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クラウドリアルティでは、地方の活性化につながるプロジェクトも扱っています。
地方への関心が高い方の中には、UターンやIターンを検討したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、地方へ移住するためには、乗り越えなくてはならないハードルが多くあります。今回はそうしたハードルを超えるために役立つ地方移住支援について、自身も制度の活用経験のあるライター・伊藤将人さんにご紹介いただきました。
地方移住は準備過程~生活が軌道に乗るまで予想以上に費用がかかります。引越し見積もりの一括比較サービス「引越し侍」の調べによると、時期により相場は異なりますが、単身で都道府県をまたぐ引っ越しをする場合、3万円~10万円かかります。
ここに追加で地方では必須の自家用車代、新しい家具や雑貨の購入費、子どもがいる場合は子どもの学校変更に伴う費用や諸々登録費用など、移住は最初に数十万円単位の費用がかかるのです。
この現状を踏まえ、国や都道府県では地方移住のハードルを低くするための補助金を整備しているところが増えてきています。今回は、国が行う支援2つと、長野県が行う支援を特徴的な代表例として紹介します。
地方移住する際に使える支援金は、移住者受け入れ自治体のみならず政府も力を入れ始めています。2019年度~2024年度に移住する場合に使えるのが「地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業」です。支援を受けられる人は以下の条件に当てはまる人になります。
細かな条件は他にもありますので、より詳細な情報を知りたい方は以下のサイトをご覧ください。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/shienkin_index.html
上記の条件を満たすことで、単身であれば最高60万円、世帯であれば最高100万円の補助金がもらえます。さらに起業する事業の内容によっては、プラスで最大200万円の支援金も交付されます。こうした補助金制度を利用することで、移住費用を抑えられる場合もあるでしょう。
本制度を利用して地方に移住して地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった事業分野で起業した場合、起業支援金 + 移住支援金で最大300万円(単身の場合は240万円)の支援が受けられるのです。
国だからこそできる規模の支援であるため、東京圏から地方に移住する方は要チェックですが、地方の中でも支援金が使える地域と使えない地域があるため、自身が移住を希望する地域がこの支援金の対象内にあるか事前に確認しておくことが必要です。具体的には、「地方創生支援異業マッチングサイト」で確認できる「マッチングサイト」が開設されていない地方は利用が厳しいです。
地域おこし協力隊は、過疎化や高齢化などの課題に直面する地方自治体が、都市住民を受け入れて地域おこし協力隊として業務を委嘱し、地域おこし活動の支援や農林業の応援などの「地域協力活動」に従事してもらい、その協力隊員の報償や活動費のうち一定額について国から特別交付税による措置がなされる制度です。隊員の活動そのものによる地域の活性化とあわせて、隊員が任期終了後に地域に定着することによる地域の活性化・住民の増加も制度の目的です。
地域おこし協力隊はおよそ1年~3年の間、地方自治体から委嘱を受け、対象の地域で生活しながら地域協力活動(業務)を行います。
筆者は約5年前から、全国で2番目に隊員の数が多い長野県を中心に、現役の隊員や任期後の隊員への聞き取りを続けています。2017年には長野県主催の協力隊初任者研修のトークセッションによばれた経験もあります。そんな筆者が考える、協力隊員になる上でチェックしておくべき項目を以下にまとめました。
地域おこし協力隊制度を利用する自治体には、最大で400万円の特別交付税措置がなされます。報償費などで200万円、その他の経費(活動旅費、消耗品費、事務的な経費、定住に向けた研修等の経費など)で200万円がその内訳です。自治体によって活動費や月々の給料は異なるため、事前に気になる自治体のサイトから調べることが重要です。過去の聞き取り調査を通しての傾向は、20代の協力隊の多くは「生活していくうえで十分です」と答える一方、30代、40代と歳を重ね、結婚したり子どもができたりすると「協力隊だけの収入では厳しい」と答える人が多い印象です。
先輩隊員の数と任期後の定着率は、その地域がどれだけ協力隊の受け入れ態勢が整っているかを示す指標となります。志願前に、実際にその地域に足を運び、地域の情報が集まっているカフェや役場の移住担当者などに、先輩隊員の数と任期後の定着率を聞きましょう。協力隊制度はすでに開始から約10年が経過しており、自治体間の受け入れ態勢の充実度合いに大きな差が出てきています。任期開始後に後悔しないためにも事前の情報収集は怠らないようにしましょう。
全国の受け入れ自治体は総務省のサイトで、各地域の隊員の属性や任期後の動向については、県庁サイトなどで確認できます。
都道府県が進める移住支援金も数多くありますが、多くの選択肢を用意し幅広い移住希望者の支援を行っているのが長野県です。長野県は宝島社発行の『田舎暮らしの本』(2020年2月号)による2020年版「移住したい都道府県」ランキングで第1位となっており、平成18年(2006年)以降、14年連続1位に輝いている移住優等生。そんな長野県が5年前から行っている支援制度が「おためしナガノ」です。実は筆者は2019年度にこの制度を使って長野県と東京都の二拠点生活を行っていました。
おためしナガノは、最大約6か月の長野県ライフおためし期間中、県が宿舎の提供、引越し代・交通費等の補助をする制度。対象はIT関連事業の個人・法人で、首都圏と地方の二拠点生活を試してみたい人や、「いきなり移住やサテライトオフィス開設は……」と考えている個人や企業が対象となります。参加条件は以下の通り。
支援金額の上限は半年間で30万円と、国の支援制度と比較すると決して多くありませんが、首都圏と長野県を移動する際の交通費も対象となるのが最も嬉しい点でした。おためしナガノの対象となる費用は以下の通りです。
おためしナガノでは、最終的にコワーキングスペースを持つ自治体が受け入れ先となります。長野県が地元だったり先輩移住者だったりするコワーキングスペースのスタッフさんが地域や行政とのつなぎ役になってくださるので、移住あるあるの「ホームシック」「ローカルルール分からない問題」が発生しにくくなっています。おためしナガノの最大の特徴はこの点と言っても過言ではありません。
おためしナガノよりもより気軽に長野県を体験できる「ときどきナガノ」という制度も長野県は行っています。ときどき長野は、IT関連の事業に携わる長野県外の人が長野県を訪れ仕事をし宿泊する場合に、来県1回につき1万円計10回分を上限に補助する制度です。
本記事で紹介したものは数ある支援金の中でもほんの一部です。金額は少なめなものが多い一方、多様な選択肢がある自治体の支援金、数が増え続ける空き屋の改装費用や中古物件取得の際に使える自治体の支援金、子育て世帯限定の支援金などバリエーションは豊富です。多くの地方自治体は新規移住者獲得のためこれまで以上に制度を充実させていますので、比較して自身が描く移住後の生活を達成するのに最も適した支援金を有効に活用してみましょう。
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まちづくりライター
伊藤将人
1996年長野県生まれ。一橋大学社会学研究科にて地方移住と観光に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県内外で観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・調査・PRを手がける。訪日観光客向けWebサイトNAGANO TRIP、地域考察WebメディアKAYAKURA運営。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など執筆多数。東京都国立市と長野県の2拠点居住中.Twitter@ito_masato