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投資信託は少額から始めることができ、投資のプロであるファンドマネージャーに運用を任せられるというメリットがあります。しかし、元本が保証されているわけではありません。始めるにあたっては、リスクの理解も重要です。今回は、金融ライターの山下耕太郎さんにリスクについてご寄稿頂きました。
投資信託に限らず、金融商品には「リスク」と「リターン」があります。リスクとリターンについてそれぞれ詳しく解説します。
一般的にリスクとは、「危険なこと」「避けるべきこと」という意味で使われますが、投資信託など金融商品の「リスク」とは、「結果が不確実である」ことを意味します。具体的には、「リターン(収益)の振れ幅」のことです。
リターンとは、投資で得られる収益のことです。以下の図をごらんください。投資信託Aと投資信託Bの価格の変動を表していますが、投資信託Aより投資信託Bの方が価格の変動幅が大きいことがわかります。この場合、「投資信託Bの方がリスクは高い」と判断します。
一般に、リスクが大きくなるほどリターンは高くなり(ハイリスク・ハイリターン)、リスクが小さくなるほどリターンは小さくなります(ローリスク・ローリターン)。リスクとリターンの関係は表裏一体で、大きな収益を期待するとリスクが大きくなり、損失の可能性が高まるのです。
一般に株式やFXなどはハイリスク・ハイリターンで、預金や債券などはローリスク・ローリターンの金融商品です。投資信託には、国内や海外の株式を組み入れて大きなリターンを目指すファンドや、安定的な債券だけで運用するファンド、株式と債券を組み入れるファンドなど、さまざまなタイプがあります。
投資信託を購入する際は、リスクとリターンのバランスを考え、自分の資産形成の目的にあった投資信託を選ぶ必要があるのです。
それでは、投資信託のリスクについて確認していきます。
価格変動リスクとは、ファンドが組み入れている株式や債券の価格が変動するリスクのことです。価格が変動する代表的な金融商品は株式です。国内や海外の政治・経済情勢や個別企業の業績などの影響を受けて変動します。また、債券は満期(償還)まで保有すれば額面(申し込んだ金額)で戻ってきますが、途中で売却する場合は、市場価格により変動します。
為替変動リスクとは、日本円と外国の為替相場の変動により、外貨建資産の価値が変動するリスクのことです。外国の株式や債券を組み入れた投資信託には、為替変動リスクがあるのが通常です。
一般的に、購入時よりも円高になると円での手取り額が減り、為替差損を被ります。一方、円安になると為替差益を得ることができます。
信用リスクとは、債券などの発行体が経営不振、財政難などの理由により、債務不履行(デフォルト)を起こすリスクのことです。デフォルトが起こったときや、それが予想されるときには、債券価格は下落します。また、企業が倒産した場合は、投資元本が償還されない可能性もあります。
また、海外の商品で運用する場合は、その国のカントリーリスクにも注意が必要です。信用リスクを評価する基準として「格付け」があります。
格付けは、ムーディーズ社やスタンダード&プアーズ社などの格付け会社が、独自の調査をもとに評価・発表しています。格付け会社によって異なりますが、「A格」は債務履行の確実性が高い、「B格」は注意が必要、「C格」になると債務不履行になる可能性が高いと判断します。
一般的に格付けが「BB格」以下をハイイールド債といい、利回りは高いものの、リスクの高い債券と位置づけられています。
金利の変動によって債券価格が値動きするリスク。債券がメインの投資信託は、金利変動の影響を受けます。一般に、市場金利(主に10年物国債)が下落すると債券価格は上昇しますが、市場金利が上昇すると、債券価格は下落します。
債券の価格変動幅は、償還までの期間が長いほど大きく、短いほど小さくなるため、償還までの期間が長い債券を組み入れているファンドほど、金利変動による価格変動は大きくなります。
投資信託を選ぶときは、リスクとリターンの関係を理解しておくことが大切です。国内外の株式を組み入れたファンドは大きなリターンが狙えますが、リスクも大きくなります。
また、株式を一切組み入れずに安定的な債券だけで運用するタイプや、株式と債券を組み合わせるタイプなどさまざまな商品があります。組み合わせる商品により、ハイリスク・ハイリターンに近くなるファンドもありますし、ローリスク・ローリターンに近くなるファンドもあるのです。
投資信託のリスクは、標準偏差で表すのが一般的です。標準偏差とは、統計学におけるバラツキを計測する手法ですが、投資信託など金融商品のリスクを数値化する際にも使われています。そして、投資信託の1年後の収益のブレ幅を、以下のように判断します。
年平均リターン±1標準偏差に収まる確率は約68%
年平均リターン±2標準偏差に収まる確率は約95%
具体例を見てみましょう。
年平均リターンが7%、標準偏差が15%のファンドの場合、1年後の投資信託のリターンは次のように計算されます。
7%(年平均リターン)±15%(1標準偏差)、つまり-8%~22%に収まる確率は約68%
7%(年平均リターン)±30%(2標準偏差)、つまり-23%~37%に収まる確率は約95%となります。
標準偏差の数値が大きいほどリスクが大きく、小さければリスクも小さいことになります。投資信託を選ぶときは、騰落率が意識されがちですが、リスクを判断する目安として標準偏差も確認するようにしましょう。
シャープレシオとは、リスク1単位あたりの超過リターン(無リスク資産を上回った収益)をはかる指標で、数値が大きい方が高い評価となります。同じような条件で比較した場合、シャープレシオが高いファンドを選ぶ方がいいと判断できます。
シャープレシオの計算式は、以下の通りです。
シャープレシオ=(ポートフォリオの収益率-無リスク資産の収益率)÷ポートフォリオの収益率の標準偏差
※無リスク資産は、一般的に短期国債の利回りが利用されます。
シャープレシオの計算は難しいですが、数値はモーニングスターのサイトで確認できます。
シャープレシオも、投資信託を選ぶ際の参考にしてみてください。
投資信託のリスクを減らすには、分散投資が有効です。分散投資には、資産(銘柄)の分散や地域の分散のほか、購入時期をずらす「時間の分散」があります。
国内外の株式や債券、リート(不動産投資信託)など特性の異なる複数の資産を組み合わせることで、リスクを軽減できます。国内外の幅広い商品に投資する「バランスファンド」を利用することでも分散投資が可能です。
国内と海外、先進国と新興国など複数の地域や通貨を組み合わせることで、リスクを軽減できます。外国の株式や債券で運用する投資信託を利用することでも、地域の分散を実行できます。
一度にまとめて投資信託を購入するのではなく、積立など定期的に一定額を投資することで、価格変動リスクを軽減させる効果が期待できます。ネット証券を利用すれば100円から積立投資できるので、まとまった資金がない人でも、少額から積立投資できます。さらに、積み立てる銘柄や商品を分散すれば、さらなる分散投資が期待できます。
今回の記事では、投資信託のリスクについて解説しました。主に次の5つのリスクがあります。
リスクを軽減させるためには、分散投資が有効です。分散投資には、資産の分散・地域の分散・時間の分散があります。
投資信託のリスクを軽減させ、長期的なリターンを目指すようにしましょう。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011