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不動産投資に関心のある方にとって、少額で始めることができると言われる「不動産ファンド」は注目の投資方法でしょう。実物不動産投資と比べるとそのメリット、デメリットが詳しくわかります。今回は不動産鑑定士で証券アナリストのHALさんに不動産ファンドについて、基本からご解説いただきました!
不動産投資には、直接不動産を取得して運用する方法(実物不動産投資)と、「不動産ファンド」に投資をする方法とがあります。
なじみがないと、実物不動産投資はイメージできても「不動産ファンド」への投資はイメージしづらいのではないでしょうか。
そこで、当記事では「不動産ファンド」とは何なのか、そしてそのメリット・デメリットがどういうところにあるかなどを詳しく解説していきます。
そもそも「ファンド」とは、投資家からお金を集めてプロが投資・運用し、得られた利益を出資割合に応じて投資家に分配する仕組みをいいます。
「ファンド」は、お金が生み出されるものであれば様々なものを投資対象としており、主な投資対象には以下のようなものがあります。
つまり、不動産ファンドとは投資対象を不動産としたファンドです。
不動産ファンドは、投資家からお金を集めて不動産を取得し、その不動産から得られた利益を、投資家に配当収入として分配する仕組みで成り立っています。
不動産ファンドの仕組みを図式化すると以下のようになります。
不動産ファンドにおいて投資対象となる不動産は、オフィス・住宅・商業施設・物流施設・ホテルなど、そのファンドのコンセプトにより様々です。
また、不動産ファンドでは通常金融機関から融資を受けその借入金と、投資家から集めた出資金とをあわせて不動産投資を行います。
金融機関から融資を受けることによって、投資家側から見ると出資金以上の不動産を取得できるため、資金効率を上げることができます。これをレバレッジ効果といいます。
不動産ファンドは、このレバレッジ効果を活用して運用しているものが多いため、投資家は不動産ファンドへの出資によってレバレッジ効果を得られます。
不動産ファンドへの投資と実物不動産への投資には、以下のような違いがあります。
・不動産ファンドの方が初期費用が少ない。
実物不動産投資の場合、その不動産を投資家1人で購入しなければいけませんが、不動産ファンドについては複数の投資家からお金を集めるので、1人あたりの初期費用が大幅に少なくなります。
このような仕組みを小口化といいます。
・利回りは実物不動産投資の方が高い。
不動産ファンド投資の場合、ファンドの組成費用や運用会社への報酬支払いなどが必要となるため、実物不動産投資と比べて利回りが低くなる傾向にあります。
・家賃収入ではなく、配当収入が入ってくる。
実物不動産投資では、投資家に家賃収入が入ってくることになりますが、不動産ファンド投資の場合は、あくまでも「配当収入」としてのお金が投資家に入ってきます。
・実際の運用は投資家ではなく運用会社が行う。
実物不動産投資の場合、取得した不動産の運用を自分で行うか、自分で選んだ管理会社に物件の管理をお願いすることになります。
一方、不動産ファンドの場合は、プロの運用会社が不動産の運用を全て請け負いますので、投資家はお金を出した後は運用について何もする必要がありません。
不動産ファンドには大きく分けて2つの種類があります。
不動産投資信託(REIT)とは、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づいて運用される投資商品です。
REITでは、不動産投資のための法人(投資法人)が設立され、投資家は投資法人が発行する投資口を取得し、配当収入を受け取る仕組みとなっています。
投資期間は設定されておらず、投資家は投資口の売却あるいは償還により元本(投資した資金)の回収をすることになります。
また、REITには、資金の集め方によって2つの形態があります。
(1)公募REIT(J-REIT)
投資口が証券取引所に上場されており、銀行や証券会社などを通じて誰でも取引可能なファンドです。
個人が少額からでも投資でき、銘柄によっては10万円未満から投資可能なファンドもあります。
株式と同様に投資口価格が日々変化するため、キャピタルゲイン(売却益)を狙って投資する人も多いです。
(2)私募REIT
投資口が証券取引所に上場されておらず、機関投資家など一部の投資家だけに販売されるファンドです。
鑑定評価額ベースで投資口の価格が算出されるため、決算期ごとに投資口の価格が変動します。
J-REITに比べて最低投資金額が高く、数億円から投資可能なファンドがほとんどです。
長期安定運用を志向する投資家が多く、インカムゲイン(賃料収入)が重視される傾向にあります。
不動産特定共同事業とは、「不動産特定共同事業法」に基づいて運用される投資商品です。
不動産特定共同事業も、REITと同じく投資家が出資した資金で不動産を購入し、利益を出資額の割合に応じて分配する仕組みです。
不動産特定共同事業では、投資する物件や期間が決められており、投資開始時点でおおまかなリターンが予想できるため、中長期的な運用に向いています。
