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WealthPark研究所所長 加藤航介

メガ大家が見ている投資の世界観と、コロナ後の投資(前編)【WealthPark研究所】

小島氏(仮名): 大学院を修了後、大手総合電機メーカーに研究開発のエンジニアとして就職。数年後、イギリスの大学院での研究生活中に、産業革命の歴史や資本主義の神髄に触れ、金融・投資に目覚める。帰国後はシンクタンクに転職し、先進欧米のオルタナティブ投資やベンチャー投資などの海外調査に従事。その後、大手メガバンクグループに転職し、クロスボーダーM&AやIPOの国際アナリストとして活躍。50歳を超えてマイホームを新築して、副業として不動産投資(アパート)を開始。現在は12棟(8棟新築)のアパート経営、太陽光発電投資のキャッシュフローをESG投資などで運用し、収入の複線化と「プチFIRE(​​Financial Independence, Retire Early)」を模索中。

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WealthPark研究所 所長 加藤航介(かとう こうすけ)‐ プレジデント/インベストメント・エバンジェリスト:「すべての人に投資の新しい扉をひらく」ための調査・研究・情報発信を行っている。プロフィールはこちら

クラウドリアルティの新しいコミュニティとして、WealthPark研究所より様々な投資情報をお届けいたします。

今回は「メガ大家が見ている投資の世界観と、コロナ後の投資」をテーマにメガ大家の小島氏(仮名)とWealthPark研究所 加藤航介が語ります。(前編)

海外に出たことで実感できた投資家の重要性

加藤: 本日は、金融機関でお勤めされながらメガ大家として多数の不動産資産を所有、弊社WealthParkのオーナーアプリを使って頂いている小島様に、個人投資家の目線での「投資」についてお聞きしたいと思っております。また、小島様は50歳以降に不動産投資を始められたということで、そのきっかけや経緯もご紹介いただければ幸いです。

では、先に私自身の投資に対する考え方を、少しお伝えさせてください。私は長らくプロのファンドマネージャーや投資アドバイザーとして投資業に従事する一方、個人でも幅広く実経験を積みたいと考え、世界の株式や投資信託、居住用不動産、オフショア口座、太陽光発電、老人介護施設、投資用ワインといった様々な分野に取り組んできました。

振り返って、「個人が投資を行う利点ってなんだろう?」と考えると、「本業でより良い仕事ができること」かなと思います。自分の収入の源泉が複数になると、例えば、お客様や社会利益に反するような上司の命令や会社の方針に、嫌々ながら従うことが無くなります。仕事は僕にとって人生の大切な楽しみの1つで、誇りをもって取り組みたいと思っています。また、投資を通じて「経済の権力者をしっかりモニタリングする」ことで、健全な社会に貢献することは大事かなと。経済の管理を官僚や銀行に頼り切るのではなく、あたかも政治家の選挙の様に、個人が直接的な投資を通じてモニタリングすることが、進んだ豊かな社会を作ると思います。小島様ご自身は、「個人が投資を行う利点」について、どの様なお考えをお持ちですか?

小島氏: 私が不動産投資を始めたのは50代と遅いのですが、実はその前から投資の知識を高める努力は重ねていました。今日のお題である「個人投資家の視点での投資」を語るため、私の今までのキャリアのお話をさせていただきますね。私はバブル絶頂期に社会人生活をスタートさせ、当初は大手メーカーに勤め、海外のOEM(受託生産)を受ける部署でエンジニアとして研究開発を行なっていました。その頃はアップルやマイクロソフトといったグローバル企業がクライアントで、マッキントッシュに搭載するフロッピーディスクも納品していたのですが、スティーブ・ジョブズが実際の製造現場が見たいと我々の工場を訪問してくれたこともありました。彼の持つ熱気は非常に印象的でしたが、あの頃、一緒に仕事をした他の海外のクライアントの方々も、皆が「世界を変えたい」と夢を見て輝いていて、そうした姿に刺激を受けて、私も海外に行って勉強してみたいという気持ちが強くなっていきました。

