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WealthPark研究所所長 加藤航介

社会を彩るアートから投資の本質を考える(対談:前編)【WealthPark研究所】

クラウドリアルティの新しいコミュニティとして、WealthPark研究所より様々な投資情報をお届けいたします。

WealthParkがクラウドリアルティと共同化することで、小口化した不動産のプロジェクトへの投資だけではなく、未上場株式、美術品といったオルタナティブ資産の選択肢を、個人の方に繋げる役割を今後担っていくことができるようになります。

その新しい投資の可能性についてや、マーケットが存在する「現代アートへの投資」について、「社会を彩るアートから投資の本質を考える」をテーマにCurina CEO 朝谷実生氏とWealthPark研究所 加藤航介が語ります。(前編)

Curina CEO 朝谷実生(あさたに みお):Curina(キュリナ)は米国ニューヨークに拠点を置き、現代アートのレンタルサブスクリプションサービスを展開している。2021年3月には、8000万円の資金調達を発表し米国全土での展開を開始。https://www.curina.co/

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WealthPark研究所 プレジデント 加藤航介(かとう こうすけ):「すべての人に投資の新しい扉をひらく」為、社会と人々を豊かで幸せにする「投資の本質」について調査・研究・情報発信を行なっている。投資会社において世界30ヵ国での20年超の投資経験を経て、2021年よりWealthParkに入社、現職。https://wealth-park.com/ja/

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多くの人が気軽に参加できる仕組みが、社会を豊かにする大きなパワーに

加藤:本日は「アートと投資」をテーマにお話をさせていただければと思います。WealthParkはこれまで不動産の資産管理のデジタル化に注力してきましたが、今後はそのプラットフォームを土台に、小口化した不動産や未上場株式、美術品といったオルタナティブ資産の選択肢を、個人の方に繋げる役割を果たしていきます。その中でも、しっかりとしたマーケットが存在する現代アートは、飾る楽しみに加えて投資としての楽しみもあり、所有、レンタル、シェア、小口所有といった様々な広がりを見せていますよね。弊社のCEO川田も創業時から「豊かな社会にとって芸術・文化への応援は絶対に必要。現代アートは事業として絶対に取り組む」と言い続けており、本日は朝谷さんと対談の機会をいただき、嬉しく思っています。

朝谷さんは、経営コンサルティングファームで勤務した後、私も学んだコロンビア大学ビジネススクール(MBA)へ進学され、在学中に現代アートの定額レンタルサービスを提供するCurina(キュリナ)を現地ニューヨークで立ち上げられていますが、朝谷さんにとってアートはどのような存在だったのでしょうか。

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朝谷:幼い頃からアートが好きで、イギリスに住んでいた頃は、美術館で美術史のクラスを受けたり、家族でヨーロッパ内を旅行して美術館を巡っていました。Curinaのビジネス自体は、MBA在学中のニューヨークで自宅に飾るアート作品を購入しようとした時の原体験が起業の構想に繋がっています。実際に購入しようとすると、ギャラリーは入りづらい雰囲気ですし、作品の価格も表示されていないし、ギャラリーによっては顧客になる為の審査に通らないと価格を教えてもらえなかったり。初心者からすると、排他的なスモールサークルだなと感じたんです(笑)。ギャラリーはこれからコレクターになるかもしれない潜在層を完全に見過ごしていると思いました。今すぐ100万円というお金が出せないとしても、月々数千円から数万円であればアートを自宅に飾りたいと考える若い層を、次世代のコレクターとして育てていく仕組みとして、レンタルビジネスの発想に至りました。

加藤:なるほど。アートの所有に対する高いハードルを取り除くことがCurinaのビジネスの根幹にあるのですね。WealthParkでは同じようなことを「投資の民主化」と言ったりしていますが、例えば、数千万円ないと買えない不動産を小口化して、所有や投資の機会の平等化を進めたいと考えています。そうすることで、資産家だけではなく若年層などの「こういう家に住みたい!」という発想が不動産市場に注入されていき、より魅力的な街や社会がつくられていくと考えるからです。アートも不動産も、小口化やレンタルといった気軽な仕組みを通じて多くの人が参加できれば、世の中を変えていく大きなパワーになっていきますよね。

アートは、世の中を前に進める新しい発想やエネルギーの源

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加藤:コロナ禍で家での滞在時間が増えたからこそ、住環境を豊かにしたいとCurinaから作品をレンタルされていらっしゃるお客様も多いと思います。作品のレンタルを始めたお客様からの生のお声があればぜひ伺いたいです。

