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今回は、実物不動産投資(以下、不動産投資)。マンションの一室、アパート一棟などを購入し貸し出すことで利益を得る不動産投資のメリットとデメリットについて、金融ライターの山下耕太郎さんにまとめていただきました。
不動産投資の利益には、家賃収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)がありますが、不動産投資の基本はインカムゲインを狙うことです。毎月決まった額の賃料が入ることが不動産投資の強みだからです。
しかし、不動産投資固有のリスクやデメリットもあります。今回は、不動産投資のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
不動産投資の一番のメリットは、入居者がいれば毎月安定的な収入が確保できることです。部屋を借りるときは1年や2年といった年単位なので、長期的に収入が得られます。また、賃料は短期で大きく変動することは少ないので、安定した収入になるのです。
たとえば、日本不動産研究所の調査(2019年10月時点)によると、賃貸住宅一棟(ワンルームタイプ)の期待利回りは以下の通りです。
東京(城南地区*1) | 4.2% |
東京(城東地区*2) | 4.5% |
*1城南地区:港区、品川区、目黒区、大田区の4区
*2城東地区:中央区、台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区の6区を含む東京湾沿いのエリア
名古屋 | 5.0% |
大阪 | 4.9% |
福岡 | 5.1% |
このように4~5%の利回りが安定的に狙えるというのが、不動産投資のメリットです。
不動産投資は、他の金融商品に比べてもリスクとリターンのバランスがいい商品です。たとえば、銀行預金は元本が保証されているのでリスクはありませんが、お金はほとんど増えません。
一方、株やFXなどは大きな利益を狙えますが、大きな損失になる可能性があります。銀行預金のように安全なものを「ローリスク・ローリターン」の投資といいます。また、株やFXなど大きな利益や損失がでるものは「ハイリスク・ハイリターン」の投資です。
そして、リスクは中程度で元本は保証されませんが、投資がうまくいったときにある程度の利益が狙えるものを「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資といい、不動産投資はこれにあたります。
不動産投資は毎月の家賃というリターンを確保できる一方で、不動産価格の値動きは株やFXなどに比べて緩やかです。また、現物資産なので価値がゼロになるという心配も少ないという点で、ミドルリスク・ミドルリターンの投資手法といえます。
不動産投資ローンとは、マンションや一棟アパートなど投資を目的とする不動産を担保にして、購入資金を金融機関から融資を受けることです。ローンを組むということは、「借金」をするという悪いイメージをもつ人がいるかもしれませんが、以下のようなメリットがあります。
不動産投資ローンを組むことによって、自己資金が少なくても不動産投資できます。数百万円の自己資金で数千万円の物件を買うようなレバレッジ効果(てこの効果)が期待できるのです。
また投資ローンの審査が比較的通りやすいサラリーマンの人は、自分で不動産の資金が貯まるまで待つ必要がなく、いい物件があれば不動産投資をはじめられるというメリットもあります。
不動産投資には、節税効果があります。不動産投資で得た収入から建物部分にかかるローンの金利や建物の減価償却、固定資産税などの必要経費を引けるので、所得税の節税効果があるのです。
また、万が一不動産投資で赤字がでた場合、他の所得等と損益通算することにより、所得税・住民税の節税が可能です。サラリーマンの場合、不動産投資の赤字を確定申告することによって、既に給与から納税した所得税と赤字部分と給与を損益通算して計算される所得税との差額を還付してもらうことも可能です。
2020年現在、日本の金融政策はインフレ率2%を目標にしています。インフレが進むと物価が上昇し現金の価値が目減りしてしまいますが、土地の価格も上がります。また、賃料を上げることも可能なので、インフレが進んでも資産価値を損なうことなく資産を守れます。
ローンを利用して投資用不動産を購入する場合、団信(団体信用生命保険)に加入することができます。
住宅ローンの返済中、ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合、住宅ローンの返済が困難になります。そうしたリスクを回避するため、住宅ローンの借入の際には契約者が銀行となり生命保険に加入します。そして、万が一のときでも家族に不動産と毎月の家賃収入を残すことができるのです。
団信への加入は、金融機関から強制されることもあれば、任意の場合もあるため、担当者に確認するようにします。
不動産投資は、相続税対策にもなります。保有している現金を不動産に変えることによって財産としての評価額を下げ、相続税を下げることが可能になるからです。
相続税では保有している現金を相続した場合は額面通りの金額になりますが、不動産の評価は減額して評価されます。相続税は、相続する財産の評価額から基礎控除を差し引いて相続税率をかけて計算します。評価額が低くなれば相続税が少なくなり、節税になるのです。
不動産投資は、入居者がいれば安定的な家賃収入が見込めますが、空室が発生すると当初予定していた利回りが低下してしまいます。
空室リスクの最も重要な対策は「空室の発生しにくい物件を選ぶ」ことです。そのためには、「駅が近い」「都市計画により、今後開発が進む」といった場所を選ぶ必要があります。
また、空室リスクを回避するために「サブリース」を利用するという方法もあります。サブリースとは、簡単にいえば「又貸し」のことです。投資用不動産を管理会社が借り上げ、空室の有無にかかわらず、一定の金額がオーナーに支払われます。
この方法を取れば、仮に入居者がいなくても毎月決まった家賃が入ってくるので安心です。しかし、一括借り上げ期間や賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。金融庁・消費者庁・国土交通省はサブリースに関するトラブルの防止に向けて、以下のような注意喚起を行っています。
【参考】アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!上記の内容をきちんと理解してから、サブリースを利用するようにしましょう。
不動産は株など他の金融商品と比べて流動性が低いので、売りたい時にすぐに売れないというリスクがあります。また、不動産はインフレヘッジになりますが、デフレ局面では価値が下がってしまうリスクがあります。
ローンには固定金利と変動金利がありますが、変動金利を選んだ場合、金利が上昇すると返済の負担額が増加するリスクがあります。しかし現在は低金利が続いているので、変動金利で借りる人が増えています。
たとえば住宅ローンにおける固定金利の比率は、2018年度に30%と2年前から約20%下がりました。将来の金利上昇リスクは低いと判断している人が多いからです。ただし、将来金利が上昇すると返済の負担額が上がるので、毎月の返済に対して現金に余裕を持たせておくことが大切です。
不動産投資には、地震や台風・火災などの災害リスクがあります。災害リスクは事前に防ぐことができないので、火災保険や地震保険などに加入しておくことが必要です。ただ、あまり保険を充実させてしまうと費用がふくらんでしまうので、自治体が作成している「ハザードマップ」を確認するようにします。
ハザードマップとは、過去の災害データなどを基に被害範囲を地図化したもので、購入を検討している物件周辺の地震や洪水、津波などのリスクを確認できます。ハザードマップで過去の災害状況を確認し、どこまで補償するかを決めるようにします。
年数が経つと建物は老朽化します。老朽化した建物をそのままにしておくと、次の入居者が見つけにくくなり、空室リスクが高くなります。
建物の寿命を維持させるためには、日頃からしっかりとした建物のメンテナンスをし、空室がでたら次の入居者を迎える準備をする必要があるのです。
また外壁塗装の塗替えなど大規模な修繕には、長期的な視野にたって長期修繕計画をたてて準備することが必要です。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンで、他の金融商品に比べてリスクとリターンのバランスがいい投資手法です。部屋を借りる人がいれば安定的な家賃収入が入りますし、売却益を狙うこともできます。
しかし、空室が発生すると当初考えた利回りを確保することができませんし、災害リスクや価格下落リスクなどもあります。不動産投資をする場合はメリットだけでなく、デメリットやリスクについてもきちんと把握して行うようにしてください。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011