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日本国内の人口減少や少子化による不動産市場の縮小や震災等のリスクを懸念し、近年では海外の実物不動産への投資を選択する人も。海外不動産投資に興味があるという方向けに、そのメリット・デメリット、投資対象国などについて、不動産ライターの秦創平さんにご解説いただきました。
日本経済や不動産市況の見通しが不透明だと感じ、投資家の中には海外の不動産投資を検討する人が増えてきました。
海外不動産投資を始めるには、まず検討対象になる国や、それぞれの国にどのようなメリット・特徴があるのかなど、全体像を把握することが大切です。
実は日本からでも、アメリカをはじめとした先進国やタイやマレーシアなど新興国へ投資することが可能です。また、海外不動産投資には、経済状況や規制などの違いから、日本の不動産投資にはないメリットとデメリットがあります。
海外不動産投資に関する主なメリットは、外貨による利益の獲得に関係するものと、日本ではエリアが限られる値上がり益が挙げられます。それでは早速、メリットから紹介していきます。
資産の保全という観点で考えると、資産は可能な限り分散させておく方が望ましいです。現金のみではなく、有価証券・不動産・その他実物資産なども併せて保有するのが理想とされています。
近年、日本では地震や台風・大雨など災害による被害も多く発生しています。不動産を保有したとしても場所はできる限り分散させておく方が良いでしょう。
資産の所在地が1ヶ所に固まっていると、不測の事態が起こったとき一気に全部の価値が下がってしまいます。日本国内で分散させておいても良いのですが、価格や将来性を鑑みると、海外の不動産に投資するのが有効な手と言えます。
現在、日本の政府と地方の長期債務残高は1,100兆円を超えており、日本がデフォルトを起こす可能性は新聞やテレビなどでもよく報道されています。
資産防衛という観点で考えると、今後は日本円だけではなく外貨でも資産づくりを進める方が望ましいです。日本では海外の株式なども購入できますが、国別で考えると、日本から株式を買える外国はかなり限られています。他の金融資産などと比較すると、不動産投資の方が間口は広いです。
世界銀行の統計によると、日本の2018年GDP成長率は0.788%です。一方アジアに目を向けると、フィリピンは6.244%、カンボジアは7.498%、マレーシアは4.742%となっています。東南アジアの新興国は、日本と比較すると経済の成長率がとても高いです。
特に東京では不動産価格がかなり高くなっていて、今後も値上がりの期待があるかというと先行き不透明です。しかし海外の新興国では、経済発展に伴う物件の値上がりも期待できるのです。
一方、海外不動産投資にはデメリットもあります。それは日本の不動産投資にはないローンの問題や、物件の竣工リスクです。
海外不動産投資を目的としたローンは、限られた金融機関しか取り扱っていません。また、日本の金融機関でローンを組む場合、第一抵当をつけられる日本の物件がなければ難しいと言われています。となると、海外現地で外国人向けの不動産投資ローンを取り扱いしている金融機関を探すということも考えられますが、現状は取り扱いの金融機関は極めて少なく、さらに見つかったとしてもトラブルに巻き込まれる場合もあります。
実際に過去にマレーシアのコンドミニアムがたくさん販売されていた頃には、HSBC Bankが日本人投資家にも融資していました。しかし、不可解な理由で突然口座を凍結されるなど、トラブルが多発。利用しやすいとは言い難いでしょう。
ちなみに、現在の日本では金利が他に例を見ぬほど低いので、日本と比較すると、海外での金利はかなり割高になることも押さえておく必要があります。
新興国では、政権交代が起こったときに外国人投資家に対する規制などが変わりやすいという実情があります。
例えば、ミャンマーは経済成長が著しい国として注目を集めていますが、現在外国人は自己利用目的でしか不動産を購入できませんし、規制の内容が頻繁に変更されるため、他国と比較して日本人が投資するにはリスクが高いと言われています。
そのほか、中国のように経済発展に伴い通貨の海外送金に対する規制が厳格化されるなど、国によって様々なリスクがあります。
海外の新興国では、建設前の「プレビルド」と呼ばれる物件が売られていることも多いです。日本では余程のことがない限り、建設工事が止まってしまうことは考えられませんが、新興国では工事の中断が頻繁に発生します。物件の売上金を工事の資金に充当するという、自転車操業状のプロジェクトが多いからです。つまり、売上が上がらなければ工事資金を賄えないことが多々あります。
現地で実績のあるデベロッパーがプロジェクトを手がけているとしても、該当プロジェクトの売上が悪ければ、そのプロジェクトの工事は止まってしまいます。そして、一度工事が止まってしまったプロジェクトの工事が再開することは滅多にありません。プレビルドの物件への投資を検討するのならば、必ず物件の発売時期と現在の売行きを確認しましょう。
途中で工事が止まってしまったプロジェクトは、新興国に限らずイギリスなどの先進国でも前例があります。先進国だからと安心しないようにしましょう。事前の確認ポイントは以下の通りです。
メリットとリスクを踏まえた上で、購入を検討している方に向けて、次に海外不動産を購入するための方法とそれぞれの方法に関する注意点をご紹介します。
日本でも海外の不動産を取り扱いしている不動産業者が増えています。都内であれば、ほぼ毎日どこかでセミナーなどが開催されているので、まずはセミナーに参加して情報収集してみましょう。また、地方に住んでいるのであれば、電話で問い合わせしてみると良いでしょう。
ただし、日本の不動産業者から物件を購入する場合は、売主が誰なのかに気を配る必要があります。売主がその業者自身である場合、現地の相場よりも2割〜3割程度高い値段設定がされていることも多いです。
高掴みさせられてしまうのを防ぐためには、物件の購入前に売主が誰なのか、周辺相場はいくらなのかを確認しましょう。
高掴みさせられてしまうリスクを軽減する一つの方法は、現地の不動産業者から購入することです。ただし、現地の不動産業者とのやりとりには言語の問題が絡むため、現地の言語に明るい場合に限っては有効な手段です。
情報もツテもない状態から信頼できる現地の不動産業者を探すのは難易度が高いので、できる限り日本人業者から購入することが賢明であると言えます。
海外現地で日本人の不動産業者を探す方法としては、まず現地の日本人会の情報を探すのがおすすめです。アメリカやイギリスなどの先進国では、首都に日本人が集まっていることが多く、ネット検索でも難なく情報を探せるでしょう。
先進国でなくても、タイなどの日本人に馴染みが深い国であれば問題なく情報を探せます。日本人会のホームページに直接不動産業者の情報がなかったとしても、問い合わせて情報を聞いてみれば、教えてくれる可能性は高いでしょう。
日本で発生している海外不動産投資の失敗は、大半が竣工リスクと賃貸管理の失敗に起因します。竣工リスクに関しては、売主に関する情報のほか、プロジェクトの売り上げなども確認することで軽減しましょう。また、賃貸管理に関しては、できる限り日本人エージェントを介することが重要です。
海外不動産投資のメリット・デメリットは、それぞれ日本の不動産投資にはないものばかりです。デメリットを最小化できれば、海外不動産投資は資産分散の観点からとても有効といえるでしょう。事前の情報収集を怠らず、現地の日本人会などをたどって信頼できる日本人エージェントを見つけることができれば海外不動産投資のデメリットを軽減できると言えます。
後編では、実際に投資を始めてみようという方に向けて、現在日本で物件を購入できる国と、海外不動産投資で利用可能なローンについてご紹介します。
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