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資産形成は、将来への備えのために行いますが、備えに必要な金額は人それぞれです。大切なことは、自分に合った運用方法を見つけて、できるだけ長期で行うこと。今回は、ご自身が30代で夫、子どもと3人家族のライター・ikumiさんに、資産形成にあたって実際に活用している制度や投資方法についてご紹介いただきます。
そもそも資産形成をする目的をよく考えてみる必要があります。
目的はその人のライフスタイルやライフステージによって変わります。一般的には、人生の三大支出は「住宅費・教育費・老後資金」の3つです。全ての人が3つとも該当するわけではありませんが、どれか1つは当てはまるのではないでしょうか。
中でも「老後資金」は、もっとも時間をかけて準備ができる分、まだまだ先のことだと考えてしまいなかなか手が回らないものです。ですが、わたし自身はこの老後資金に重きを置いて資産運用を行っています。
資産形成のための運用は、最低限のリスクとリターンを把握し、自分に合った投資方法と有利な制度をうまく組み合わせて行うことが重要です。
基本の運用商品は、「株」と「債券」、「投資信託」です。税制面で有利な制度は、「NISA」と「確定拠出年金」の2つに分けられます。
わが家では、商品としては投資信託と株で運用を行い、制度としてはNISAと企業型確定拠出年金を利用しています。
投資信託のメリットは、プロに任せて運用ができるところです。世界中のあらゆる銘柄や通貨に、少額から投資ができます。
リスクを抑える投資方法として、投資のタイミングを分散することで1年あたりの価格変動のブレを抑える「時間分散」という考え方があります。時間分散には、「投信積立」が有効です。
毎月一定額、自分で決めた口座から引き落としを行い、投資信託を買付していきます。一度手続きをしてしまえば、自動的に投資を続けることができる仕組みです。この仕組みを、老後資金と子どもの教育費の一部のために利用しています。
投信積立以外の投資信託には、証券会社勤務時代に投資をしたものと、NISAを利用して投資したものを保有しています。
確定拠出年金は、自分で作る年金のことであり、働き方によって「企業型」と「個人型(iDeCo)」を選択します。確定拠出年金の魅力は、運用益が非課税になることと掛金の全額が所得控除の対象になることです。
夫の勤める会社では、企業型の確定拠出年金を導入しており、さらに「マッチング拠出」を採用しています。
企業型は、所得に応じた掛金を会社が拠出してくれます。マッチング拠出は、企業の掛金とは別に自分で追加の掛金を拠出できる制度です。企業型確定拠出年金を導入している企業の約半数が取り入れていますが、利用率は30%ほどであまり認知されていない制度かもしれません。
わが家ではこの制度を利用し、給与天引きで掛金を拠出しています。掛金の変更や停止は途中で可能ですが、60歳まで引き出しができません。無理のない範囲で続け、60歳まで継続する予定です。
投資対象は自分で選ぶことができ、わが家ではリスクの高い新興国株のインデックスファンドで積立を行っています。
評価額は月に1度確認するようにしており、月によってはマイナスになることもありますが、60歳までの長期と考え、あえて値動きのあるもので運用をしています。
確定拠出年金は、途中で別の商品に切り替えをする「スイッチング」が可能なので、老後が近づいた際には、リスクを抑えた運用を検討予定です。
子どもの教育費の一部はインデックスファンドで積立をしています。投資教育の意味も込めて、10銘柄選びました。未成年の口座であれば、ジュニアNISAも選択が可能ですが、利用はしていません。
積立は、教育費が多くかかる可能性が高い18歳くらいまで行う予定です。本人の意向で使いたい用途が出来た場合や、自分で運用したいと言われれば、引き継がせようかと考えています。
NISAは、投資期間が5年間の「一般NISA」と、20年間の「つみたてNISA」の2種類があります。長期の積立は、確定拠出年金で行っているため、一般NISAを利用しています。投資をするタイミングなどは決めずに、相場が動いたときに、海外株式の投資信託を購入しています。
