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新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の影響で、申告期限が4月16日まで延長された2020年の確定申告。
実物不動産投資を行っている場合、確定申告をする必要があります。でも、初めてだとなかなかわからないもの。
そこで今回は、自称・ズボラ女子のライター・木元楓さんが、自身が不動産投資の確定申告をマスターするまでの経験や失敗談、そしてアドバイスをまとめてくれました。
わたしの不動産投資の始まりは突然でした。2010年、23歳の時に父が亡くなり、突然相続でマンションとアパート、貸店舗を管理することになってしまったのです。
【参考】「働かなくても家賃収入があるんだ」程度だった私が数々の失敗を重ね不動産管理会社の重要性に気づくまで
不動産投資をする準備も何も出来ていなかったわたしは、もちろん確定申告をするのも初めて。必要書類も不動産投資の経費として計上できる費用が何かもわからず、確定申告って何するんだよ、ひたすらめんどくさいな……と思っていました。
しかし、家賃収入がある以上、確定申告をしないと脱税になってしまいます。
仕方なくで始めた確定申告1年目は、税理士さんに丸投げするところから始まるのです。
確定申告は、毎年大体2月中旬から1か月間のうちに前年度の収入と支出を計算して税務署に申告をします。
そんなことも知らなかったわたしでしたが、2月に入る頃、相続の時にお世話になった地元の税理士さんから「確定申告の時期が来たので、不動産投資に関わる収支がわかる書類をもってきてください」と連絡が来ました。
しかし、父が亡くなって間もないわたしは、不動産投資の知識は皆無。不動産投資にかかる支出はもちろん、自分の住んでいる家の公共料金や、固定資産税、住民税・国保の保険料等をすべて家賃収入から支払っており、銀行口座も同じものを使っていたので、不動産投資に関わる費用がどれなのかすら、見当がつきませんでした。
わからなかったので放っておくと、税理士さんから「まだ、書類そろいませんか?」と催促の連絡が入りました。今考えると、税理士さんが気にかけてくれなかったら、わたしは申告漏れになってもおかしくないほど、いい加減でズボラだったと思います。
「どれが該当の書類かわからない」と正直に話すと、「こちらで判断するから、とにかく持ってきてほしい。期限が間に合わないと面倒ですよ」と言われ、不動産貸付収入がわかる通帳と家にある全ての税金の領収書と公共料金の領収書、不動産会社との契約書類をかき集めました。その中には、まるで関係のない不動産会社の見積書や提案書、自分の住んでいる家の公共料金や、住民税・自動車税・国保の保険料の領収書、もしかしたら経費になるかもしれないと普段自家用で使用していた車のガソリンの領収書も入っていました。信じられませんがそれをすべて提出し、そこから税理士さんに必要書類を選別してもらっていたんです。
通常、白色申告を税理士に依頼すると、5万円から10万円が相場と言われていますが、わたしは10部屋と1店舗の不動産貸付収入の確定申告を、5万円でやってもらっていました。当時は相場も知りませんでしたが、面倒な仕分け作業込みでその価格で引き受けてくれた税理士さんはとても良心的だったのだなと、感謝しています。
税理士さんは、その面倒な作業を最初は仕方なくやってくれていましたが、2年目3年目と回数を重ねるうちに、不動産投資にかかった領収書だけ持ってくるように、そして不動産投資専用の通帳を作るか、帳簿をつけるように言われました。本当に恥ずかしい話ですが、管理がずさんなため、提出する領収書も月ごとにあったりなかったりすることもあるため、申告するのも一苦労だったようです。
しかも、先ほども申し上げた通り、わたしが税理士さんに提出していた銀行の通帳は、不動産投資にかかる支出はもちろん、自分の住んでいる家の公共料金や、住民税・国保の保険料等もすべて同じものだったため、確定申告をするときに、個人的な支出なのか、計上できる経費なのかわかりづらかったのです。
そこで、税理士さんに言われたとおり、今まで使っていた銀行口座を不動産投資専用にして、個人的な支出を分けることにしました。
この時の税理士さんは『母親のように根気強く指導してくれた』ように私は感じています。亡くなった父も同じ税理士さんにお願いしていたのですが、父もズボラだったため、蛙の子は蛙だなと思われていたのかと思いますが、見放さずに手を焼いてくれて本当に感謝しています。
不動産投資専用の銀行口座を作ろうと思ったときに、計上できる経費を知ることは必須でした。今まで思いつくすべての領収書を提出して、そこから税理士さんに選別していてもらっていたわたしにとって、大袈裟ですがここが一番の難所でした。
しかし、ここを頑張れば年に一度来る、必要なのかどうかわからない領収書集めを省略できる!と気合を入れ、計上できる経費をすべて通帳で管理できるようにするのです。
わたしの場合、不動産投資専用の銀行口座で引き落とされるのは、固定資産税、アパート共用部分の電気代、損害保険料等。税理士さんに支払う報酬も経費として計上できたので、こちらの口座から振り込みをしました。
