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「投資ファンドとは?」と聞かれて、きちんと答えることができますかーー。今回は、投資ファンドの仕組みとメリット・デメリット、選び方を元証券マンで投資ライターの山下耕太郎さんにご解説頂きました。資産運用初心者はもちろん、わかったつもりになっている方々にもおすすめの記事です。
投資ファンドとは、複数の投資家から資金を集めてファンド(基金)とし、運用のプロであるファンドマネージャーが株式や債券、金融派生(デリバティブ)商品、不動産など様々な投資対象で運用し、得られた収益を出資比率に応じて投資家に配分するものです。
(参考)用語集:デリバティブ
投資ファンドを簡単に表すと、以下の5つの要素から成り立っています。
投資家 | お金を出す人 |
ファンド | お金を集め、保有しておくところ |
ファンドマネージャー | お金を運用する人 |
事務管理会社(信託銀行) | 金融商品の購入・保管・売却 |
投資対象 | 株や債券・不動産・コモディティなど |
投資ファンドは株式や社債、為替など価格が上下するもの、言い換えるとキャッシュフロー(現金の流れ)を生みだすものを運用対象としています。価格や値段がつき、利益が見込めるものであれば、どんなものでも運用対象となるのです。
発行体が存在せず、極めてリスクが大きいビットコインなど仮想通貨(暗号資産)を運用対象とするファンドも現れています。
多くの人から資金を集めて運用する場合、不特定多数を対象にオープンに募る形式を「公募ファンド」といい、限られた人からだけ集める形式を「私募ファンド」といいます。
公募ファンドと私募ファンドの主な違いは、以下の通りです。
公募ファンド | 私募ファンド | |
ファンド | 投資信託など | ヘッジファンドなど |
購入 | だれでも購入できる | 限定された人しか購入できない |
運用対象 | 行政の厳しい監視が入る | 比較的自由 |
公募ファンドは不特定多数の投資家からお金を集め、その資金の運用を行う金融商品です。公募ファンドの代表は投資信託で、銀行や証券会社などでだれでも少額から購入することができます。個人の投資家ではなかなか扱えないような、海外の金融商品に対しても分散投資できるメリットがあります。
また、実際に資金を運用するのは投資のプロであるファンドマネージャーであることから、安心して運用を任せられるという強みがあるのです。ただし、国内だけでも6,000本ほどの投資信託が運用されているので、どのファンドに投資するかで運用成果は変わってきます。
私募ファンドは不特定多数の人が参加できるというものではなく、適格投資家など49人以下という少数の投資家に限定して資金を集めて運用されます。適格投資家とは、いわゆるプロの投資家のことで、法律で認められた投資の専門家のこと。年金や金融機関といった機関投資家などが該当します。
私募ファンドには企業を買収する「バイアウトファンド」やベンチャー企業へ投資する「ベンチャーキャピタル」など様々な種類がありますが、もっとも知られているのは「ヘッジファンド」でしょう。私募ファンドは法律の規制を受けないため、投資家から集めた資金の運用が自由にできます。ですからデリバティブを積極的に利用するなど、大胆な資産運用によって大きな利益を上げることも可能です。
また、少数の投資家によって資金が集められているため、出資者が頻繁に入れ替わることもありません。ただ、少数の投資家から多くの資金を集めなければいけないため、ある程度まとまった額の投資が必要になります。私募ファンドの中には、最低出資額が1億円というものもあります。
それでは、投資ファンドのメリットについて見ていきましょう。
個人投資家や機関投資家にとって、資産運用の手段が豊富になったというメリットがあります。複数の投資家から資金を募ることで、単独では投資できないような大規模な案件への投資が可能になるからです。
たとえば大きなビルを所有して不動産投資をしようとすると、数十億~数百億円という資金が必要になります。しかしオフィスビルに投資するREIT(不動産投資信託)を購入すれば、小口での投資が可能になるのです。
また海外の株式を購入することには抵抗がある投資家でも、海外株で運用するファンドに投資をすれば、間接的に投資効果が得られます。
投資ファンドのカギになっているのは小口化で、規模の大きい投資案件も小口化することによって、個人でも投資しやすくなりました。投資信託は個人投資家でも購入可能で、投資ファンドの裾野を広げる上で大きな役割を果たしています。
