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親しい仲でも話しにくいのがお金の話。そこで今回、元信託銀行員ライター・すずきママさんに、ご自身の資産運用状況についてポートフォリオと考え方をご寄稿いただきました。資産運用を始めようと思っている方必見の記事です。
まず、多くの金融のプロの「資産運用の基本的な考え方」をご紹介します。
残念ながら投資の世界では、ローリスクでハイリターンを得られる金融商品はありません。
まれに「確実に儲かる」といったうたい文句を目にすることもありますが、怪しいと思った方がよいでしょう。本当に確実に儲かるのであれば、知っている人は他人に教えません。それどころか買い占めて自分の利益にするでしょう。絶対に儲かるという金融商品があったとしても、広く世間に出回ることはありえないのです。
ですから、資産運用ではどのくらいのリスクを取ってどれくらいのリターンを得たいかを考え、投資対象を選ぶことが重要です。
金融のプロは、正確に値動きの予想ができると考えている方も多いようです。
期待に応えられず恐縮ですが、金融のプロであっても将来の株価や為替を予想することは困難です。テレビや新聞で専門家の予想が紹介されていますが、大きく予想と反した値動きをすることも多くあります。
株や為替はさまざまな要素が複合的に絡み合って価格が決まるため、金融の専門家も予想が難しいのです。
株の専門家は、業績予想や財務分析などを行い将来の株価を予想しますが、予想の前提を覆すような金融危機や天変地異が発生することもあるため、完璧に予想を的中させることはできません。
では、値動きが予測できない金融商品を使って、どのように資産運用をすればよいのでしょうか。
答えはシンプルで、資産を分散させるしかありません。
資産運用の世界では「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があります。資産=卵を複数のカゴに分散して持つことで、全滅を避けろという意味です。
一口に資産運用といっても株や債券、不動産などさまざまな投資対象があります。
また、投資先は日本だけではありません。アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、南米など世界各国の金融商品に投資もできます。
はっきり言って、将来の値動きを完璧に予想することは不可能です。ですから、投資対象となる金融商品や地域を分散することで全滅というリスクを回避するのです。これは資産を増やすための考え方というより、ゼロにしないための考え方です。
資産運用を続けていると、投資した資産が値下がりするタイミングも出てきます。その際対策を打つためにも、余裕資金で資産運用をすることが重要です。余裕資金とは、いますぐ生活するために必要ではないお金のことです。
保有している投資対象が値下がりした際に取り得る手段は大きくわけて3つあります。
1.損をしたまま売却して損失を確定する
2.そのまま保有する
3.追加で投資をする
生活に必要な資金で資産運用し万が一値下がりした場合、選択肢のうち1の「損をしたまま売却して損失を確定する」しか選択できなくなってしまいます。
また、余裕資金で資産運用するためには用意した資金で一度に購入するのではなく、少しずつ購入する事も一つの手法です。その代表例が毎月一定額を購入する「つみたて投資」です。
つみたて投資は購入するタイミングを分散することで高値掴みを避けることが可能です。
さて、資産運用の基本的な考え方を紹介しましたが、次に元銀行員の私自身がどのような資産運用をしているのかご紹介します。
私は個人型確定拠出年金(iDeCo)、少額投資非課税制度(NISA)を利用した投資信託を現在行っています。また、過去には実物不動産投資も行っていました。
個人型確定拠出年金(iDeCo)や企業型確定拠出年金(DC)は、国民年金や厚生年金に代表される「公的年金」と比較して「私的年金」と呼ばれています。
iDeCoやDCは自分で投資先を選ぶことが可能です。元本保証の定期預金のほか、株や債券で運用する投資信託を選ぶこともできます。そのため、積立定期のように毎月一定額を積みたてるだけでなく、資産運用もすることができます。
iDeCoやDCの最大のメリットは、掛け金が全額所得控除の対象となること。
この税制メリットがかなり大きく、運用効果に加え所得税の節税にもつながります。節税効果についてはiDeCoの公式サイトで簡単にシミュレーションができますので、一度試してみても良いでしょう。
iDeCo公式サイト:https://www.ideco-koushiki.jp/simulation/index.html
私は銀行を退職してフリーのライターになってからは、毎月iDeCoで積立投資を行っています。以下の円グラフは、私のiDeCoにおける投資割合です。
iDeCoは原則60歳まで解約できないため、長期での資産運用を前提に購入しています。
銀行員時代、投資信託の販売をしていたため、金融商品についてもたくさん勉強しました。
その経験から導き出した結論は、「どれだけ勉強をしても、どの資産が値上がりするかは分からない」ということです。
そのため、iDeCoで資産運用をしているお金は様々な資産に分散して投資をしています。また、iDeCoのお金は老後資金を貯めるための大切なお金ですので比較的値動きが安定している債券を中心に運用しています。
