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山下耕太郎

投資信託の手数料と人気ファンドのコスト比較

しっかり考えてますか?投資信託の「手数料」

クラウドリアルティでは、少額から始められる投資の情報を多く発信しています。中でも人気のテーマは、初心者でも始めやすい「投資信託」。ただ、手数料で得られる利益が少なくなってしまう可能性があるのも投資信託の特徴であり注意点。今回は、元証券マンの金融ライター・山下耕太郎さんに、投資信託の手数料と人気ファンドのコストについてご解説いただきました。

投資信託をコストの観点から解説

投資信託は「購入時・保有時・解約時」に手数料がかかります。これらの手数料は投資信託によってそれぞれ決まっているので、購入する前に確認しておく必要があります。

今回は、投資信託の手数料の解説と人気ファンドのコスト比較を行います。

投資信託の手数料

購入時手数料 基準価額の0~5%

投資信託を買う時にかかるのが「購入時手数料」。購入時手数料の上限はそれぞれのファンドの目論見書で定められていますが、上限を超えなければ販売会社(銀行や証券会社)がそれぞれ決めることができます。ですから、購入時手数料は投資信託の種類や金融機関によって異なり、ノーロード投資信託という手数料がかからないファンドもあるのです。

購入時手数料は、対面型の銀行や証券会社よりもネット証券の方が安い傾向にあります。

信託報酬(運用管理費用) 年0.4~2.5%

投資信託の保有中にかかるのが信託報酬(運用管理費用)。

信託報酬は、投資信託を運用・管理してもらうための経費として、投資家が投資信託を保有している間ずっと支払い続ける費用のことです。

特定の指数(日経平均株価やTOPIX)などへの連動を目指すインデックスファンドの方が、ファンドマネージャーが個別銘柄を選ぶアクティブファンドよりも、信託報酬は安い傾向にあります。

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信託報酬は日割りで計算し、投資家が預けたお金(信託財産)から毎日差し引かれます。1日分はわずかな金額ですが、10~20年と長期間保有すると大きな金額になるので注意が必要です。

信託財産留保額 0.1~0.5%

投資信託を解約する時にかかるのが「信託財産留保額」。信託財産留保額は、投資信託を解約する時に残った投資家にペナルティーとして支払う手数料です。ただし、投資家が別途支払う必要はなく、「基準価額の何%」といった形で、投資信託の解約代金から差し引かれます。ファンドの種類によって信託財産留保額の金額は異なり、通常は0.1~0.5%程度ですが、信託財産留保額が差し引かれないファンドもあります。

信託報酬はパフォーマンスを決める大切なポイント

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投資信託を長期保有した場合、もっとも影響が大きいのが信託報酬になります。信託報酬はファンドを購入した後、信託財産から自動的に引かれるので、手数料がかかっているという意識は薄れがちです。しかし、信託報酬は長期でのパフォーマンスを決める極めて重要な要素なのです。

たとえば、以下のようなパフォーマンスのファンドがあったとします。

A:運用利回り3.0%(年率) 信託報酬0.5%(年間)

B:運用利回り3.0%(年率) 信託報酬1.5%(年間)

利益として投資家の手元に残るのは、Aファンド「3.0%-0.5%=2.5%」、Bファンド「3.0%-1.5%=1.5%」になります。AファンドとBファンドの最終的なパフォーマンスは1.0%の差ですが、長期で複利運用した場合にどの程度の差になるか計算してみましょう。

たとえば、AとBのファンドを毎月5万円ずつ積立投資して、20年間運用したとします。その場合の、積立金額と運用成果は以下の通りです。

Aファンド(毎月5万円・想定利回り2.5%、積立期間20年)

<積立金額1,200万円、運用収益354.9万円、合計金額1554.9万円>

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出典:金融庁

Bファンド(毎月5万円・想定利回り1.5%、積立期間20年)

<積立金額1,200万円、運用収益198.4万円、合計金額1398.4万円>

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出典:金融庁

Aファンドの運用収益は354.9万円、Bファンドの運用収益は198.4万円と156.5万円もの差になりました。長期間での運用では、信託報酬1%の差がどれだけ大きくなるかわかると思います。

また、運用利回りはあらかじめ成果が約束されたものではありませんが、信託報酬は決まっているという点が重要です。一時的にパフォーマンスが高くても、信託報酬が高いファンドを選んでしまうと、運用成績が振るわなくなった時に信託報酬のコスト負担が大きくのしかかってきます。投資信託を選ぶ場合は短期的なパフォーマンスではなく、コストが十分に低いかどうかをきちんと見極めることが大切なのです。