また、複数の金融商品に分散投資することで、リスクを減らすことができます。リスクとは損失や危機が発生する可能性のことで、どんな金融商品にもリスクは伴います。たとえば一つの企業の株式しか保有していない場合、もしその企業が破綻したら利益を得られないどころか投資したお金も戻ってきません。
しかし複数の銘柄に分散しておけば、他の銘柄で損失をカバーできる可能性があるのです。リスクを抑えるためには、株式だけでなく債券や商品・不動産など複数の金融商品に分けて投資する必要があります。
分散投資するには手間と時間がかかりますが、投資信託の場合は数十から数百銘柄で運用するので、一つのファンドを購入するだけで分散投資を実現できるのです。
さらに私募ファンドには、ヘッジファンドやベンチャーキャピタル、バイアウトファンドなど様々な種類があります。そして伝統的な資産である株式や債券と異なった値動きをすることから、機関投資家の投資リスクを分散する効果も期待できるのです。
公募ファンドの投資信託はその限りではありませんが、私募ファンドであるヘッジファンドの多くは、絶対収益を目指します。絶対収益とは、必ず収益をあげるという意味ではなく、投資対象とする市場のパフォーマンスにかかわらず収益を追求することです。
株で運用しているファンドの場合、投資信託であれば株価の下落は基準価額の下げを意味しますが、ヘッジファンドはそういった相場環境でも空売りを仕掛けて収益を狙います。どんな相場環境でも絶対収益を狙うのも私募ファンドの大きな魅力です。
株式や債券など大まかな投資対象は選べるものの、実際の運用はプロのファンドマネージャーに任せるため、運用の方針や内容に口出しすることはできません。運用がうまくいっている間は問題ありませんが、運用結果が悪いときは不満を感じるかもしれません。
投資のプロであるファンドマネージャーに資産運用を任せるので、支払報酬や手数料が発生します。ですから、運用益がそのまま投資家に還元されるわけではないのです。とくに私募ファンドであるヘッジファンドの手数料体系は「Two Twenty(2の20)」といわれています。
これはファンドを運用するときに発生する運用報酬が年率2%、成功報酬が収益の20%の手数料体系だということです。ヘッジファンドの運用者にとって、ボーナスの最大原資である成功報酬を稼ぐことが最重要課題。ですから、成功報酬を獲得するために絶対収益を目指し、良好な運用成績を上げ続けなければいけないのです。
小口化が進んでいる投資信託では、100円と少額から投資することも可能です。しかしヘッジファンドなどの私募ファンドでは最低投資額を大きく設定しているところが多く、億単位でないとお金を預けられないこともあります。
投資ファンドを選ぶときの注意点について解説します。
ファンドを選ぶ際は、過去の実績を必ず確認するようにしましょう。半年や1年程度の高パフォーマンスでは、偶然だった可能性もあります。3~5年程度の実績を確認し、安定的な運用成果が出ているかどうか確認するようにするのです。
また、どの程度のリスクを取るのかという「リスク許容範囲」を決めることも重要です。リターンを重視したファンドは、その分リスクも高くなります。ですから、ある程度の損失も覚悟しなければなりません。
ハイリスク・ハイリターン型のファンドは、株式を中心に運用するものが大半です。とくに成長株に集中投資するファンドや、海外の新興国の株式に投資するファンドは、高いリターンを望めますが、大きな損失を出す可能性もあるので、リスクを許容できない投資家は手を出さない方が無難です。
投資信託の主なコストは、証券会社や銀行など販売会社が徴収する「販売手数料」と、運用会社・管理会社が徴収する「運用管理費用(信託報酬)」です。投資信託を買付けするということは、自分の資産を管理・運用するため、このようなコストを支払って大勢のプロを雇っているのだという考え方もできます。
またヘッジファンドなどの私募ファンドでは、それ以外に「成功報酬」が設定されているのが通常です。通常は20%程度ですが、実績が高いファンドマネージャーほど高く設定される傾向にあります。
ただ、プロが投資しているからといって必ずしも運用成果が得られるわけではありません。運用にかかるコストをできるだけ抑え、運用効率をあげていくことも投資家としての重要なポイントなのです。
投資ファンドは投資家からお金を集め、運用のプロであるファンドマネージャーが様々な金融商品で運用します。だれでも購入可能な「公募ファンド」と、限られた人しか購入できない「私募ファンド」の2種類があります。
私募ファンドは一般の投資家は購入できませんが、ヘッジファンドやアクティビストファンドなどはマーケットに大きな影響を与えることもあるので、動向には注目しておくようにしましょう。
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