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チャンスが訪れたのは1990年代半ばで、イギリスのオックスフォード大学に国費留学できることになり、ここで人生が随分と変わりました。現地では、専攻の勉強はもちろん一生懸命やっていましたが、イギリスという国で暮らすうちに、なぜこの国で産業革命が起きたのか、他国の追随を許さない程に発展していくことができたのか、興味を持つ様になって。また、マルクスが労働者の切り口で資本主義を洞察した『資本論』を執筆していたのは、なんと、大英博物館の図書室であったことを知りました。そうした歴史の現場に触れながら、本業の自然科学の勉強の傍ら、人文・社会科学の書籍も読み始め、資本主義や投資に対する理解を深めていくことになりました。

私が当時、驚いたのは、イギリスでは「労働者」と「資本家」という言葉がまだ日常的に使われていたこと。随分と昔はパブでも、資本家と労働者の入り口が別々に設けられていたという話もありますよね。そして、資本家(投資家)がいるからこそ、給料をもらえる労働者が存在するという社会構造の本質が、イギリス社会ではよく理解されていると感じました。これは二者間に格差があるという文脈とは異なります。失敗する可能性があってもリスクを取る資本家(投資家)は労働者から尊敬こそされますが、日本の様に疎まれるようなことはない、という印象を持ちました。この様に、日本を出たことで資本や投資の重要性を実感できたことは、自分の人生において大きな転換となりました。

投資には勉強が必要。人を投資へ向かわせ、支えるものは自身の専門分野

加藤: なるほど。海外に出られたことで、資本家(投資家)と労働者で構成される自由経済の仕組みが、よりクリアに認識されたと理解しました。確かに、小島様がイギリスで感じられた資本や投資家の存在の重要性は、日本では殆ど語られていないと思います。何でもそうですが、物事には本作用と副作用があります。投資家の存在があるからこそ、ビジネスや雇用が生まれて社会が豊かになる、という投資の「本作用」が語られないまま、投資は危ないとか格差を生むきっかけになるとか「副作用」ばかりが取り上げられてしまうのは、社会全体にとって損失でしょう。

小島氏: そうですね。3年の留学期間中、資本や経済に関する考察をしていたので、日本に帰国した頃には、金融に何らか関わる仕事をしてみたいと思う様になっていました。そこで、科学技術のベンチャー企業に支援しているシンクタンクに転職しました。また、個人投資家としては、投資信託は20年前から始めていましたが、イギリスから帰国後はグローバルに投資したい想いが強く、当時の言葉で言うBRICSや、アジア、アメリカ、ヨーロッパなどへ投資を進めていました。最初の勤め先でアップルやマイクロソフトと仕事をしていたので、親近感があった今でいうGAFAMを保有するファンドへも投資していましたね。50歳を迎えてプライベートで家を建てる際には太陽光発電への投資も始めました。そして勤務していたシンクタンクでは、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどのオルタナティブ投資を専門として、海外の年金基金や大学基金、そして機関投資家にヒアリングや調査を行ってレポートを作成していたので、世界の巨大な投資家がどのような投資を実施しているのか知識を得ることができました。

加藤:そのような調査は、投資の理解度を高めますよね。私も前職で国家ファンドなどのソブリン投資家のグローバルレポート作成の仕事をしましたが、超巨大なお金を動かす投資家を理解することで、「投資の本質」の一片を学べたと思っています。

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小島氏: 私は、著名な投資家であるジム・ロジャーズ氏の本に影響を受けたこともあり、「投資するならば勉強が必要」と考えています。彼はオックスフォード大学で哲学・政治を専攻していますが、投資とは少し異なる「歴史」の知識を自身の投資に生かしている姿勢には勇気をもらいました。私はこれまで学んだ科学技術の知識を生かしていこうと、数値で表現できる切り口から投資の世界へ入っていこうと思いました。そのような経験から、個人の方を投資へ向かわせるものは、ご自身がお持ちの何らかの専門知識ではないかと思います。

