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クラウドリアルティでは、地方の課題を解決するプロジェクトを多く扱っています。この記事を読んでいる方の中には、投資を通じて社会貢献をしたいと考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。今回の記事は、投資を通じて社会貢献ができる理由、そしてそんな投資の方法について解説します。
投資とは、株や債券といった金融商品などにお金を回して、資産を増やすことです。しかし、投資の目的はそれだけではありません。投資をすることで企業や社会の成長を支え、社会貢献につなげることもできます。
世界の潮流は、社会貢献を重視した投資になっています。この記事では、「なぜ投資は社会貢献になるのか」ということについて解説します。
「投資」という言葉は広い意味があります。しかし一般的には、お金を投じて将来の資産を増やすことです。
将来に向けてお金を準備するためには、資産運用をする必要があります。そして、資産運用には「貯蓄」と「投資」があります。どちらもお金を増やす方法ですが、「貯蓄」はお金を確実に増やすことを重視し、「投資」は損をする可能性があっても、大きく増やすことを重視するものです。一般的に貯蓄は銀行の預金などで、投資は株式や債券・投資信託などの購入のことです。
銀行に預けている普通預金などは、基本的に自由に引き出せるお金です。日常生活や緊急時に必要になるお金は、すぐに引き出せる「貯蓄」で持っておくことが大切です。
一方、教育や老後資金など将来のために増やしていきたいお金は、株式や投資信託などの投資を利用し、長い時間をかけて少しずつ増やしていくようにします。株式や投資信託は運用成果を予測できませんが、預貯金よりも高い利益を得られる可能性が高いという特徴があります。ですから将来に備えてお金を増やすには、投資が向いているのです。
投資は、お金が増えるか損をするかわからないという点で、投機と比較されがちですが、投資と投機は本質的に仕組みや目的が異なります。
一般的に投資と投機を区別する基準は、どのような期間で投資リターンを考えるかがはっきり意識されているかどうか、リターンが合理的に予測できるかどうか、の2点にあると言われます。
短期的な予測に基づいた為替などの変動で利益を得る取引のことを、一般的に投機と呼んでいます。儲ける人もいますが損もする人がいて、全体でみれば儲けと損の合計はトントンになります。
このような環境を「ゼロサムの世界」といいます。お金の総量は増えない(ゼロ)ので、お金を参加者同士で取りあう行為です。
そのような取引では、投資家全員が利益を上げることはできないので、「安いところで買って、高いところで売る」といったように、上手に取引しなければいけません。しかし、短期売買では手数料などのコスト負担も大きいので、勝ち続ける人は一部です。
これに対して株式や債券などの長期的な投資は、経済活動からのリターンを目指します。個別企業の株式に投資するのであれば、その企業の業績によって将来のリターンに違いは生じますが、経済の成長にともなって株式を保有している人はみんな収益を得られることが期待できるのです。
金融資産に長期的に投資することによって、経済活動の拡大にともない、配当や値上がり益というかたちでリターンが望めるのです。ただし、そのためには国内の企業だけでなく、海外の企業の株式や債券などに幅広く分散投資しておく必要があります。
国内の景気が悪くても、成長を続けている国があるからです。ゼロサムの世界である投機に対し、投資は「プラスサムの世界」。経済が成長する限り、みんなで出し合ったお金が増える(プラス)ので、投資をした人はみんなで収益を分かち合えるのです。
投資は、自分の将来のお金を貯めることだけが目的ではありません。投資には「経済成長を支える」という意義があります。投資を通じて、企業の商品やサービス作りを手伝うこともできるのです。そして企業の成長を支えた結果、よりよい暮らしの環境や質の高いサービスを手に入れることができます。
長期投資は、企業の利益成長を重視します。どのような企業が伸びるかというと、経済や社会の成長・発展につながる経営を続け、「人々を豊かにしよう」というニーズに応えようとする企業です。
ただ、新しい製品やサービスの開発には莫大な時間と資金が必要になります。どれだけ製品が世の中の役に立つものであっても、開発資金が足りなければ作りだすことはできません。
そこで、資金難で苦しんでいる企業の株を買ってお金を回すことで、企業の将来や経済発展を支えることができます。開発されたサービスや製品が世の中に普及すれば、人々の生活は豊かになります。投資をしたことにより、社会が便利で暮らしやすくなるのです。
社会貢献が社会をよくすることなら、投資も立派な社会貢献であるといえるでしょう。