朝谷:弊社のお客様の傾向としては、作品はもちろん、その作品を創作したアーティスト自身の想いやバックグラウンドに関心のある方が多いです。裏側にあるストーリーを意識してレンタルする作品を選ばれており、共感するアーティストの作品を自分の家の中に置くことでエネルギーをもらっているんですね。コロナ禍で旅行や人と気軽に会うことも制限されていた分、新しい発想の源を家の中に求めたり、自宅に作品を飾ることで日々の文化的な体験を補完しているのだと思います。また、オンライン会議の際に自宅で座る場所の背景に作品を飾るお客様もいて、作品が会議の相手とのスモールトークのきっかけにもなっていると伺っています。

加藤:アート作品が飾ってある部屋で会議を行ったり、最近心が動かされたものをシェアする雑談を会議の始めに入れると、企画会議の生産性が大きく上がるという研修を受けたことがあります。作品をレンタルして自宅に飾ることも同じことですよね。

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朝谷:そうですね。ニューヨークでは徐々にオフィスに従業員が戻ってきており、Curinaではオフィスへの納品も増えてきました。個人のお客様はご自身で作品を選んでレンタルされる方が大半ですが、法人のお客様からは「作品を選ぶところからサポートしてほしい」というリクエストもいただきます。直近で納品させていただいたフィンテックの会社は、従業員の独創的な考えや意見を自由闊達に述べられる職場にしたいからと、自然を感じられる有機的な作品を希望されました。このように、アートはその場の雰囲気をつくり出し、人の気持ちや感情を突き動かす力があると思っています。

アートを取り巻くエコシステムへの参画の難しさ

加藤:レンタルで数ヶ月ごとに新しいアート、新しいインスピレーションの源が届くことで、これまでとは違った発想が湧き出るきっかけにもなりますよね。自宅に、オフィスに、街に、アートがあるかないかで、その社会の魅力は大きく変わると思います。ニューヨークは世界屈指のアートの街である一方、個人にとってはまだまだ閉鎖的な部分もあるということですが、アートが社会により溶け込んでいく上でのボトルネックとなっているものは何でしょうか。

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朝谷:アートを取り巻くエコシステム(経済的な循環の仕組み)への参画の難しさでしょうか。アートは投資対象でもあり、その基盤となるプロセスやシステムは既に存在していますが、これが閉鎖的なんです。今でこそ色々なスタートアップの出現により変わりつつありますが、エコシステムは、プライマリーマーケット(アート作品が最初に世の中に出る市場)において、ギャラリー自らが選んだアーティストの作品を、彼らの「限られた」顧客に販売することから始まります。その後、作品を購入した顧客やギャラリーがアーティストのパトロンとなって、美術館に入れたり、個展を企画運営したり、著名なコレクターに購入してもらったり、著名なビルに作品を献上するといった働きかけを行なっていきます。こうした地道な活動を通じて、アーティストの知名度、作品の価値を上げていき、セカンダリーマーケット(一度誰かの手に渡った作品が次の所有者へ販売される市場)で作品が高値で取引されます。ただし、こうしたエコシステムは限られた人達だけが参加できるような排他的な側面が強く、初心者や潜在層にとっては開かれていないプラットフォームになっているのが現状だと思います。そもそもアートが投資対象になること自体があまり知られていないですし、アート投資におけるルールやシステムを知ること、そのインナーサークルに入っていくことが今は難しいのです。

加藤:そうですね。僕自身もこれまで様々な投資を行ってきましたが、アートへの投資を身近に感じたことはなく、残念ながら未体験です。Curinaのような新しいサービスを通じて、そうしたエコシステムに参画できる人が増えていくのは大変素晴らしく感じます。

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朝谷:弊社のお客様は将来的には購入したい意思をお持ちなので、レンタルした作品を後に購入される方、複数のアート作品のコレクターになっていく方も多くいらっしゃいます。その意味では、レンタルからスタートすることでアートを所有することへの入口を広げることに貢献していると思っています。

加藤:WealthParkとは扱っているものこそ異なりますが、聞けば聞くほど、目指している世界が似ているなという印象を受けます。WealthParkが描いているのは、より多くの人が不動産を使用する(住む)だけではなく、気軽に所有している開かれた社会なんです。一部の富裕層で所有者側が独占されているのは、良い社会ではない。多くの市民が所有者、使用者、労働者といった複数の立場から、多面的に社会に関わることで、世の中はより健全になっていくし、それをDXの力で推し進めたいと思っています。効率化に目を向けられがちなDXですが、我々としてはその先を見据えて「活力のある新しい社会をつくりたい」し、それを可能とする「豊が集まる公園(WealthPark)」を用意する為にDXの力を活用したいと思っています。

(後編へ続く)


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