加藤: 留学で社会の構造に対する視座を高められて、帰国後のお仕事や実践を通じて、投資の研鑽を積まれてきたということですね。小島様のように著名な投資家の自叙伝から投資を学んでいくというプロセスは、我々も大変に良いことだと思っています。そして、投資の仕組みを活用した社会が、実際に豊かになってきた事実を歴史的に伝えることにも、チャレンジしています。例えば、14世紀の北イタリアで複式簿記が生まれたことで、現地の商人はより大きな商売を手掛けられるようになり、ルネッサンスの勃興につながっています。証券取引所の前身となる仕組みを誕生させたベルギーのアントワープ、世界初の株式会社の仕組みをつくったオランダ、株式会社の監査制度を発明したイギリス、独禁法や投資信託を生んだアメリカなど、歴史的に見ると投資を活発にするイノベーションを社会に根付かせた国や都市が発展した例は、世界各地に見受けられるんですよね。WealthParkはアジアのお客様も多いので、「日本を豊かに」という様な一国に限定した言い方こそしませんが、自分たちが関わるコミュニティを豊かにする為に、DXを活用して、今の時代に即した投資の仕組みや道具を充実させていきたいと考えています。

人に任せる株式投資から、自ら運用システムをつくる不動産投資へ

加藤: ここからは不動産投資を中心にお話を進めさせていただければと思います。50歳を迎えられて不動産投資を始められ、今や70部屋を所有するメガ大家になられていますが、ここまでに至る経緯を教えていただけますでしょうか。

小島氏:不動産投資へのきっかけは、50歳を迎えたところで家族で住む家を探し始めたことです。海外に住むことも考えましたが、50歳を過ぎると日本に定住したいなと思って、悩みに悩み抜いて結果的に土地を購入して自分で家を建てました。実は40代から不動産については勉強していたので助走期間も長いのですが(笑)、実際に自分で建てることになって、建築も勉強して、業者と付き合っていくうちに知識も増えてきて。こうして身に付けた知識に、仕事で培った市場調査のスキルも掛け合わせて、アパートかマンションを建てて貸すことを思い付いたんですね。

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関わる業者も厳しく選定して、千葉、埼玉と名古屋で土地から探してもらいました。個人用の戸建ての新築の際は、何億というローンを背負いこむことが怖くて、頭金を相当入れて余裕を持たせた返済プランを組む様にしました。不安は色々とありましたが、日本は家を建てるのに政府の支援策が充実していて、例えば新築物件が優良住宅と認定されれば税金が戻ってきますし、太陽光設備にも補助金を出してくれます。こうした支援策に加え、アパートの経営が軌道に乗ってくることで、心配はなくなっていきました。また、個人宅の住宅ローンは自分で返済しますが、アパートのローンは賃料から返済していくので、同じローンでも性質が異なることも理解しました。借入にはもちろんリスクがありますが、運用システムさえでき上っていれば、あたかも優良な株式から配当を受け取るように安定した収入が入るし、アパートも少しずつ自分の資産となっていきます。経費計算や確定申告といった自分でやるべき仕事はあるので、「不動産経営は何もしなくても良い」と言うと語弊がありますが、アパートの運営自体は管理会社にかなり任せられます。そういったメリットを実感して、毎年の様に土地を探してアパートを建てていき、現時点では新築として建てた物件は8棟あります。そして、税金対策として、購入した中古物件をリフォームして減価償却しているものもあって、新築と中古のハイブリッドで不動産経営をしています。

かつては株式信託などのファンドに多く投資していましたが、株は価格の変動が大きいですし、自分自身が投資をコントロールしているという感覚が薄いという欠点があると思います。ですので、今は不動産投資への注力が大きくなっています。

(後編に続く)

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