これまでの企業の目的は、利益の追求や規模の拡大でした。それらも大切ですが、利益のみが企業の役割ではありません。ビジネスで得た技術や利益は、社会に還元されていくべきです。
今後は、社会的責任を軽視する企業は存続できなくなる可能性さえあります。格差のない社会で人々が暮らしていくようにすること、そして次世代、次々世代にも継承していくこと、そういう企業がこれからは求められていくのです。
企業間で広がる社会課題解決の動きに個人が参加するには、寄付、ボランティアといったかたちもありますが、有効な手段の1つが「投資」です。儲けるだけでなく、より良い社会作りを目的としている企業に投資することが、社会問題解決の動きに個人として参加できる手段なのです。
投資は投機ではないので、「一発当てて儲けよう!」といったギャンブル的発想では成功しません。短期的な利益ではなく、豊かな社会を作っていくための投資に、世界の潮流は移りつつあります。
国連は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択し、先進国を含む国際社会全体の持続可能な開発目標(SDGs)として、2030年を期限とする以下の17の目標と、それらを達成するための169のターゲットを定めています。
世界中のあらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い、気候変動に対処するための取り組みを進めているのです。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が普遍的に取り組むものであり、日本も積極的に取り組んでいます。
「投資家の立場を利用してSDGsの達成を促進させる」、それがSDGs投資といえるでしょう。投資家は、企業のSDGsへの取り組みによる持続的成長を通じ、中長期的なリターンの獲得を目指すのです。
企業の収益だけでなく社会的価値を重視する投資活動というのは、20世紀初頭から存在していました。米国の一部の投資家に「社会的に問題のある企業に投資したくない」という意識が生じたからです。そして、アルコールやギャンブル、たばこなどを扱う企業を投資対象としない金融商品が生まれました。これをSRI(社会的責任投資)といいます。
日本では、1999年に設定されたエコ・ファンドが最初のSRIファンドだといわれています。ただ、SRIは投資家の賛同を得やすいものの、必ずしもほかの投資スタンスに比べて収益率が高いというわけではありませんでした。
そこで、誕生したのが「ESG投資」です。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の略称です。企業が持続的成長を目指す上で重視する非財務情報も考慮した投資で、その背景には、地球規模の環境・社会に関する課題が健在化していることへの問題意識があります。ESG投資によって、従来の財務諸表からは見えにくいリスクを排除でき、企業の持続的成長によって中長期の収益も狙えるというメリットもあるのです。
ESG投資には7つの種類があり、世界的に注目されているのが「インパクト投資」です。インパクト投資とは、差別や貧困、環境、教育など社会的な課題の解決を図るとともに、経済的な利益を追求することで、「社会的インパクト投資」とも呼ばれています。
インパクト投資では、投資リターンだけでなく、社会環境に対するインパクトリターンも計測して評価されるのが特徴で、SDGsの各課題の目標が設定されます。ESG投資が盛んな欧州では、SDGs達成に向けた投資を「SDIs(Sustainable Development Investment)」と呼び、インパクト投資を重視した動きが広がっています。
投資は「お金を増やすこと」だけが目的ではありません。投資をすることで企業や経済の成長を支え、社会貢献につながるからです。欧米の機関投資家は、投資によってお金を儲けるだけでなく、「どれだけ社会に貢献できるか」を重視する流れになっています。
とくに、持続可能な開発目標(SDGs)を達成する「インパクト投資」の注目度が高まっています。インパクト投資は、ESG投資の一種です。ESGの概念が生まれたのは2004年頃ですが、機関投資家を中心にESG投資は急速に拡大しています。
ESG投資は2020年に35兆ドルに達するとみられ、今後ますます「社会貢献」を重視した投資は広がるでしょう。
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<参考資料>
・日本証券業協会『サクサクわかる!資産運用と証券投資スタートブック(2020年版)』
・渋澤健『SDGs投資 資産運用しながら社会貢献』(朝日新聞出版)
・澤上篤人『10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え』(朝日新聞出版)
・水口剛『ESG投資 新しい資本主義のかたち』(日本経済新聞出版)