逆に今まで提出していた、所得税・住民税・自動車税・自宅のガス・水道・電気代等は必要経費にはならないことを知り、個人口座からの引き落としに変更しました。
必要書類がわかれば、自分でも確定申告ができると思い、当時パソコンを持っていなかった私は手計算・手書きで確定申告をすることにしました。前年までの税理士さんにしてもらっていた確定申告を参考にして、1週間ほど時間はかかりましたが(笑)4年目にして初めて、確定申告を自分ですることが出来ました。
しかし、やはり圧倒的に効率が悪い!手計算だと、数字が合わなくて何度も計算が必要だし、どんなに気を付けていてもどこかしら書き損じをしてしまう。修正テープは使えないので二重線と訂正印を押すと、書類が見づらい(笑)。
そこで、パソコンを入手したことをきっかけに、気になっていたe-Taxを検索しました。するとe-Taxを利用するためには、専用のICカードリーダーか事前にe-Tax用のID・パスワードを作成することが必要ということと、e-Taxを利用しなくても、パソコンで確定申告書類を作成できる『確定申告書作成コーナー』があることを知りました。
国税庁のホームページの『確定申告書作成コーナー』では画面の案内に従って金額等を入力すれば確定申告書等を作成することができます。作成した確定申告書等は、e-Taxで送信するか、印刷して郵送等により提出することが出来ます。
e-Taxはインターネット上で確定申告と電子納税ができますが、専用のICカードリーダーの準備か事前にe-Tax用のID・パスワードを作成することが必要です。わたしは、書類を印刷して提出することにしました。
これが本当に便利なんです!一気に作成できない時でも途中までの内容を一旦保存して、続きは保存したデータを読み込んで作業を再開することができたり、今まで確定申告の手引きを見ながら手計算をしていた、給与所得の計算や生命保険料控除の計算、課税される所得金額の計算等をすべて自動で計算してくれるのです。パソコンを普段利用する方は「当たり前でしょ」と思われるかもしれませんが、今まで手書きでやっていたわたしには革命でした。
それも書類がきれいでわかりやすい!手書きの時は慣れても丸1日はかかっていた申告作業が2、3時間もあれば出来るようになりました。
国税庁のホームページの『確定申告書作成コーナー』では、確定申告の内容をデータとして保存しておくと、翌年の確定申告のときにそのデータを引き継ぐことが出来るんです。
データを引き継ぐと、申告者の氏名、住所、生年月日等は入力不要。給与所得のある人は、会社住所と会社名は前年データから引き継ぐことが出来ます。
不動産所得の申告についても、物件の住所や居住者の氏名は前年データを引き継ぐことが出来るので、物件に入退去がなければ入力を省くことが出来ます。物件の減価償却についても、本年中の償却期間を入力すれば自動で計算してくれますし、借入金利子の支払先や税金の計算に影響のない項目は入力が省略されます。
私は現在11戸の物件と駐車場を不動産所得として申告していますが、1年間での入退去は2件ほどなので、残りの居住者のデータはそのまま利用できています。入力するのは数字のみなので、前年データを利用することでさらに時短で確定申告をすることが可能になりました。
あれだけめんどくさがっていた確定申告ですが、申告をすることで還付金が返ってきたときはとても嬉しかったです。
わたしは会社員として働くサラリーマン大家さんのため、給与から所得税を源泉徴収されています。ある年、修繕費の金額がとても多く、不動産所得が赤字になりました。確定申告をすると、不動産所得と給与所得は合算されるので、不動産所得の赤字の分、全体の所得が下がります。結果、給与から源泉徴収されていた所得税は納めすぎということで還付されてきたのです。
不動産所得が赤字になると聞くと、あまりいいことではないように聞こえますが、実際には減価償却費がありますので自己資金がマイナスになっているわけではありません。減価償却費は実際の支出を伴わないのに、経費として収入から差し引くことができるのです。ただ、書面上はマイナスになりますので、納めすぎていた所得税が返ってきました。
そして、住民税に関しても所得の金額をベースに計算されるため、所得がプラスの時と比べると、10分の1以下になったことにもビックリしました。
もちろん、赤字はなるべく避けたいですが、修繕費が多くなってしまった年でも節税効果につながると考えると、修繕も計画的に活用していきたくなりませんか?
いかがでしたでしょうか?
わたしは本当にめんどくさがりでズボラな性格ですが、わからないうちは税理士さんにお願いする、少しわかってきたら不動産投資専用の通帳を作る、国税庁のホームページの『確定申告書作成コーナー』を利用して時間や手間を短縮することで、1年に1度の確定申告を漏れなくすることが出来ています。
恥ずかしいくらい本当に当たり前のことばかりですが、毎年の確定申告が憂鬱な方や、これから不動産投資を始める方の確定申告の参考になっていれば幸いです。
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ライター
木元楓
投資用不動産の売買をしている不動産会社での営業事務経験あり。現在は自身でも投資用不動産を所有し、個人で不動産貸付業に9年従事。