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山下耕太郎

投資信託の譲渡益や分配金には税金がかかる?確定申告が必要?

2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響で確定申告の受付期間が4月16日まで延長されました。とはいえ、資産運用や投資デビューをしたばかりだと難しいことには変わりありません。そこで今回は、投資信託にかかる税金について、個人投資家で投資ライターとしても活躍する山下耕太郎さんにご解説いただきました。

目次

投資信託の利益は「譲渡益」と「分配金」の2つ

譲渡益とは

投資信託(ファンド)の利益には、「譲渡益」と「分配金」の2種類があります。譲渡益とは、投資信託を売却したときに発生する利益です。ファンドを売却したときの基準価額が購入時の基準価額を上回っており、コストを控除した後にプラスであれば「譲渡益」、損失であれば「譲渡損」になります。

分配金には「普通分配金」と「特別分配金」がある

分配金とは、運用実績にもとづいて得られた利益を投資家の口数に応じて払い戻すお金です。分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。

普通分配金とは

分配金が支払われた後に、基準価額が個別元本と同額か上回る場合に、その個別元本を上回る部分が「普通分配金」です。個別元本とは、投資信託を購入した時の基準価額のこと。ですから、運用状況が悪いと普通分配金がでないこともあります。

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特別分配金とは

分配金が支払われた時に、分配後の基準価額が個別元本を下回る場合、その個別元本を下回る部分は特別分配金となります。

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投資信託の税金は確定申告が必要?

投資信託の税金は、譲渡益と分配金で異なります。

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譲渡益は原則として確定申告が必要

投資信託の売却による利益である「譲渡益」には20.315%の税金がかかり、原則として確定申告が必要です。譲渡益は譲渡所得に分類されますが、ほかの所得と分離して計算する「申告分離課税」になっていて、基本的に確定申告が必要だからです。ただし、「特定口座」を利用すれば確定申告をしないですみます。

特定口座とは

特定口座の仕組みは、以下の通りです。

年間取引の損益計算税金の支払い
特定口座(源泉徴収あり)販売会社販売会社が源泉徴収
特定口座(源泉徴収なし)販売会社投資家が確定申告
一般口座投資家投資家が確定申告

特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。

「特定口座・源泉徴収あり」では、販売会社が特定口座の中にある投資信託の損益を計算してくれ、利益が出ていればその利益から税金を徴収した後で収益を口座に振り込んでくれます。

「特定口座・源泉徴収なし」の場合、販売会社が特定口座内にある投資信託については、損益を通算した上で申告に必要な書類を送付してくれるので、自分で損益を計算する必要はありません。ただし源泉徴収はしないので、利益が出ていた場合には投資家自ら申告する必要があります。

一般口座を開設した場合、自分で損益を計算して確定申告をする必要があります。ただし「特定口座・源泉徴収なし」や「一般口座」でも、給与以外の所得が20万円以下の会社員なら確定申告は必要ありません。

投資信託の分配金は源泉徴収の対象

投資信託の分配金の課税は、上場株式の配当金と同じ20.315%。投資信託の分配金は源泉徴収の対象ですが、「普通分配金」が課税対象で「特別分配金」は非課税です。特別分配金は個別元本の取り崩しなので、税金がかかりません。

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確定申告をした方が有利な場合も

「特定口座・源泉徴収あり」を利用していれば、原則確定申告は必要ありませんが、以下のように確定申告をした方が有利になるケースもあります。

複数の金融機関で損益通算をする場合

投資信託で損失が出ている場合は確定申告をする必要はありませんが、確定申告することにより、他の金融機関での投資信託や上場株式・ETF(上場投・信託)・公社債などと損益通算できます。

たとえば、A証券会社の株式で50万円の利益が出ていて、B証券会社の投資信託で20万円の損失が出ている場合、何もしなければA証券で101,575円の税金がかかります(50万円×20.315%)が、B証券と損益通算すれば60,945円の税金(30万円×20.315%)で済むのです。

損失の繰越控除

投資信託で損失が出た場合、損益通算しても控除しきれない損失を確定申告すれば、3年間繰越控除できます。たとえば2019年に20万円の損失が出た場合、翌年の2020年に10万円の利益が出ても、繰越控除(10万−20万=−10万)することにより税金がかからなくなるのです。余った10万円の損失は、翌年の2021年に繰り越せます。