最近は、新型コロナの影響で下落した2020年3月に少し投資をしました。4月はさらに下がってすぐ含み損を抱えましたが、6月に入って持ち直しています。
振り返ってみると、4月も投資をすればよかったと思いましたが、やはり心理的に怖くなり断念してしまいました。投資のタイミングの難しさを痛感し、心が乱れない金額で投資をすることが大切だと改めて感じました。NISA利用の投資信託は、利益が出れば売却も検討しています。
資産運用に興味があり、証券会社で働いていたときに少しずつ投資信託を購入していました。NISA制度ができる前でしたので、リート系とハイイールド系の投資信託を課税口座で保有しています。
【参考】元証券マンが、価格の変動が大きくてもリートの投資信託を保有し続ける理由
【参考】私がハイイールド債投信を保有する理由と、投資の基本について
今のところ大きな支出の予定はないので、教育費で不足が出ない限り老後まで継続して運用していきたいと考えています。
投資の原点は「株式」と言われますが、個人的に初心者の人にはおすすめしません。
場合によっては高いリターンが期待できますが、あくまで余裕資金で投資を行う必要があります。その代わり、株で運用を考えている人は、投資信託で長期の積立投資を行うのが良いでしょう。
また、自分の勤めている企業に持株会の奨励制度がある場合は、活用することも検討してみてください。持株会は、毎月給与天引きで自社の株を購入できる制度です。
以前勤めていた会社では、10%奨励金がついたので、毎月給与天引きで積立をしていました。退職後積立自体はやめてしまいましたが、配当がでるので単元株のみ継続保有しています。
余裕資金で株式投資を考えている人は、株主優待がある銘柄から始めてみることもひとつの方法です。銘柄によっては、数万円からの投資で優待品がもらえる会社もあります。
わたし自身は、自分が使っている化粧品の自社製品がもらえる銘柄と、カタログギフトが届く銘柄を保有しており楽しみのひとつです。
資産形成は、自分にあった制度を利用しながら、まず始めてみることに意味があります。短期の値動きに一喜一憂せずに、長期で継続して運用をすることが成功の秘訣ではないでしょうか。
わたしは資産運用のファーストステップに、「投信積立」をおすすめしています。
少額から始めることができますし、強制的に投資をする仕組みを作ることで、知らない間にお金が積みあがっていきます。
長期投資や分散投資、リターンがリターンを生む「複利の効果」の恩恵を一番受けやすい投資手法と言えます。
投資する銘柄に迷ったら、国内や海外の株や債券などの複数の資産に分散して投資をしてくれる「バランスファンド」で積立を始めてみるのがおすすめです。
非課税制度を活用する際には、自身のライフプランにあわせて制度を選ぶことをおすすめします。
確定拠出年金は、税制上のメリットが大きいですが、60歳まで引き出しができないことが注意点です。
ライフプランがまだまだ流動的な人や、余裕資金が心もとない人は、つみたてNISAから始めてみる方がいいかもしれません。
資産形成や運用は、自分に合った方法で行わなければ意味がありません。
わたし自身、今のスタイルの運用を続ける予定ですが、家族構成や収入の変化などがあれば維持できない可能性もあります。運用方法は、状況に応じて見直しをしていきます。
資産形成の王道は、時間を味方につけて長期で運用をしていくことではないでしょうか。迷っている方は、ぜひ今からでも資産形成のファーストステップを踏み出してみてください。
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金融ライター
ikumi
国内大手証券会社で約10年間、資産運用コンサルティングビジネスに従事。有価証券・不動産運用、保険、相続・事業承継対策等の、資産にまつわる相談に対応。夫の転勤を機に退職し、専業主婦へ。2019年より家計管理と運用、FPとしての実務経験をもとに、金融系ライターとして執筆活動開始。不妊治療を経て第一子を出産し、絶賛子育て奮闘中。