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不動産クラウドファンディングのプラットフォームであるクラウドリアルティでは、自社サービスはもちろんのこと、様々な投資・資産運用情報について紹介しています。
今回は、元不動産営業のライター・花惠理さんに、地域密着型の無料広告掲示板アプリ「ジモティー」で築古貸家の入居者を募集した実体験についてご寄稿いただきました。
客付けの幅を広げようという試みは成功したものの、連絡してきた人たちはなかなか個性的だったようで……。
ジモティーとは、株式会社ジモティーが運営するクラシファイドサイトです。地域密着型の無料広告掲示板サービスがメインとなっています。掲載できる広告のジャンルは、不要品の譲渡・中古車・里親募集・求人・イベント・不動産など多岐に渡りますが、利用料と手数料は無料。基本的には、誰でも自由に書き込みをすることが可能です。ジモティーのWebサイト、もしくはスマートフォンアプリから利用することができます。
【参考】ジモティー公式サイト
今回は不動産をテーマにしていますので、ジモティーにある「不動産」というカテゴリーについて解説しましょう。ジモティーの不動産カテゴリーでは、主に賃貸物件の入居者募集や売買物件情報の広告が掲載されています。
通常、賃貸不動産ポータルサイトへ物件を掲載するときには、該当サイトの料金を支払って加盟している不動産会社に掲載してもらうことになります。しかし、ジモティーではオーナー自身が掲載することが可能。さらに、掲載手数料が無料です。なお、ジモティーで不動産情報を掲載する際には本人確認が必須となっています。
手軽に広告掲載できることが魅力のジモティーですが、入居希望者との連絡や内見手配などをすべて自分1人で行わなければなりません。ジモティーはあくまで広告掲載の場を提供しているだけですので、利用者間には入りません。直接取引となりますので、十分注意が必要です。
今回私がジモティーで入居者を募集した理由は、客付けの幅を広げたかったからです。入居者を募集していたのは、以下のような条件の物件です。
正直に言って、すぐに入居が決まるような条件の物件ではありませんでした。
きちんとリフォームされているので、水回りなどの印象は良い。しかし、問題は立地でした。この地域は「外国人労働者」という一定の法人需要があるものの、決して人気エリアではありません。周辺には空き家が多く存在する地域。ましてや、この物件は築50年を超える古い長屋です。一般的な需要は、あまり多くないでしょう。
当初から、この物件のターゲット層は「外国人労働者を入居させたい法人」もしくは「子どもを持つ単親世帯」だと考えていました。少しでもこれらのターゲット層にアピールできるよう、不動産会社での募集に加え、ジモティーでも入居者を募集していたのです。
ジモティーに掲載していた期間は1ヶ月程度でした。問合せ総数は9件。地方で空き家ばかりの地域なのでこの数字ですが、首都圏の場合はもっと反響があるかもしれませんね。
問合せがあった利用者の内訳は以下の通りです。
その他に分類される人たちは、属性がわからない人と「他の所有物件を紹介してほしい」という依頼があった人です。当初私が考えていた通り、外国人や単親世帯の人、法人からの問合せがありました。
ちなみに、問合せてくる外国人は翻訳アプリを使用しているためか、日本語の文章に難があり、意思疎通が難しいことがありました。私が不動産会社で働いていた時に接した賃貸物件を契約する(入居する)外国人の方は「日本語は流暢に話せるけれど、読み書きは一切できない」という方が多かったため、直接話をすればやりとりはしやすいのかもしれません。
一般的に、賃貸物件を探すときには不動産会社を利用する人がほとんどでしょう。ジモティーというサービスを利用して物件を探す人には、一癖ある人が多くいました。その中でも、特に印象に残った入居希望者をご紹介します。
問合せのあった外国人は、皆何かしらの事情を抱えていそうな人たちでした。やりとりの際には、以下のような問合せがあったり、またそもそもやりとりが続かなかったりするケースがありました。
母子での入居を希望する女性。離婚した元夫の所有している家にそのまま住んでいるけれど、元夫が物件を売却しようとしているらしい。売却を担当する不動産会社から退去するように言われているが、引越し先を探そうにもお金がなくペットも飼っているので条件に合う賃貸物件がない……という方でした。
この女性からは内見後、「初期費用はまったく出せない、家賃を5万円から2万円に値下げしてほしい」と交渉されました。おそらく、不動産会社を訪ねても門前払いされている様子。事情はわかりますが、こちらも賃貸経営を行っていますから半分以下の値下げは難しい……。
そこで、5,000円の値下げを提案しました。しかし、良い物件だったが金銭面で難しいとの返事を頂いたので、やり取りは終わりました。この母子のその後が気になります。
ジモティーでの問合せの中には、不動産会社に行くことを頑なに拒む人がいました。理由を尋ねると「仲介手数料を絶対に支払いたくない」とのこと。この方は、不動産会社を通さない貸主・借主の直接契約でないと借りたくないため、ジモティーを利用しているそうです。
私はジモティーに物件を掲載していましたが、入居申込は管理会社(=不動産会社)に行ってもらうつもりで募集していました。管理会社の入居審査を通過しなければ、委託管理してもらえないからです。このような理由から、お断りすることになりました。
ジモティーで入居者を募集していたものの、最終的には不動産会社で客付けしていただけました。今回、不動産会社で決まった入居者も色々と事情のある方だったようで「室内クリーニングをしていない、設備の状況を確認していない現状の状態で構わないから、一刻も早く入居させてください」という要望がありました。戸建ての室内クリーニング費用が浮くためラッキーな展開です。物件を購入後、まったく手を加えずに入居が決まりました。
私はジモティーで見つけた入居希望者の場合でも、管理会社を通して入居申込を行ってもらい、審査に通らなければ自主管理として個別に対応する予定でいました。管理会社と結んでいる委託契約の内容によって、自主客付けの場合は管理できないなどの条件が決められていることがあります。ジモティーを利用した入居者募集を検討する際には、事前に管理委託契約の内容を確認しておくことをおすすめします。わからなければ、管理会社に確認してみましょう。
しかし、ジモティーでは当日の待ち合わせ時間になってから内見をキャンセルされたり、急に音信不通となってしまったり、上記のように不動産会社に行きたくない人や無理な家賃交渉をしてくる人がいたりしますので、対応に苦慮するケースも考えられます。
ジモティーは広告掲載の場所を提供しているだけであり、入居希望者との間に入ってくれるわけではありません。直接取引となりますので、自己責任として十分注意して行いましょう。
賃貸物件を所有している人にとって、物件の広告掲載費が無料というのは大きなメリットです。使い方を工夫することで、ジモティーが入居者募集方法の新たな選択肢となるかもしれません。
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ライター
花惠理
不動産会社や住宅メーカーに勤務し、不動産賃貸・売買契約、社宅代行、宅地造成など、不動産の業務に携わっていました。現在は、不動産や金融関係の執筆をするWebライターとして大手メディアなどに多数寄稿。初心者にもわかりやすい言葉で解説しています。
ブログ:https://www.erix.work/
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