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今回のテーマは、実物不動産投資(以下、不動産投資)。不動産投資には様々な方法がありますが、個人で不動産投資を始めるにあたって悩ましいこととして、物件選びがあります。自宅選び同様新築に目が行きがちですが、新築と中古の物件を比較した際の「新築」のメリット・デメリットを不動産ライター・亀梨奈美さんに解説してもらいました。
投資物件を選ぶにあたり、決めることは多くあります。立地、築年数、間取り……どれも今後の収益にかかわる重要なことですが、まずは新築物件にするか、中古物件にするかを決めかねていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
「中古はリフォームや修繕にお金がかかりそう」「新築の方が入居率は高いはず!」「新築と中古だったら絶対新築の方がうまくいきそう」
このように「中古より新築」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は新築物件による不動産投資には、いくつか懸念点があるのです。
新築物件とは“新しく建設された物件”ですが、「新築」と「中古」の明確な違いをご存じですか?
「誰かが住んだ家が中古物件でしょ?」
このご認識は、正解です。ただ、実は人が住んでいない住宅も中古物件になり得ます。
『新築住宅』は、「住宅の品質確保の促進に関する法律」第2条2項で次のように定義されています。
つまり、人が住んだことのない住宅だとしても、築1年を迎えた日から「中古物件」になるということです。
新築物件は、当然ながら新品の設備、建具で引き渡されるため、貸し出す前に修繕やリフォームをする必要がありません。また分譲会社から直接購入する場合には、「仲介」にはあたらず、最大「物件価格×3%+6万円」の仲介手数料は不要です。そのため、中古物件と比較して、投資における初期費用が安いということがメリットの1つだといえるでしょう。
それでは新築と中古の前提条件がわかったところで、不動産投資をする上で新築物件がデメリットとなりえる3つの理由をみていきましょう。
まず1つ目の理由は、新築物件の「価値の落ちやすさ」です。
新築物件は、中古物件よりかなり高額なイメージがありますよね。新築物件が高額な理由には、分譲会社の取り分や“新築”という唯一無二のプレミアが販売価格に加味されているからです。しかし、この「加味された分」というのは、中古になった時点でなくなります。要は「新築」という一定の付加価値は、建築から1年が経過した場合、もしくは一度でも人が入居した場合、売却時にはすでになくなっているということです。
さらに借家は、築年数が浅いほど経年による資産価値の下落率は高いという統計があります。
総務省によれば非木造住宅の減耗率の平均は「1.7%/年」ですが、築10年までは「2.0~2.5%/年」、築10~20年は「1.5~2.0%/年」ほどです。(平成25年住宅・土地統計調査による)
新築から中古になることでの価値の下落率は、よく「20%」ともいわれます。しかし、実際のところは物件によります。分譲時に申し込みが殺到していたマンションなどは中古になってから価格が上がるものもありますし、再開発等によっては分譲後の周辺地価が上がるかもしれません。
ただ基本的に、新築物件は中古になった時点でガクンと価値を落とすものであり、その後の資産価値下落率についても高いということは、認識しなければならないでしょう。資産価値の下落率が高ければ、不動産投資する上でキャピタルゲイン(売却益)が得にくくなる、あるいは売却損が発生してしまうという可能性を考えなければなりません。
新築物件は、資産としての価値のみならず、賃貸物件としての価値が落ちるスピードも早いといえます。
「新築物件」というのは、入居者にとって大きな魅力の1つです。新築時は周辺の賃料相場よりやや高い賃料を設定しても入居してくれる可能性がありますが、やはり資産価値と同様に、賃料についても築年数が浅い方が下落率は高いという統計があります。
上記グラフのように、借家は築10年までの賃料下落率が高く、築10~20年になだらかに。そして、築30年からさらに下落率は低くなっていくのが基本です。
「新築物件の資産価値は落ちやすい」という話をここまでしてきましたが、その理由はやはり、新築物件が相場より高額ということにあります。
もちろん価格が高いだけではなく、最新の設備で修繕いらず、また人気の高さから空室率が低いという点は、新築物件の大きなメリットです。物件代金以外の費用があまりかからず、担保価値も高い新築物件は、まとまった現金の用意もせずにフルローンで物件を購入することも可能です。ただし、この点についても一見してメリットにもみえますが、ローンが占める割合が高いことは、決して不動産投資において“安全”な状態とはいえません。
投資に限らず、ローンを組んで不動産を購入する場合には、常に「ローン残債額」と「不動産の資産価値」について気にしておくべきです。たとえば、ローン残債額が3000万円で、その物件を売却した場合の価格が2500万円だとすれば、500万円の自己資金を投入しない限り物件を手放すことはできません。ローン残債が物件の価値を上回っている場合を、「オーバーローン」といいます。オーバーローン状態だと、売却とともにローンの借り換えについても難しくなると認識しておきましょう。
