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投資信託を始めようと思うと、あまりの種類の多さに悩んでしまう方が多いのではないでしょうか。投資をする上でリスクを減らすために、そして銘柄を決めていくために生かすことができるシミュレーションについて、投資ライターの山下耕太郎さんにご寄稿頂きました。
現在、運用されている公募投資信託は6,000本以上あり、その種類もさまざまです。その中から自分に合うファンドを見つけるのは大変ですし、どのように選べばいいのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
投資信託をえらぶときに大事なことは、「いつまでに」「なんのために」という期間と目的を決めることです。漠然と「増えればいい」と考えているだけでは投資対象は決まりません。
そのためには、人生設計としての「ライフプラン」を考える必要があります。ライフプランとは、将来に向けた人生設計図です。就職や結婚・出産などさまざまなイベントが発生し、そのときどきでお金がかかります。そうしたイベントを想定して、どのくらいのお金を準備しておけばいいのかを考える必要があります。
将来に向けてお金を準備するためには、資産形成をしていく必要がありますが、資産形成には「貯蓄」と「投資」の2種類があります。
貯蓄とはお金を蓄えることで、銀行の普通預金や定期預金にお金を預けることです。大きく増やすことはできませんが、元本を確保しながら安全に資産形成できます。
銀行の普通預金に預けているお金は、基本的に自由に引き出せます。日常の生活資金など、すぐに必要になるお金は流動性の高い「貯蓄」の形で持っておくことが大切です。
一方、投資とは利益を見込んでお金をだすことで、株式や投資信託などを購入することです。貯蓄よりも大きく増えることが期待できます。
しかし、投資にはリスクがあるので、元本が減る恐れがあります。近い将来に必要なお金や必要な時期が決まっているお金は投資には向きません。一方、老後資金など将来のために増やしていきたいお金は、株式や投資信託などを利用した「投資」で、時間をかけてじっくり増やしていくようにしましょう。
投資は、中長期で運用することで「複利効果」が期待できます。利息の計算には、単利と複利の2種類があります。単利とは、利息を元本に組み入れず、元本部分に対してのみ利息がつくものです。
一方、複利とは利息を元本に組み入れて利息がつくことで、利息がでるたびに元本が増えていきます。投資信託では分配金を再投資することで、複利効果が期待できます。
複利効果とは、運用で得た利息や収益を再投資することで、利息が利息を生んで膨らんでいく効果のことです。投資期間と利息の間には関係があり、投資期間が長期になればなるほど、複利効果は大きくなる傾向にあります。以下の図をご覧ください。
元本100万円で、年率5%で単利運用した場合と、複利運用した場合を比較した図です。運用開始後5年では26,282円しか差はありませんが、10年後には128,895円もの差になっています。短期間では大きな差がなくても、長期になると複利効果が大きくなることがわかります。
ただ投資信託の場合、運用結果次第では分配金がでなかったり、値下がりしたりすることもあるので注意が必要です。
投資信託は値動きのある株式や債券などに投資するため、基準価額(投資信託の値段)が変動します。また、元本保証の金融商品ではありません。投資信託の基準価額に影響を及ぼす主なリスクは、以下の通りです。
価格変動リスクとは、投資信託が組み入れている株式や債券の価格が変動するリスク。国内外の政治・経済状況・企業の業績などの影響を受けます。債券は満期まで保有すれば元本が返ってきますが、途中で売却する場合は価格変動リスクがあります。
為替レートが変動するリスク。外貨建ての資産に投資するファンドの場合、円高になれば基準価額にマイナス、円安になればプラスになる傾向にあります。外国の株式や債券で運用する投資信託は、基本的に為替変動リスクがあります。
デフォルトリスクは信用リスクとも呼ばれます。債券などを発行する国や企業が、財政難や経営不振などにより、あらかじめ決められた条件で利息や償還金を支払うことができなくなるリスクです。
リスクを減らす方法の一つが「分散投資」です。分散投資には、主に以下の3つがあります。
株や債券など特性の異なる複数の資産を組み合わせることです。投資信託の投資対象には株式や債券など、さまざまなものがありますが、常に同じ動きをするわけではありません。
一般的に、株式と債券は異なる動き(株式が値上がりすれば債券は値下がり)をします。資産や銘柄の値動きの違いに着目し、異なる値動きの資産や銘柄を組み合わせるのが「資産(銘柄)の分散」です。
複数の資産に分散しておけば、たとえば株式が値下がりしても債券の値上がり益で損失をカバーできます。投資信託には、株式や債券・不動産など複数の資産に投資する「バランスファンド」もあります。
価格変動リスクをなるべく小さくするには、バランスファンドに投資するのも手です。
先進国と新興国など複数の地域や通貨を組み合わせることです。投資信託の投資対象は日本だけではありません。国内と海外、先進国と新興国のように異なる国や地域の資産や通貨に分散することで、特定の国のリスク(カントリーリスク)を軽減させることが可能になります。
投資する時期をずらすことです。一度に多額の投資をするのではなく、時期を分散して投資します。「時間の分散」の方法として、「積立投資」があります。
積立投資とは、一度に多額の投資をするのではなく、毎週や毎月といった一定期間ごとに自動的に投資信託の買付けを、定額で行っていくことです。定期・定額投資をすることで、基準価額が低い時期は多く購入でき、基準価額が高い時期に少なく購入することで、購入単価を平準化できます。投資信託は、ネット証券などを利用すれば100円から積立投資することが可能です。
ただ、積立投資ではどの程度の利益がでて、元本が増えているのかもわかりづらいという欠点があります。そんな時に役立つのが「投資信託のシミュレーション」です。
積立投資を始めるときに大切なのは、目標を設定することです。たとえば、老後のお金として積み立てる場合、「65歳までに3,000万円貯める」と具体的に金額を決めます。
資産運用のシミュレーションには、ネット証券などを利用することも可能ですが、ここでは金融庁のシミュレーションを利用します。
以下の条件で積立金額と運用成果を計算します。
この条件で計算すると、元本600万円、運用収益98.7万円の合計698.7万円になります。
そして、同じ条件で期間を30年にすると、元本1,800万円に対し運用収益1,113.7万円、合計2,913.7万円になります。
投資信託は元本保証の金融商品ではありませんが、分配金を再投資して運用することで、複利効果による高い利回りが期待できます。まとまったお金がない人でも、積立投資なら少額から始めることができます。
複利効果を生かすためには、なるべく早く資産運用を始めることが大切です。しかし、どの程度の効果が実際にあるのか分からないと始められないという人もいるでしょう。そんな人には、シミュレーションを使って、実際にどの程度の金額を貯められるのか計算してみることをおすすめします。
また、金融庁のシミュレーションでは、将来いくらになるのかを計算するだけでなく、将来の目標金額のために毎月いくら積み立てたらいいのか、期間はどの程度にすればいいのかも計算可能です。
シミュレーション結果を参考に、毎月の金額や予定利回りを決めて投資信託の銘柄を決めるようにしてください。
参考サイト
金融庁:投資の基本
【投資初心者必見】NISAや積立投資といった、まず知っておくべき情報配信中!
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011