投資信託とは、株や債券、不動産など、さまざまな投資対象で資産運用ができる金融商品です。
【参考】投資信託とは
多くの人から資金を集め運用する仕組みなので、一人ひとりは少額での資産運用が可能です。
少額投資非課税制度(NISA)を利用すれば、年間120万円まで売却益や配当益が非課税となるのでお得に資産運用ができます。
投資信託では、以下のような割合で資産運用をしています。
投資信託ではiDeCoと違い、リスクが高い株式中心の運用をしています。
iDeCoは20年以上の長期で安定したリターンを求めて運用することを目指していますが、投資信託は5~10年で大きなリターンを得ることを目的としているからです。
値動きの大きい株式を中心に運用し、値段が上がったときには利益確定で売却をしたり、値下がりした時は追加投資をしたりして、少しずつ配分を変えながら資産運用しています。
グラフにあるコモディティとは、原油などのエネルギーや金属などに投資をする投資信託です。コモディティ投信は株式とは異なる値動きをするため、分散投資の一環として資産運用をしています。
自分の総資産のバランスが偏らないよう、投資信託ではiDeCoでの資産運用の中心となっている債券は含めていません。
現物に投資する資産運用としてオススメするのは不動産投資です。
不動産投資はリスクが高いイメージの方が多いかもしれませんが、実は安定的な投資対象です。
不動産の主な収益は、毎月の賃料収入です。賃料は毎月大きく変動するわけではありませんので、長期的に安定した収益を見込むことができます。
また、現在の超低金利はお金を預けて金利収入を得る人にとっては不利な情勢ですが、お金を借りる人にとっては有利です。
私は5年ほど前までワンルームマンションで資産運用をしていました。
500万円で購入したワンルームマンションを約3年間保有し、経費を差し引いて50万円ほどの賃料を得ることができました。
売却時の価格は550万円程度でしたので、500万円の資産運用で、賃料と売却益の合計で約100万円の利益を得られたというわけです。
「何で儲かっていたのに売却したのか」とお考えの方もいるかと思いますが、理由は手間です。
不動産投資は家賃の回収や契約の更新など、金融商品での資産運用に比べると手間がかかります。そのため出産をきっかけに売却しましたが、比較的時間がある人にはオススメできる投資手法の一つです。
ここからは元銀行員として自分のお金では投資をしないと決めている、あるいは投資をやめた金融商品をご紹介します。
為替取引で大きなリターンを得ることができるため人気のあるFXですが、個人的にはオススメできません。
オススメできない理由のひとつ目は、為替は予想が難しいということです。為替は経済・政治などあらゆるものに敏感に反応するため、株や債券と比べても予想が難しいといわれています。
ふたつ目の理由は値動きが大き過ぎるという点です。FXはレバレッジと呼ばれる仕組みを使って実際の元本の何倍もの値動きをさせることが可能です。そのため、儲かる時は大きく儲かりますが、損をする時は大きく損をするので、リスクが高すぎると言えます。
FXを個人投資家に浸透しているのは、日本だけといわれており世界的にも王道の資産運用ではありません。
銀行員は銀行の定期預金にあまりお金を入れません。ほとんど増えないからです。キャンペーンなどで多少金利が高い場合もありますが、1%を超えることはほとんどありません。
定期預金や普通預金は生活に必要なお金をある程度おいておけば十分で、この低金利時代に資産運用の主役とはなり得ないでしょう。
変額年金保険とは、保険の機能を備えながら株や債券で運用する金融商品です。
変額年金保険は運用期間中の手数料が高いものが多く、あまり儲かりません。
私も変額年金保険で資産運用をしたことがありますが、やはり運用期間中の手数料が高く、相場が大きく上昇した時期であったにもかかわらずあまり儲かりませんでした。
生命保険料控除という税制優遇制度を利用できますが、iDeCoやDCに比べるとメリットが小さいため運用額が上限に達していない場合はiDeCoやDCを優先した方がよいと判断し切り替えました。
資産運用は目的をもって運用することが大切です。
運用の目的を持つことで目標が決まり、どの程度のリターンを狙うかが決まるものです。
私がiDeCoで資産運用をする目的は老後資金の確保です。
大きなリスクは取らず、長期で安定した値動きのものに資産運用をしたいと考えているため、債券を中心に運用をしています。
一方、投資信託はおこづかい稼ぎのような感覚で資産運用をしているため、利益が出たらすぐに解約してもよいと考えています。多少リスクを取っても、中期で利益を狙える値動きが大きい株式で運用しています。
資産運用では、このように目的によって運用対象を変えることが必要となってくるでしょう。
繰り返しますが、リスクが低く大きなリターンが狙える金融商品はありません。
資産運用を始める前にご自身の目的を考え、それに合った金融商品を見つける必要があります。
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ライター
すずきママ
元信託銀行員でFP2級、簿記2級保有。現在はママさんライターとして二児の子育てをしながら金融記事を中心に執筆活動中。大学在学中から投資に興味を持ち、投資信託、ラップ口座、外貨預金、変額保険、仕組債などで資産運用を経験。