資産価値下落率が高い新築物件をフルローンで購入した場合にはとくに、購入後すぐにオーバーローン状態に陥りやすいといえます。「手放したいときに手放せない」というのは、不動産投資においてもっとも避けなければならないことの1つ。オーバーローンの状態が続けば、一番いいときにも売れず、逆に昨今のような急激に経済危機に直面しようとしているときにも、手放すという選択ができなくなってしまいます。
物件価格が高く、ローンが占める割合も高いとすれば、自己資金は手元に残ったとしてもキャッシュフローが振るわない状態に陥ってしまいます。キャッシュフローとは、不動産投資をする上で毎月手元に残るお金のこと。「インカムゲイン=賃料収入」と近い言葉ですが、インカムゲインが上々だとしても、借り入れによる返済額が高ければキャッシュフローは悪化します。つまりは、ローンの割合が高ければ月々の返済額がかさみ、「儲け」が少なくなってしまうのです。
さらに3つ目の理由として、新築物件による投資は、過去の事例がないということがあげられます。新築当初は空室リスクが低いとしても、それが長期的に続くのか、賃料はどのように下がっていくのか、推測するのが難しいということです。
投資物件を見定める上では必ず収支計算をしますが、新築物件には、過去いくらで貸し出していて、どれくらいの空室率があって、いかほどの利回りか……という事例がありません。
そのため、収支シミュレーションは「予測」の範疇を出ないと言えます。中古物件だとしても、それまでの収支が今後も継続できるとは限りませんが、参考値はあるわけです。「その地域で他の投資物件を所有している」「不動産投資歴が長い」という方はいいかもしれませんが、不動産投資初心者ならとくに、知らない土地で新築投資物件を購入するのは慎重になるべきでしょう。
新築物件は、取得後、数年間の空室リスクは低い傾向にありますが、周辺物件と築年数で差別化ができなくなってからは、その物件がもつ本当の価値でしか勝負できません。参考値がない新築物件を見定めるには、その土地の人の流れやニーズ、将来的な観測など、相対的に判断する必要があるのです。
ここまで「新築物件は投資に不向き!」と言わんばかりの内容で話を進めてきましたが、新築物件の「初期費用がほとんどかからない」「需要に期待できる」という点は大きなメリットだといえるでしょう。ただ注意が必要なのは、「新築だから」という理由だけで選ぶのではなく、その他の条件についてもしっかり見極めることです。
新築物件は、フルローンで投資を始めることもできます。しかし先述の通り、資産価値の低下率が高く、物件価格が高額な新築物件をフルローンで購入する場合はとくに、キャッシュフロー悪化のリスクが伴います。そのため、できる限り現金を入れて借り入れ額を抑えることを考え、キャッシュフローを高めるとともに、手放しやすくしておくことが重要です。
表面利回りなどみれば、飛びつきたくなる新築投資物件も多く見られます。しかし新築物件の家賃が高いのは、なかば当然のこと。税金や売買にかかる諸費用のことを考えれば、不動産投資は基本的に1年や2年で出口が設定できるものではありませんので、長期的な経営シミュレーションをすることが大切です。
新築でも中古でも、不動産投資が成功するかどうかは立地にかかっているといっても過言ではありません。空き家の急増や働き方改革などを受け、人の流れが変わりつつある昨今では、今まで「絶対的な需要がある」とされてきたエリアでも、中長期的な需要はわからなくなっています。
言い換えれば、それだけ立地選びは難しくなっているということ。築年数だけでもいけない、立地だけでもいけない、購入してからの戦略も考えなければならない……という不動産投資は、やはり一筋縄ではいかないのです。
実は私も、自己居住用ですが、新築マンションを購入したことがあります。予定より早く、購入後5年ほどで手放したのですが、「儲け」というのはそこまで出ずとも、フルで組んだローンを返済してもなお諸費用等はまかなえるだけの売却金額となりました。
【参考】「自宅投資」は必ずしも資産形成のためのものではなく、人生をより良くするためのものと考えれば上手くいく。
私が購入したのは、ターミナル駅徒歩7分ほどの新築マンション。周辺にライバルといえる物件はなく、購入時には駅の再開発が決まっていました。購入・売却の時期的な要因もありますが、結果として5年という短期間で損せずに新築マンションを売却できたのは、立地選びに成功したのだと思っています。
不動産投資物件は、相対的な判断によって選ぶことが大切です。新築物件は確かに需要に期待できますが、立地などとは違い「一時的」な付加価値でしかありません。高額で、資産価値の下落率も高い新築物件による不動産投資で成功するには、中古以上に物件を吟味する必要があるといえるでしょう。
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不動産ライター
亀梨奈美
大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに不動産記事を多数執筆。