必ず3つの手数料を確認するようにする

初心者は、投資信託を買う時の手数料(購入時手数料)のみを意識して商品を選びがちです。たとえばノーロード型投資信託の購入時手数料はかかりませんが、信託報酬(運用管理費用)が割高なものもあります。投資信託を購入する時は3つの手数料を必ず確認するようにしましょう。

投資信託にかかる手数料は、購入時手数料・信託報酬(運用管理費用)、信託財産留保額の3つです。それぞれの手数料がどの程度かかるのか、目論見書で確認しておくようにしましょう。

購入時手数料が無料のノーロードファンドを選ぶのはオトクです。ただし、信託報酬が割高な商品もあるので注意が必要です。そして運用の手間がかからないインデックスファンドは比較的信託報酬が安いという特徴があります。わずかな信託報酬の差でも運用で得られる利益に大きな差がつきます。とくに長期になるほど差は大きくなるので、信託報酬のチェックを怠らないようにしましょう。

金融庁が手数料開示で共通ルール

金融庁は2017年に金融機関が顧客の立場で助言や商品販売をする「顧客本位の業務運営に関する原則」を定めました。しかし手数料のわかりやすい説明は不十分で、手数料収入を増やすために次々と新しいファンドを勧めるなどの手法も依然として続いています。

そこで金融庁は、個人投資家が金融商品を購入する時の手数料負担を比べやすくするための共通ルールを設けることにしました。このルールは2021年にも導入される予定で、販売する金融機関が自らの手数料収入を優先して商品を勧めるのを防ぎ、個人の資産形成を後押しするのが狙いです。

このルールが適用されることにより、顧客が支払う信託報酬などの手数料に該当する部分を明らかにし、他のファンドとどちらの負担が大きいかを比較しやすくなります。「不透明でわかりにくい」投資信託のコスト負担も、来年からはわかりやすくなることが期待されます。

日本初の「ゼロ・ゼロ投信」誕生

投資信託の低コスト化は進んでいますが、2020年3月16日には、日本ではじめて購入手数料なし(0%)で、信託報酬もかからない(0%)公募株式投資信託が設定されました。野村アセットマネジメントが運用する世界株式のインデックスファンド「野村スリーゼロ先進国株式投信」です。

ただし、信託報酬がかからないのは設定から10年間で、2031年1月1日以降の信託報酬は0.11%(税込)以内で設定しなおすとされています。このファンドは野村証券のインターネットチャンネルでのみ購入可能で、つみたてNISA専用という条件はありますが、今後も購入時手数料や信託報酬がかからないファンドの設定が広がる可能性もあるでしょう。

人気投資信託の手数料比較

ネット証券最大手、SBI証券の6月月間販売金額ランキング上位の信託報酬は以下の通りです。

ファンド名信託報酬(税込)
1SBIバンガード・S&P500インデックスファンド0.0938%
2SBI日本株4.3倍ブル0.968%
3ニッセイ外国株式インデックスファンド0.1023%
4eMAXIS Slim米国株式(S&P500)0.0968%
5楽天日本株4.3倍ブル1.243%
6SBI3.7ベア0.913%
7ニッセイ日経225インデックスファンド0.275%
8eMAXIS Slim先進国株式インデックス0.1023%
9ダイワJ-REITオープン0.792%
10ひふみプラス1.078%

インデックスファンドの信託報酬は0.1%前後と、非常に安くなっていることがわかります。 また10銘柄のうち8銘柄が信託報酬1%を切っていて、信託報酬の安いファンドの人気は高いこともわかります。

まとめ

投資信託の手数料には、主に次の3つがあります。

  1. 購入時手数料
  2. 信託報酬(運用管理費用)
  3. 信託財産留保額

投資初心者は購入時手数料を重視する傾向にありますが、長期投資をする場合は信託報酬が一番大切です。投資信託を購入するときは、信託報酬を必ず確認するようにしましょう。また信託報酬などのコスト負担は、アクティブファンドよりインデックスファンドの方が安い傾向にあります。

証券会社のランキングなどで購入するファンドを選ぶ際は、パフォーマンスだけでなく、信託報酬などのコストも必ず確認するようにしてください。


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Profile

金融・投資ライター
山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。


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