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実物不動産投資(以下、不動産投資)を始める際に重要なこととして「売却」という「出口戦略」があります。
この出口戦略の考え方と注意点について、不動産ライターの秦創平さんの解説記事です。
不動産投資の出口戦略を立てることは、“最終的に物件を売却するタイミングを決めておくこと”と言い換えてもよいでしょう。
不動産投資の出口戦略は、マンション投資なのかアパート投資なのかによって異なります。マンション投資の場合は、例えば、売れなければ自宅用として使用するといった選択肢を取ることも可能です。
しかし、アパートの場合は基本的に一棟単位での投資となり、建物以外に土地も保有するケースが多いため、売れない場合の選択肢もマンション投資とは異なります。出口戦略としてどのようなものが最適なのか、取得の時点で不動産業者とよく話し合うようにしましょう。
不動産投資の出口戦略は、物件によって最適解が異なるものです。また、不動産投資の成否は、物件選びがほぼ全てを握っていると言われます。
候補となる各物件ごとに出口戦略を考えて比較するのでは、物件選びに時間がかかってしまうでしょう。このため、まずは投資目的に合わせておおよその計画を立て、計画に合致する物件を絞り込んでいくのがベターです。
出口戦略が決まっていると、どのような物件が自分に合っているのかといった方向性が定まります。方向性が定まっていると、物件を選ぶうえで迷うことが少なくなり、購入がスムーズに進むでしょう。
出口戦略は投資目的に合わせて考えていくものです。一方、売却のタイミングにフォーカスすると、売却に適したタイミングの候補は以下のように複数挙げられます。
投資用不動産に限らず自分が住んでいる家を売るときも同様ですが、不動産を売却すると、売却益に対して不動産譲渡税が課税されます。
不動産譲渡税の税率には2種類あり、その不動産を保有していた期間によって税率がどちらになるかが決まります。不動産を購入した翌年の1月1日から数えて5年が経過すると、長期保有となり売却益の20%が不動産譲渡税となります。逆に保有期間が5年未満の状態で物件を売却すると短期保有になり、税率は40%となります。
このため、物件を売却するタイミングとしてはできる限り5年以上保有した後の方がよいでしょう。
続いて、不動産運用のキャッシュフローがマイナスになるタイミングも物件を売却するのに適しています。キャッシュフローとは、家賃収入から賃貸管理費や支払金利などの各種諸経費を差し引いたあとに残った金額のことです。
物件が空室にならず稼働し続けていれば、キャッシュフローがマイナスになることはないと考える方もいるかもしれません。
しかし、稼働し続けているとしても、以下のようなタイミングでキャッシュフローがマイナスになることはあり得ます。
①減価償却費の減少
不動産は、築年数に応じて減価償却費を計上できます。減価償却費は確定申告において経費計上できるため、税金対策につながります。減価償却費は、不動産運用における利益だけでなく給与所得とも合算できるため、不動産運用しているサラリーマンの方にも有効です。
また、建物部分以外に、耐用年数が定められている設備も減価償却費を計上可能です。しかし、減価償却費を計上できる期間は決まっており、所定の年数を経過すると計上できなくなります。
つまり、不動産運用を続けていると、いずれ計上できる減価償却費が減るタイミングが来ます。減価償却費が大きい場合、計上金額が減ったタイミングで物件を売却するのも有効です。
②支払利息の減少
投資用物件の購入にあたってローンを利用している場合、建物部分のローンの支払利息も確定申告で経費として計上できます。投資用ローンには返済期間が短いものもあるので、ローンを完済して支払利息がなくなることもあるでしょう。
ローン完済によって支払利息がなくなるタイミングも、物件売却を検討するのに適切なタイミングとなります。
③固定経費や修繕費の増加
不動産会社に支払う賃貸管理費や物件の修繕費も経費計上できるのですが、これらは実費を伴うため、キャッシュフローに直接的な影響を与えます。
保有している物件が古くなっていった結果、修繕費などが増加するのはよくあることです。経費の増加によってキャッシュフローが赤字になってしまうこともあるでしょう。
経費の増加によってキャッシュフローが赤字になったら、物件の買い替えを検討する時期といえます。
物件を売却するうえでは、できる限り高く売れるのが理想的なのは事実です。このため、多くの人は「不動産マーケットが良い状態の時に売りたい」と考えるでしょう。
しかし、不動産投資の出口戦略を立てる上で重要になるのは、不動産マーケットの未来予測よりも、よい物件に投資できるかどうかです。このため、マーケットの状態よりも投資目的や物件情報に基づいた投資シミュレーションなどを根拠として出口戦略を立てるようにしましょう。
物件ありきで出口戦略を立てるほうがよい理由について解説します。
「マーケットの状態が良くなったら売り出そう」などあいまいな計画のもとに投資するのは避けましょう。今後何年経ったら不動産が値上がりあるいは値下がり局面に入るのかといった市場の予測は、専門家でも難しいものです。
値上がり局面に入っているとしても、「まだ上がるのではないか」という心理が働いて、結果的に値下がり局面で売り出さざるを得ないことも考えられます。
本当に売りやすい物件というのは、不動産マーケットの状態に関わらず売れるものです。仮に景気が悪くなったとしても、不動産が全く売れなくなるということは考えにくいでしょう。
ただし、マーケットの状態が悪くなったときにも売れるのは、需要が強い物件だけです。このように考えると、重要なことは、物件を購入する時点で需要のある物件を見抜けるかどうかであるといえます。
不動産マーケットの状態に左右されない、売れる物件とはどのような物件なのでしょうか。ここからは、どんなタイミングでも売れやすい物件の特徴について解説します。
売れやすい投資物件とは、賃貸需要が途切れにくい物件とも言い換えることができるでしょう。どんな投資目的であっても、空室が続いてしまっては目的を達成することが困難になるからです。
賃貸需要が途切れにくい物件の特徴として、生活利便性の高さをあげることができます。生活利便性が高い物件の特徴は以下の通りです。
駅から近い上に、商店街などの近くに立地していればベストです。
不動産を賃貸して住む人は独身のサラリーマンなどが多いです。独身のサラリーマンなどには、オフィスが密集している都心部にアクセスしやすい立地の物件が好まれます。
電車の路線図などを確認して、乗り換えなしで都心部にアクセスできる物件などを探すとよいでしょう。
どのエリアの物件に投資するかと考えるとき、人口増加率は判断材料の一つとなります。人口が増えれば賃貸需要も増えるためです。
しかし、日本全体で人口減少が叫ばれている現在、人口が増加しているエリアは極めて少なくなっています。一方、家を借りる単位となるのは、人口ではなく世帯です。
世帯数の増加状況を見てみると、人口の増加状況で探すよりも多くのエリアが投資先の候補として見つかるでしょう。
不動産投資の出口戦略は、物件を選ぶときから決まっているといっても過言ではありません。重要なポイントは、自分が不動産投資をする目的を明確化することと、マーケットに左右されない物件を選ぶことです。
物件を売却するおおよその時期とその根拠が決まっていれば、物件選びに迷うこともありません。まずは、不動産投資によってどういったことを実現したいのか考えることからスタートしましょう。
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