イベントレポート

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旅をしながら、リラックスした環境で働ける時代をつくる――。九州アイランドワークの挑戦

即日満額成立した注目プロジェクトの魅力を語る

2020年1月、九州アイランドワーク株式会社(以下、KIW)と株式会社クラウドリアルティが、トークイベントを共催しました。登壇したのは、KIW社長の馬渡侑佑氏、同会長の村岡浩司氏、一般社団法人Work Design Lab代表理事の石川貴志氏。司会はクラウドリアルティ執行役員の幸田泰尚が務め、今春宮崎で稼働を開始するKIWのワークプレイスの魅力や必要性などを語りました。

【参考】KIW 宮崎プロジェクトとは?

目次

九州に無数の偶発性をデザインする場所を

幸田泰尚(以下、幸田) こんばんは、本日司会を務めますクラウドリアルティの幸田です。まずは、本日の登壇者に自己紹介をしていただきます。

村岡浩司(以下、村岡) 皆さん、こんばんは。今日は宮崎から来ましたが、日本の真ん中、東京のど真ん中で九州愛を思いっきり語りたいと思っています。

私は今年50歳になりますが、最初に地域に関心を持って街づくりに関わるようになったのは32歳くらいの頃です。商店街の一角にカフェを作り、その後は当時最年少で商店街の理事になりました。30代はほとんど毎日商店街の活動に参加していました。それから18年が経ち、街はどんどん寂しくなっていき、昔からあったお店がシャッターを下ろしていって……。ずっと、どうすればいいのか考えていました。

2年前、KIW社長の馬渡(まわたり)と出会いました。彼は宮崎県出身ですが、東京で活躍した後に九州に戻った人間で、九州らしい働き方ってなんだろうと語り合いました。

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今、福岡を中心にスタートアップが元気で、大学生や若い世代が起業して新しいことをやろうと盛り上がっています。私たちは、この福岡で生まれた熱を九州中に伝播させていきたい。九州の中の流動性を高めていきたいと思い、九州に無数の偶発性をデザインする場所であるKIWを作っているところです。

私と馬渡の出会いもそうなのですが、出会いの偶発性の中にしかイノベーションは起きないと思っています。

馬渡侑佑(以下、馬渡) こんばんは。馬渡と申します。ただ今紹介いただきましたが、宮崎県出身で、佐賀大学の建築学部で都市工学を勉強していました。卒業後、ITベンチャー、コンサル会社を経て、チームラボという会社で11年くらい新規事業の立ち上げをやってきました。チームラボは今でもお手伝いしています。

チームラボでは「学ぶ!未来の遊園地」という共同的な創造性、共創(きょうそう)をコンセプトにした教育的なプロジェクトで、他者と共に世界を自由に創造することを楽しむ「遊園地」のプロジェクトの立ち上げをやりまして。それが2013年くらいのことです。東京でやりたいことは大体できたかなと感じ、移住を決断しました。宮崎に帰ろうかと思っていたのですが、九州を回っていた中で大分県竹田市という場所にご縁があり、移住することにしました。

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竹田市は城下町で自然もあるんですが、人口は2万人ほどで。人口も減って地価も下がり、空き家だらけになっている訳です。竹田市に移住してから、街づくり、空き家の問題を目の当たりにしました。チームラボの仕事をしながら、4年くらい前から中心市街地の空き家対策のお手伝いをしています。

竹田市では城下町全体をホテルに見立てたホテル事業を行っていたのですが、なかなかうまくいかず……。東京に戻らなくてはいけないのかなと思っていた頃に村岡さんに出会い、一緒に話をする中でKIWを立ち上げるに至りました。

石川貴志(以下、石川) 改めまして、こんばんは。私はいわゆる副業ワーカーで、普段は東京で働いています。会社員をしながら、約80名の社団法人Work Design Labの代表をやっています。80名の内60名が会社員、残りが株式会社の代表やフリーランスです。私のような、組織を超えて働くサラリーマンが今後どんどん増えていくと感じています。私自身も地方と都会を繋ぐようなプロジェクトをやらせていただいており、宮崎にも関わりがあることから本日お招きいただきました。

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「はたらく」という行為を一つの場所から解放していく

幸田 自己紹介、ありがとうございました。続いて、村岡さんにKIWの事業について伺いたいと思います。

村岡 私たちのミッションは「はたらく」という行為を一つの場所から解放していくことです。

私たちは、人生の多くの時間を働くことに費やしています。時代は変わり始めていて、週末に職場から場所を変えて仕事をするという生活も広がり始めているし、副業や分業が進んでいく中で、「東京ともう一つの場所」「宮崎ともう一つの場所」という働き方が可能になるかもしれないなと感じています。九州を、アジアの中でもいち早くそういった働き方を実現できる島にしていきたいという想いがあります。

