地役権
チエキケン / Easement
地役権とは民法第280条に定められた、あらかじめ定めた目的に沿って他人の土地を利用できる権利のことです。
例えば、水道管の本管から自分の土地まで水を引くため、水道管の枝管が他人の土地を通過する場合は、引水地役権が設定されます。
そのほか、電力会社が高圧線を整備する時に、高圧線の下にある土地に送電線路敷設地役権を設定し、該当の土地に対して高さ制限を設けることもあります。
一般的な不動産の所有や売買に関係のある地役権は、主として通行に関するものです。2種類の地役権について解説します。
通行地役権
例えば、自分が所有する土地から最寄駅へ行くために、他人が所有する土地を通るほうが便利な場合は、通行地役権を設定します。なお、土地と切り離して通行地役権だけを処分することはできません。
要役地と承役地
通行地役権を設定する場合、自分が所有する土地のことを要役地と呼び、他人が所有する土地のことを承役地と呼びます。
通行地役権は登記が必要
通行地役権を法的に主張するためには、権利の登記が必要です。また、通行地役権を登記するためには、要役地所有者と承役地所有者との間で契約の締結を要します。契約の締結にあたり、承役地所有者は通行料の要求も可能です。
通行地役権の消滅時効
新たに通行を妨げる建物が建つなど、地役権を行使できない状況になった場合は、20年経過後に、通行地役権は消滅時効を迎えます。
囲繞地通行権
囲繞地(いにょうち)通行権は、自らの所有する土地が他人の所有する土地に囲まれていて、他人の所有する土地を通らないと公道へ全く出られない場合に認められる権利です。認められる権利が囲繞地通行権なのか通行地役権なのかは、土地の状況によって異なります。通行地役権は、自分の土地から他人の土地を通らなくても公道へ出られるけれど、公共交通を利用するためには他人の土地を通行する方が早いなどの場合に認められるものです。
囲繞地通行権は登記不要
囲繞地通行権は、民法で当然に認められる権利であり、法的な主張のために登記をする必要がありません。登記不要なので承役地所有者との契約も不要ですが、実際には契約を結ぶことがほとんどです。
囲繞地通行権には時効もない
囲繞地は承役地を通らないと外に出られない都合上、通行地役権と違って時効がありません。