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引っ越し先の物件を探そうと物件情報サイトを見ているとき、無意識に「和室」を避けて間取りを確認している人も多いですよね。
私もそうですが、
などといった理由から、昨今は和室離れが加速しているのだそうです。
東京にある私の実家は父方の祖母がオーナーとなって賃貸マンションを所有しているのですが、その中で一部屋だけ和室が残っている部屋が存在します。
その部屋は私の両親が住んでいる部屋と同じフロアにあり、貸し出している部屋の中では最も家賃が高いことあって、父は前々からフローリングへのリフォームを望んでいました。
しかし、和室にこだわり続ける祖母は決して父の提案に対して首を縦に振ることはなく、今現在も和室のまま残っています。
今回は祖母がこだわり続けた「和室」と、それに伴って発生した「外国人入居希望者」についてお話しします。
実家のマンションは賃貸として25部屋を貸し出しており、その中でも一番大きな部屋が今回問題となる和室つきの2LDKとなっています(他の部屋は1K)。
入居者は学生さんや若いビジネスマン・OLさんが大半を占めており、入退去が盛んになる今の時期は内覧希望者が訪れる日も少なくありません。
1Kの部屋は比較的順調に入居の申し込みがあるものの、2LDKの部屋については和室を理由に入居を見送られてしまうことが多く、不動産会社からも「和室はちょっと……」という声が上がるほど。
その様子を見ていた父は祖母に対し、「和室をフローリングにリフォームすべきだ」「これからの時代もう和室は難しい」などと再三伝えたものの、和室にこだわりを見せる祖母はリフォームを許可しませんでした。
祖母が和室にこだわった一部屋にある日一件の問い合わせがあり、電話に応対した母の口から出たのは驚きの一言でした。
「真向いの部屋、フランス人の旦那さんと日本人の奥さんが入居希望だって!」
「フランス人?!」と思わず聞き返してしまったのですが、母によると旦那さんがフランス人だからこそ、和室を経験させてあげたいという奥さんと、「たたみ」に興味を抱く旦那さんのニーズに合致したのだそうです。
その後、とんとん拍子で話が進み、お向かいにフランス人と日本人のご夫婦が住むことになりました。
そして、この出来事をきっかけに2LDK以外の部屋についても、外国人入居希望者からの問い合わせが増えるようになったのです。
和室つきの部屋を外国人に貸し出すきっかけとなったご夫婦は、奥さんが日本人であることもあり特段審査要件を厳しくすることはありませんでした。
とはいえ、その後問い合わせがくるのは単身で日本に留学に来た外国人がほとんど。
文化の違いや言語の違いなど、慣れない外国人が入居することに不安があった祖母と両親はそれまでの審査要件や入居ルールを見直すことにしたのです。
特に気を付けたことは、以下の2点でした。
まずはじめに、外国人へ部屋を貸し出す際の要件を厳密に設定しました。
あくまで実家のマンションの場合ですが、対外国人入居希望者の場合には以下のようなルールを定めています。
日本語での意思疎通に問題がないことはもちろん、家賃の滞納をはじめとしたトラブル防止の観点から保証会社を必ず間に入れてもらうようにしています。
また、連帯保証人を母国に住む両親や親族に設定されても困ってしまうこともあり、連帯保証人は返済能力が十分にある日本人しか認めていません。
実家のマンションでは留学で日本に来ている外国人が多いことから、国内に親族がいない場合にはゼミの教授等が連帯保証人になってくれるケースが多いとのこと。
そして、これは外国人に限らず日本人でも必ず行っているのですが、内覧の際に父や祖母が実際にその人と話をして、貸し出しても大丈夫かどうかを見極めています。
日本人でも、過去には貸した部屋をゴミ屋敷のごとく使われ、壁中に黒カビを残していった人もいれば、毎月当然のように家賃を滞納する人もいました。そのため、必ず一度は対面で話をする場を設けるようにしたのです。
もちろん、入居者に一方的に要求するだけではうまくいきません。たとえばゴミの問題。
外国でのゴミ捨てルールと、日本でのゴミ捨てルールは大きく異なることから、入居時にゴミの分別方法や回収場所についてきちんと伝えておくことは必須です。
実家のマンションでは、エントランスホールに市から配布されるゴミ分別カレンダーを貼り、視覚的にわかりやすくしています。
また、有料ごみ袋が必要な項目についてはどこで買えるのか、有料ごみ袋を使わないとどうなってしまうのかなど、できるかぎり細かく伝えることで混乱を防ぐようにしていました。
私は結婚して実家を離れてしまったこともあり、残念ながらいまは入居者の方と直接交流する機会はないのですが、冒頭でお伝えしたフランス人と日本人のご夫婦が住んでいたころはまだ結婚前で、実家暮らしをしていました。
真向いの部屋ということでなにかと遭遇する機会も多く、そのたびにご主人が片言の日本語でいろいろと話しかけてくれたことを覚えています。
夫婦そろってとても素敵な方で、私が結婚したときはおしゃれなペアワイングラス、娘が生まれたときはフランスの可愛らしい子ども服と、なにかと気にかけて下さったこともまた嬉しかったです。
また、いまも数名の外国人入居者の方が住んでいるのですが、「みんなとても礼儀正しくて気持ちがいいよ」とよく両親が話をしており、時には文化の違いで話が弾むこともあるんだとか。
今回は実家のマンションのことを一例にお話をしてきましたが、これから先日本においては人口の減少に伴って空室リスクが高まることが懸念されています。
空室リスクを減らす方法はさまざまですが、外国人入居者の受け入れも選択肢の一つとして検討する価値はあるのではないかと。
祖母も両親も最初は不安が大きかったこともありどちらかといえば乗り気ではありませんでしたが、実際に入居希望者と会ってみると想像以上に好青年が多く、こちらも先入観を一度捨てなければダメだねと話していました。
どうしても乗り気になれないオーナーさんが多い外国人入居者の受け入れ問題ですが、だからこそ一度先入観を捨てて会ってみるのもよいかもしれません。
また、きちんと仕組みを整えた上で受け入れるようにすれば、外国人入居者が空室リスク回避に大きく貢献することは間違いないでしょう。
ぜひこの機会に、外国人入居者とどう向き合うか考えて頂けたら幸いです。
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フリーライター
織瀬ゆり
某信託銀行退職後、フリーライターとして独立。在籍時代は、株式事務を中心に帳票作成や各種資金管理、顧客対応に従事。宅建士およびFPなど複数資格を所持しており、金融や不動産ジャンルを中心に幅広いジャンルで執筆活動を行っています。プライベートでは2児の母として育児に奮闘中。
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