「働く」をオフィスから解放することで生まれることは大きく二つあります。一つは、その場所で働くこと自体を目的とした旅が生まれることです。今、定額で様々な場所に住み放題のサービスがどんどん生まれていますが、そういったサービスと我々のサービスが一つになった時に、旅をしながらリラックスした良い環境の中で働ける、そういったことができる時代になるのではと思っています。

【参考】定額住み放題サービスADDressについてはこちらをご覧ください。

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もう一つは、働く場を介したネットワークです。今、福岡から始まったベンチャーコミュニティがどんどん広がり、宮崎でも活発になり、大分や熊本でも盛り上がってきているとお話しました。ただ、それぞれのコミュニティはまだ混ざっていない。私はこれを混ぜ合わせることが大事だと思っています。

そのためにKIWは、正会員になってもらうとこれから九州中に作る数十、数百のワークプレイスを定額で使えるというサブスクリプションサービスを行います。

ワークプレイスには3種類あって、まずは今回クラウドリアルティで資金調達を行う宮崎の拠点のように、直営で規模の大きいものです。いろんな場所で仕事ができるとはいえ、ほとんどの時間は1ヶ所で集中して仕事をしたいというニーズが大半だと思います。そこで、毎日の仕事に必要な環境が整った中規模から大規模の、面積にすると100坪超えるようなワークプレイスを直営で作っていきます。

【参考】即日で満額成立した、KIWの宮崎拠点プロジェクトについてはこちらから。

2つ目は、既存のコワーキングスペース事業者と提携したもの。宮崎県内では自治体と連携協定を結んで、持て余している施設の活用にもつなげたいと思います。

3つ目は、小規模の無人ワークプレイスです。高速道路、無人駅、廃校、古民家と、いろんな遊休資産を活用することは、今の社会問題の解決や地方創生につながるのではないかなと思っています。1月からは、NEXCO西日本と宮崎大学と一緒に実証実験も始めています。

【プレスリリース】高速道路では初!SAにコワーキングスペース設置―宮崎大学、NEXCO西日本、九州アイランドワークによる共同研究・社会実験―

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馬渡 今回資金調達を行う宮崎拠点は、基本的に間仕切りのないフラットな空間を目指しています。広い空間に家具を置いて、席のスペースを余裕を持って取り、ゆったり仕事ができる場所にしていきます。

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現在整備中の直営拠点の内観完成予想パース

3Dプリンタなどを置いたファブリケーションラボを併設しながら、イベントなどで様々な方に使っていただけるようにしたいと思っています。

個人的には、子連れで行けるワークプレイスというのを実現したいなと。子どもが5歳と7歳なのですが、地方だと本当に子連れで行けるワークプレイスが見当たらない。パラレルキャリアや副業をしている方、子育て中のお父さん、お母さんが働きやすい環境を重点的に作り、新しい働き方の場所にしていきたいです。

石川 私も3人の子どもがいる父親です。地方と都市を繋ぐプロジェクトでは、地方に行くことも多く、最近ではワークスタイルだけでなくライフスタイルの変革も意識していて、家族連れで地方に行くこともあります。2019年11月には宮崎県庁にお邪魔したのですが、1日目はしっかり働きまして、2日目、3日目は青島のあたりに宿泊してしっかり遊んで帰りました。

働く人だけでなくその家族も含めて、「働く・暮らす・学ぶ・遊ぶ」のインフラが整っている地域が今後選ばれていくのではないかと思っています。

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人々がまじりあう場所がないのはもったいない

幸田 地方には、子どもたちが遊ぶ場所は無数にありそうですが、大人の働く場所が課題なんでしょうね。 

馬渡 私が移住した大分県竹田市には、働く場所が本当にありませんでした。東京で働いていた時はあまり会社にいくことがなく、基本的にお客様がいらっしゃるときだけオフィスに行って、後は現場にいたりとか、カフェや図書館で仕事をしていたりという生活でした。

最近まで、私の仕事場はコンビニエンスストアのイートインスペースでした。仲良くなったオーナーさんのお店で商品買うかわりに、長い時は8時間くらい作業させてもらっていました。朝、子どもを保育園に送って近くのローソンで働いて、その後移動して家の近くのローソンで働いて、と。