不動産特定共同事業には、契約の種類によって3つの形態があります。
(1)任意組合型
投資家と不動産特定共同事業者との間で締結する任意組合契約に基づき運用されるファンドです。
任意組合型の投資の流れは以下のとおりです。
不動産を組合員(投資家+不動産特定共同事業者)にて共有することとなり、不動産取得税など登記のための費用がかかることで、一般的に投資金額が高額になるケースが多いです。
(2)匿名組合型
投資家と不動産特定共同事業者との間で締結する匿名組合契約に基づき運用されるファンドです。匿名組合型の投資の流れは以下のとおりです。
匿名組合型では、投資家は現金のみを出資しますので、不動産特定共同事業者のみが不動産の所有者となり、投資家は不動産の直接の所有者とはなりません。
匿名組合型は、比較的少額で始められるファンドが多い点も特徴です。
(3)賃貸借型
投資家が不動産を共同で購入し、不動産特定共同事業者に不動産を賃貸し、運営業務を委託するファンドです。
不動産特定共同事業者は、運営委託を受けた不動産の管理・運営を行い、賃貸収入を投資家に分配します。
投資家が不動産を取得し所有者となりますので、現物不動産投資に近いファンドといえます。
また、任意組合型と同じく、投資金額が高額になることが多いスキームです。
不動産ファンド投資には多くのメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。
具体的にどのようなメリット・デメリットがあるか、こちらで解説していきます。
・少額から始めることができる
投資家は、不動産ファンドが小口化することにより、少額から投資できます。
実物不動産投資を行うには、少なくとも数百万円単位のお金が必要となりますが、不動産ファンド投資の場合は数万~数十万円のお金を用意すれば投資可能です。
・分散効果の利いたポートフォリオに投資できる
不動産ファンドは複数物件に投資しているものが多く、不動産ファンドへの投資は実質的に複数物件へ投資していることになります。
マンションの1室のみへ投資している場合、その部屋が空室になってしまったら家賃収入がゼロになってしまいます。
そんなときは対処法として、複数物件へ投資するのがよいでしょう。
全ての部屋が空室になって家賃収入がゼロになる確率は低くなり、安定的な運用が可能になります。
これを分散効果といいますが、不動産ファンドへの投資は少額でこの分散効果を得られるという大きなメリットがあります。
・自分で不動産の管理、運用を行う必要がない
不動産ファンドを運用するのは投資家ではなくプロの運用会社です。
プロの運用会社が、ファンドの資金管理や物件の維持管理を全て行います。
そのため、投資家は物件の維持管理をする必要がなく、投資後の事務負担がほとんどない点もメリットの1つです。
・現物不動産と比較して、利回りが低くなる可能性がある不動産ファンド投資の場合、ファンドの組成費用や運用会社への報酬支払いなどが必要となるため、実物不動産投資と比べて利回りが低くなる傾向にあります。
また、不動産ファンドは複数の投資家が投資をしておりますので、投資家にきちんと定期的に分配金を支払えるように、利回りが多少低くても安定運用が可能な物件に投資をする傾向があります。
・不動産の管理、運用の裁量がない
不動産ファンド投資では、投資家は物件の管理などを行う必要がありません。
これは裏を返すと、ファンドの運用方針に投資家の意向を反映することができないということでもあります。
そのため、不動産ファンド投資を行うにあたっては、そのファンドがどのような戦略で不動産投資を行うのか、その不動産をどのような方針で運用していくのか、運用会社は信用に足る会社であるのかなど、しっかりと確認をする必要があります。
・ファンドによっては、一定の売却制限がある
J-REITは、株式と同様に証券市場で売却することができるため、すぐに投資を終了することが可能です。
一方、不動産特定共同事業を解約する場合には、不動産特定共同事業者に自分の持分の買取請求を行う必要があります。
ファンドにより買取請求の手続きは異なりますが、そもそも期間中解約が禁止されていたり、資金に対して数%の買取手数料が必要になったりする場合がありますので、留意が必要です。
不動産ファンド投資は、実物不動産投資と比較して少額から始められる点や、分散効果の利いたポートフォリオに投資できる点など、多くのメリットがあります。
一方で、投資家自らで運用方針を決定できない点や、投資口の売却に一定の制限がある点など、留意すべき点もあります。不動産ファンド投資は、投資後の管理負担もなく、非常に有効な投資商品の1つですので、今回お話ししたメリット・デメリットなどをしっかりと確認したうえで、ぜひ、今後の資産運用のひとつの手段として活用いただければ幸いです。
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ライター
HAL
不動産鑑定士。証券アナリスト。国内金融機関で不動産コンサルティング、ファンドマネジメント業務に約10年間従事。個人でも不動産投資を行っており、都内複数物件の運用を行っている。