そんな問題への対応なのか、2018年6月15日の改正旅館業法の施行に合わせ、京都市では同法に関わる条例が改正・施行され、2020年4月1日以降は確実な措置が求められることになりました。結果的に簡易宿所を含む全ての旅館業施設に人の駐在が義務化されます。京町家の場合は宿泊施設まで10分以内で到着することができる場所(約800メートル以内)に管理人が駐在することが必要となります。

つまり京都以外に住む人間が宿泊施設を運営することが厳しくなるということです。まして個人経営では24時間の常駐は不可能に近いということになります。なかには清掃のみを業者に任せ、鍵も開閉がオートロック、何か問題が起きても電話応対のみという施設もありますが、これからは通用しません。玉石混交だった京町家の宿泊施設が自然淘汰され、快適な施設が残されるとすれば、カスタマーにとっては朗報かもしれません。

もちろん京都市内のインバウンド需要は底堅く、ハイシーズンや週末には宿泊施設が足りない状況は続いています。うまく運営できれば京都はつねにポテンシャルは高い立地です。

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今回試泊した「紡 松原御幸町」の運営主体企業である株式会社レ・コネクションはすでに30棟の京町家を運営しているプロ集団。専用のインフォメーションデスクで管理体制は整っています。

出資者の方も「リノベーションのお金のかけ方や運営はプロに任せるのが安心」と話していました。不動産投資は誰でも参入できるようで実は運営・管理が成否を分けるポイント。宿泊施設への投資でも、運営主体をしっかりと確認することが重要です。加えて、競争も激しい京都であれば、「紡 松原御幸町」のように立地やカスタマーの求める空間をプロデュースできているかもポイントとなってきます。

こうした見極めをすれば、数千万円単位ではなく一口5万円からできる不動産クラウドファンディングは初心者にとってもハードルが低い投資先だと思います。

あわせてどうぞ

「紡 松原御幸町」を運営する株式会社レ・コネクション代表取締役・奥田久雄さんに、京町家再生への想いを伺いました。

"人を結び 街を紡ぐ"    京町家再生への道のり(前編)
"人を結び 街を紡ぐ"    京町家再生への道のり(後編)

四宮朱美

Profile

不動産メキキスト
四宮朱美

宅地建物取引士、マンション管理士、マンション管理業務主任者、ファイナンシャルプランナー、ホームステージャー。20代で自宅マンションを購入、以後、数々の売却・購入を体験、老朽化マンションの建替えにも建替推進委員として取り組む。不動産・住まいの分野を歩み、SUUMOの不動産広告を20年以上制作。首都圏・関西の不動産・街情報に特化。現在は不動産全般のコンサルティング、ジャーナリストとして活動している。著書「マイホーム物件 得なのはどっち?」(河出書房新社)


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