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村岡 田舎あるあるですよね。小さな街に行くと、働く場所がないから自分の部屋にこもっていないといけない。スターバックスもないしタリーズもないし、じゃあ自分の部屋以外のどこに行くのってなったら図書館か、最近はコンビニのイートインスペース。

幸田 なるほど。東京で働いている石川さんに聞きたいのですが、地方にワークプレイスを作るという村岡さんの取り組みは、日本にどういうインパクトがあるとお考えですか。

石川 何より、働く場所があると便利ですよね。宮崎県庁や宮崎市役所に行った際「ワークスペースみたいなところありませんか」と職員さんに聞いたんですが、ありませんでした。県庁の隣の文化センターで打ち合わせをしたのですが、ものすごい数の宮崎県民が訪れていて、私のように県外から来た人間もたくさんいるのに、両者がまじりあう場所がないのはもったいないと感じました。ですから、物理的なワークプレイスができてまじりあう場所となるとインパクトがあるのではないでしょうか。

クラウドファンディングで仲間を作る

幸田 最後に、ワークプレイス作りの資金調達にクラウドファンディングを選んだ理由を教えてください。

村岡 宮崎を皮切りとして、この後2拠点目、3拠点目と展開をしていくことを考えると、共感し、我々と一緒に事業を作っていきたいという方がひとりでも多い方が、展開のスピードは早いですよね。我々KIWの仲間になって、拠点を使ってもらいながら広げていけるかもしれない。クラウドリアルティという信頼できるパートナーが見つかったということで、今回クラウドファンディングに挑戦することになりました。

馬渡 大分で空き家をホテルに改修する事業をやっていたのですが、本当に資金調達に苦労をしました。オーナーさんが儲からないと空き家は減らないという問題意識を持っていまして、ファイナンスと事業性ってどちらも大事だなと。

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基本的に街づくりって、事業性が先にあって後からファイナンスがついてくるかたちで動いているのですが、これを並行してできるサービスってなかなかないんです。今回、クラウドリアルティとご一緒させていただいて、事業性を作りながら資金調達することができた。長期間一緒に伴走していただいたのは、かなり大きなことでした。こういう事例が地方で増えるのが、地方を元気にするためにもすごく重要じゃないかなと考えています。

Profile

九州アイランドワーク株式会社代表取締役社長 馬渡侑佑
宮崎県出身。佐賀大学理工学部都市工学科卒業、ITベンチャー、コンサル会社を経てチームラボに入社。チームラボ「学ぶ!未来の遊園地」の立ち上げに従事し、別府での展覧会で大分を訪れたのをきっかけに東京から大分県竹田市に移住。移住後は、主にチームラボキッズの九州案件を担当しながら、竹田の城下町の空き家対策や中心街の活性化を目的として「竹田まちホテル」などを展開。2019年1月、九州アイランドワーク株式会社を設立。

株式会社一平ホールディングス代表取締役社長
九州アイランドワーク株式会社代表取締役会長 村岡浩司

“世界があこがれる九州をつくる”を経営理念として、九州産の農業素材だけを集めて作られた九州パンケーキミックスをはじめとする、「KYUSHU ISLAND®︎/九州アイランド」プロダクトシリーズを全国に展開。台湾の「九州パンケーキカフェ」は食による日本の地方創生モデルとして話題を呼び、予約の取れないカフェとしてブームを巻き起こしている。現在では多数の飲食店を経営する一方、九州各地にて様々な地元創生活動や食を通じたコミュニティ活動にも取り組んでいる。

一般社団法人Work Design Lab代表理事/複業家 石川貴志
リクルートエージェント(現リクルートキャリア)の事業開発部門のマネージャーを経て、出版流通企業の経営企画部門にて勤務。2012年より社会起業家に対して投資協働を行うSVP東京のパートナーとしても活動。2013年にWork Design Labを設立し「働き方をリデザインする」をテーマにした対話の場づくりや、イントレプレナーコミュニティの運営、また企業や行政等と連携したプロジェクトを複数手掛ける。

株式会社クラウドリアルティ執行役員 幸田泰尚
2007年リクルートにて不動産メディアのディレクターとしてマーケティング、ブランディング、商品開発に携わった後、新規事業開発室・プロデューサーとして大企業・自治体・スタートアップとの連携事業を推進。2018年より不動産クラウドファンディングのプラットフォームを運営するクラウドリアルティに参画しマーケティング戦略・実行をリード。


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