お役立ち・トレンド
社会人になってすぐ株式投資を始めたものの、株価の上下に一喜一憂する生活に疲れて資産運用や投資全般から遠ざかっていた中澤美菜子さん。なぜ今、不動産投資をストレスなくできているのか。その理由や想いを綴っていただきました。
「中澤さんならどんな家に住みたいと思いますか?」
仕事相手である、不動投資会社の人の突然の質問。一瞬困惑したものの、不動産好きの私はすぐに自分の住みたい家に思いをはせた。元々不動産情報サービス会社に入社したのも、住まいが好きという理由からだった。
「私の理想の家は、ドラマ『anego』*1の主人公が住む家なんです!」
大きめのワンルームに三口コンロの対面キッチン。ベッドスペースはロールスクリーンでリビングと仕切られている。窓は大きくて採光がきちんととれて、ベランダも広め。白を基調としていて、清潔感がある。
「そんな家に帰れると思ったら、今よりも仕事、がんばれそうなんですよね」
するとその担当の方は「それが不動産投資ですよ」と言ったのだ。一体どういうこと?頭が混乱する。
「不動産投資って、突き詰めると人が住まう場所に、住みたいと思ってもらえる家を持つことなんですよ。今、中澤さんが話してくれた家がもしあったら、中澤さんは借りるでしょ」
不動産を所有する側から考えると、価格・ローン・利回り・税制・リスクなど、考慮することがたくさんある。
ただ、なぜ不動産が投資商品としてお金を産むかの根本にあるのは「住みたいか」なのである。もっと言えば、「その住まいに人の喜びが生まれるかどうか」ということなのだ。
目から鱗が落ちるとは、こういうことを言うのだろう。今までわからない、難しい、怖い。と思っていたことが全て晴れていくような気がした。
*1 2005年日本テレビ系で放映されたドラマ。篠原涼子演じる30代の独身OLの仕事や結婚などの悩みを抱えつつ生きる様を描いた作品。原作は林真理子著の同名小説。
「私、不動産投資のことわかっちゃったかも」
「これ!」と思ったらすぐに行動しないと気が済まない私だが、株の運用で疲弊していたので、今回は慎重に事を進めた。まず始めたのは、不動産投資家のブログを読むことだった。
カリスマと言われる投資家、女性の投資家、サラリーマン大家、海外不動産投資家など。彼らの言葉は、リアリティを持って私の中に入ってきた。
色んなブログを読む中で目に留まる記事があった。それはサラリーマン大家を称する人が、アパートを一棟購入し、入居者に選ばれる物件にするために自らの手でリフォームしていくというもの。
壁紙を一面だけカラーに、姿見をデザイン性のあるものに……。そんなちょっとした気遣いで、他物件との差別化をしていた。
不動産は、株や他の投資商品と違って、自分の手で自分の資産をつくりあげることができるのか。
こんな点を面倒・リスクだと感じる人もいるだろうが、私は自分の目と手が届き、自分で工夫できる不動産の方が安心できるのではないかと思ったのだ。自分で稼いだ大切なお金が、どう使われ増えていくのか。お金が目減りしたとしても、自分の手の届く範囲のことなら、納得できるのではないかと思った。
2013年当時、リノベーションはまだ一般的ではなかった。しかし、リノベーションをすれば、日本では不人気な中古住宅をよみがえらせ、まだ使える住宅の有効活用につなげることができる。そんな社会性がある点も自分に合っていた。
「私が住みたい街に、住みたい家を持つ」
そんな想いが、自分の中で段々と現実味を帯びてきていた。
リノベーションした中古物件で不動産投資をしよう。
そう考えた私が物件探しを行う際に重視したのが、「立地・建物・価格」のバランス。
立地は、わかりやすく賃貸需要の多い山手線沿線を軸として考えた。特に都心部は家賃補助のある大手企業の社員需要もありそうだ。
建物は、良質な中古物件。築年数よりも管理状況・体制を重視した。管理人が住み込みの物件は手が行き届いて良さそうだ。そんな物件にリノベーションを施したら相場よりも高い賃料で貸すことができる。
価格は、自分の年収から必然的に決まってくるため、それよりも少し安価に、無理をせずに。
何より、自分がそのエリア・物件に住まうイメージがしっかりと持てるかをもっとも重視した。そうでなければ、また株の時同様「儲かるかどうか」ばかり考えてしまうと思ったからだ。
私自身が、私らしく・楽しく資産を持つことができることが大切だ。株の時と同じ失敗はしないぞと心に誓った。
不動産で自分らしく・楽しく資産運用をしようと決めてから、様々なサイトで不動産をチェックするようになった。
