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不動産関係の手続きで必要になる「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」。
どんな時に使い、どんなことが書いてあるのか。また、その取得方法とは?
不動産会社での勤務経験もある、不動産ライター・秦創平さんにご解説いただきました。
不動産を購入するときや住宅ローンの手続きをするときなどに、登記簿謄本が必要になることがあります。しかし、「登記簿謄本が身近」という方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、登記簿謄本に書かれている内容や、申請の方法などについてわかりやすく解説します。
登記簿謄本は、住宅ローン減税の申請をするときや家を売るときなどに必要です。住宅ローン減税の制度があるために、用途については馴染みがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、難しい書類というイメージも強く、何が書いてあるのかわからないという方もいるでしょう。まず、登記簿謄本に記載されている内容について解説します。
登記簿謄本は大きく4つのパートに分けられます。一般的な形式としては最初に表題部があり、ここには建物や土地の概要が書かれています。具体的には、以下のような情報です。
建物の場合
土地の場合
表題部をみると、どこにある何に使える不動産で、どのぐらいの広さがあって誰が所有者なのかといった情報を知ることができます。
表題部の次に記載される権利部(甲区)には、所有者に関する情報が書かれています。具体的には、以下のような情報です。
権利部(甲区)を見れば、対象不動産がいつ所有権移転したのかなどについて確認できます。ただし、いつの分までさかのぼって確認できるかについては、後述する書類の種類によって異なるため、注意しましょう。
権利部(甲区)に記載されているのは所有権に関する情報のみですが、権利部(乙区)には所有権以外の権利に関する情報が記載されています。
所有権以外の情報とは、例えば抵当権や賃借権などです。設定されている各権利について、登記年月日と権利者などの情報が記載されます。
例えば、住宅ローンを利用して金融機関による抵当権が設定されたときに記載される具体的な情報は以下の通りです。
一点注意が必要なのは、債権額から読み取れるのはローン契約額のみであるというポイントです。登記簿謄本取得時点での残債までは読み取れませんので、注意しましょう。
なお、権利部(乙区)の下には共同担保目録という記載欄があります。こちらには、例えば一戸建てをローンで買った場合に、担保対象となる建物と土地とが別々に概要記載されます。
登記簿謄本は、記載されている内容によって4つの種類を使い分けることができます。例えば、過去の権利関係を開示したくない場合などは、現在事項証明書を取得することによって対応が可能です。
建物や土地などが最初に登記されてから現在に至るまでの所有者や、担保とされていた不動産の情報など、登記情報として記録されている全ての内容が記載されているのが全部事項証明書です。ただし、後述する閉鎖事項証明書に記載されている情報は記載されていません。
現在事項証明書には、現在有効である権利関係のみが記載されています。つまり、以前の所有者や担保など過去の情報は記載されません。過去に発生した差し押さえや競売などの事実を知られたくない場合には、現在事項証明書を提出するとよいでしょう。
閉鎖事項証明書に記載される情報は以下の通りです。
閉鎖事項証明書を取得するためには、対象不動産が所在する地域を管轄している法務局で申請する必要があります。ただし、登記記録には保存期限が設定されているため、必ずしも全ての情報を確認できるとは限りません。
登記事項要約書は、登記情報として登録されている内容を確認だけしたい場合に利用されます。つまり、登記事項要約書が公的な証明書として利用できません。第三者に書類提出を要する場合は、必ず「証明書」と名のついている書類を取得するようにしましょう。
閉鎖事項証明書でなければ、登記簿謄本は最寄りの法務局窓口にて申請手続き可能です。閉鎖事項証明書を申請する場合は、対象不動産を管轄している法務局の窓口へ行く必要があります。
なお、法務局の窓口では、申請用の端末に情報入力して申請するか、もしくは登記事項証明書交付申請書に必要事項を記入して提出します。登記事項証明書とは登記簿謄本の別の呼び方で、現在の正式名称は登記事項証明書です。
窓口では、申請手続きの他に、証明書1通につき600円の収入印紙を購入する必要があります。窓口で申請手続きする場合は、現金を忘れずに持っていきましょう。
また、窓口で申請するほか、インターネットからも申請できます。インターネットから申請をするためには「登記・供託オンラインシステム」で利用者登録が必要です。インターネットバンキングによる手数料の支払いが可能で、最高でも500円と、窓口での申請よりも手数料を安く済ませることができます。
不動産を扱う仕事や法務関係の仕事などをしていないと、登記簿謄本に触れる機会はあまり多くありません。書類の種類によって書かれている内容が違う点などは、初めて申請するときに戸惑う人もいるでしょう。
一方、種類による記載内容の違いなどは、理解できればそこまで難しいことではありません。申請自体も複雑な手続きではないので、身構えずに手続きしてみましょう。
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