損失の繰越控除は3年ですが、途中で確定申告をしない年があると繰り越した損失は消滅してしまいます。繰越控除の適用を継続させるためには、毎年確定申告する必要があるのです。

配当控除

配当金には所得税と住民税が課税されますが、配当金が支払われる前に法人税なども課税されています。この二重課税を調整するための制度が「配当控除」です。

投資信託の分配金について配当控除の適用を受けたい場合、総合課税を選んで確定申告をする必要があります。配当金を総合課税として確定申告をすると、一定金額を所得税や住民税の税額から控除できるのです。

ただし、源泉徴収や申告分離課税なら20%(所得税15%+住民税5%)ですが、総合課税にすると、所得税5~45%+住民税10%が課税されます。

そのため、配当控除が有利かどうかは所得によって異なります。総合課税を選んだ方が有利なのかどうか慎重に検討するようにしましょう。

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出典:日本証券業協会「証券税制Q&A2019」

NISAやiDeCo(イデコ)を利用する

特定口座を利用すれば確定申告の手間を省けますが、NISAやiDeCoなどの非課税制度を利用すれば、そもそも一定額まで税金がかかりません。

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NISAとは

NISAとは、「少額投資非課税制度」のことで、2014年1月にスタートした個人投資家のための税制優遇制度。「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。

両方とも投資信託に投資できますが、初心者におすすめは「つみたてNISA」です。つみたてNISAは、少額から運用をはじめられる非課税制度で、投資信託が運用対象です。

非課税枠は年間40万円。2037年まで、毎年40万円まで積立投資が可能です。

非課税で保有できる期間は20年。ただし、2037年までの制度なので、2020年からはじめると18年間になり、720万円(40万円×18年)が最大投資額になります。

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出典:金融庁

つみたてNISAの対象となる投資信託は、金融庁が選んだ「長期・分散・積立」に適したファンドです。販売手数料が0円(ノーロード)で、信託報酬(投資信託の保有コスト)も低く、頻繁に分配金が支払われない商品など法令上の条件が設けられています。

iDeCo(イデコ)とは

老後のセカンドライフに向けては、国民年金や厚生年金といった公的年金だけではなく、私的年金を用いた自助努力による資産形成が大切です。確定拠出年金は、私的年金制度の一つで、公的年金と異なり自分の年金を自分で運用します。

確定拠出年金とは、会社や加入者が拠出した掛金を加入者自らの判断で運用し、運用結果にもとづいて老後に年金を受け取る私的年金制度。確定拠出年金には、「企業型確定拠出年金」とiDeCo(イデコ)のふたつのタイプがあります。

イデコは、老後の年金を準備するための個人型確定拠出年金。加入できるのは、自営業者や公務員・フリーランス・専業主婦・企業型年金に加入していない会社員などで、企業型年金に加入している人も、条件を満たせば加入可能です。ただし、掛金は加入者が自分で拠出する必要があります。

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確定拠出年金は、NISA よりも非課税メリットが大きい制度です。それは、以下のように「掛金拠出時」と「運用時」「受給時」の三つの税制メリットがあるからです。

1.掛金拠出時
加入者が拠出した掛金は、全額が「所得控除」の対象になるため、所得税と住民税が軽減されます。ただし、税金の軽減効果を受けるためには、給与などの所得が必要です。

2.運用時
通常、投資信託の運用益には税金がかかりますが、イデコの運用益は非課税になります。

3.受給時
受給時に年金でもらった場合、雑所得として課税されますが、公的年金と同じように「公的年金控除」の対象になります。また一時金でもらった場合でも、退職所得とみなされて「退職所得控除」の対象になるのです。

掛金の拠出限度額は、属性によって以下のように異なります。

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出典:日本証券業協会

まとめ

今回は投資信託の税金について解説しました。投資信託の税金は値上がり益である「譲渡益」と「分配金」に課税されます。譲渡益は、原則、確定申告が必要ですが、特定口座を利用することで面倒な手間を省くことができます。

投資信託の分配金は源泉徴収されますが、確定申告することにより、損益通算や繰越控除できます。また、配当控除の適用を受けたい場合は、総合課税を選ぶことが可能です。

そして、NISAやiDeCo(イデコ)などの非課税制度を利用することもおすすめです。税金は必ずかかるコストです。運用利回りを上げるためには、コストである税金もなるべくかからないよう、非課税制度をうまく利用するようにしてください。


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Profile

金融・投資ライター
山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011


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