株のときは義務感から日々株価をチェックしていたが、不動産はワクワクしながらチェックした。昨日は港区女子だったから、今日は品川区女子になってみるか。彼氏と中央区で同棲生活もいいな、なんて。今考えるとちょっと気持ち悪い想像をしながら(笑)、そこに自分が住まうイメージをより鮮明に頭の中に描きながら、不動産を探した。
1年ほどした頃、「これだ!」という中古物件を見つけた。間取りはリノベーション済みの1LDK。単身からDINKSの需要が取れる。山手線にも地下鉄にもアクセスできる好立地。「立地・建物・価格」のバランスも申し分ない。不動産投資をしている知人の評判も良かった。
ただ、問題が1つだけあった。人気ゆえに、売主が当初の金額より300万円プラスでの売却を望んでいるという。金額面が折り合わず購入は見送ることにした。
その後もいいなと思った物件を買い逃したり、最初は興味をひかれたけれど最終的にピンとこない物件しか見つからなかったり……。数ヶ月そんなことを繰り返していたところ、最初に買い逃したマンションにまた売りが出ていた。
間取りは1LDKS。数年前にリノベーション済み。単身はもちろん、DINKSから小さい子ども一人がいる家族も対象になりそうな物件だった。
私はその物件をネット上で見つけたとき、「この物件しかない」と思った。すぐさま不動産会社に電話をして「購入するので、すぐに審査をしたいです」と伝えた。
自分でもびっくりしたが、ピンとくる物件をまた買い逃したくないという一心だった。内覧にもすぐ向かった。買えるかもしれない。でも、何千万もする買い物は怖い。そんな気持ちが交錯していた。
着々と審査は進んだが、最後の最後で不安がぬぐえなかったのも事実だった。もう一度、この物件を選ぶ理由・リスクを頭の中で反芻した。やはりこの物件を所有することのメリットの方が優った。それより何より、この物件なら自分が暮らすイメージが鮮明にわいたのだ。
2016年5月、私は晴れて不動産のオーナーになった。不動産の賃貸付から入居者の手続き、物件の管理まで全て不動産管理会社に任せていたので、私は随時その報告を確認し、無事に一連の流れを済ませた。
あれだけ考えて、悩んで、やっと購入した物件。入居者もちゃんとついた。にもかかわらず、私の心はずっとソワソワしていた。本当にこれで良かったのか。そんなことをずっと考えていた。
「あ、株を買ったときと似ている」
そう、投資をするということは、ずっとこの「不安感」というのが付きまとうのだ。色んな根拠を並べても、結局は予想に過ぎない。望んだ結果が出るかどうかは、そのときになってみないとわからない。こと今回の不動産においては長期的な視点で投資をしたため、結果は遠い未来にしかわからない。
そんな当たり前のことがストンと腑に落ちたとき、私の不安感はなくなった。「きっと、いい買い物した」そんな晴々とした気持ちが、私を平常心に戻してくれた。
購入した物件は、経年劣化による水回りのトラブルは数回あったものの、安定して入居者がつき、当時想定していた通り管理状態の良さと周辺環境の変化に後押しされて資産価値は上がっている。
そんな情報を目にするたび、私はそこに住まう人になりきって暮らしをイメージしてみる。
再開発で変わっていく街並みを見て、大都会を感じる。利便性もとても良く、おいしい飲食店も多い。だた、再開発で周辺にビルが増えることで通勤者が増え、駅は混雑して少々不便に感じるようになったのではないか。我がことのように考えるたび、この物件に対する私の愛情は増すばかりだ。老後は夫と二人でこの物件に住み替えてもいいな、と思える程。
さて、ここまで私の不動産オーナーになるまでのストーリーを書いてきたが、独身の28歳の女性が、何千万円もする買い物をした。この事実に何だか自分自身がびっくりしてしまう(笑)。
私は複雑なことを嫌い、できるだけシンプルに事を決めたいと思っている。直感に従い、そこから考えていくタイプだ。理論よりも感情派。これは女性に多いタイプではないかと思う。
「不動産・投資・高額」このワードが揃うと、悲しいかな女性には縁遠いものに感じてしまう。でも私は女性こそ、不動産投資に向くのではないかと思っている。
「私が住みたい街に、住みたい家を持つ」
妄想が膨らんで止まらないあなたこそ、不動産という愛情の注げる資産について考えてみてはどうだろうか。
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マネーライフプランナー
中澤美菜子
新卒で大手不動産情報サービス会社のLIFULLに入社し、不動産投資部門を担当。現在は外資系保険会社で、顧客の個人のライフプラン設計などを行う。個人で実物不動産投資をしている経験から、資産運用の相談に乗ることも。note:minakonakazawa