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少額投資の入り口として注目の集まるJ-REITですが、海外の物件に気軽に投資ができる海外REITからも目が離せません。
今回は、海外REITの特徴について山下耕太郎さんにご解説いただきました。
REITは一般的に「不動産投資信託」と呼ばれ、投資家から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃料収入や不動産の売却益を原資として投資家に配当する金融商品です。
取引所に上場しているので、株式と同じように売買でき、物件の取得から運営・管理まですべて専門家が行います。
REITは1960年に米国で初めて導入され、世界各国に普及しました。2018年3月末時点で、世界33の国・地域でREIT市場が開設され、時価総額は約184兆円、銘柄数は971に達しています。
REITの時価総額上位国は、以下の通りです(2018年3月末時点)。
時価総額(億円) | 銘柄数 | ||
1 | 米国 | 1,124,778 | 226 |
2 | 日本 | 119,469 | 60 |
3 | オーストラリア | 103,252 | 49 |
4 | フランス | 91,857 | 28 |
5 | 英国 | 88,868 | 62 |
REITの制度は国によって異なりますが、投資の大部分(日本は90%超、海外も同水準)を投資家に分配する金融商品である点は共通です。
ただ日本のREIT(J-REIT)は、法令により比較的安定した賃貸事業しか行えない一方、海外REITにはそうした規制がありません。ですから、比較的リスクが高い物件開発を行うREITもあるのです。
REITの最大の魅力は、高い分配金利回りです。各国のREITの多くが株式の配当利回りを上回る水準にあるほか、10年国債利回りとの差が大きい国も多く見られます。2019年5月末時点での比較表は、以下の通りです。
REIT分配金利回り | 株式配当利回り | 10年国債利回り | |
米国 | 4 | 2 | 2.1 |
日本 | 3.7 | 2.5 | 0 |
オーストラリア | 4.6 | 4.7 | 1.4 |
フランス | 4.1 | 3.5 | 0.2 |
英国 | 4.3 | 5.1 | 0.8 |
主要資産の利回りは、
となっています。
REITは、オフィスや商業施設、住宅といった様々な用途の物件を保有しています。ですから、世界中の用途物件に分散投資することも可能です。
J-REIT(日本のREIT)の用途別は、オフィスが41.2%、商業施設17.4%、住宅14.4%となっています。
一方、海外REITの保有物件の構成比率は以下の通りです(2019年5月末時点)。
J-REITはオフィスが41.2%を占めていますが、海外REITでは15.5%に過ぎません。海外REITで一番多いのは、商業施設(21.4%)です。
商業施設は、ブランドや百貨店などが集まるショッピングモールや日用品を扱うショッピングセンターなどです。賃貸借契約は長期・固定ですが、歩合賃料が組み合わされることもあります。
2位のオフィスは、景気変動との連動性が比較的高くなります。賃料は、企業収益によって左右される傾向があるからです。ただ、欧州地域では比較的長期契約(おおむね3年)で、固定賃料が一般的です。
また、日本では0.9%しかないヘルスケア施設の割合が、9.2%と高いのが特徴です。ヘルスケア施設はシニア住宅や医療用ビル、高度看護施設などの施設賃貸借契約なので、長期で安定的な収益が期待できます。ただし、保険制度の改正が賃料に影響する可能性があります。
近年では、商業施設やオフィスビルといった建物だけでなく、データセンターやセルタワーを保有するREITが大きく成長しています。
データセンターREITとは、ネットワーク・サーバーや通信機器などの設備に特化したデータセンターを主に保有するREITです。IoT(モノのインターネット)やAI技術の利用拡大により、大容量のデータに対応できるITシステムへの需要が高まっています。ですから、データセンターREITの成長も期待されているのです。
またセルタワーREITは、セルタワー(無線電波塔)を保有・管理し、それらを複数のテナント(無線事業者)に貸すことで、賃料を得るREITです。
海外REITのなかで日本の投資家がアクセスしやすいのは、時価総額1位の米国と3位の豪州です(日本は2位)。それぞれの特徴を見ていきましょう。
米国REITの時価総額は、2018年3月末時点で112.4兆円。2位の日本(約12兆円)や3位の豪州(約10兆円)と比べ、圧倒的な規模を誇ります。米国REIT市場は、1960年から60年の歴史を持ち、世界のREIT時価総額の約6割を占める世界最大のREIT市場なのです。
オフィス、小売(商業施設)、住宅などの伝統的なセクターのほか、ホテル・ヘルスケア・インフラ・データセンターなどのセクターもあります。また、農地や刑務所に投資するREITもあるなど、多様性に富んでいるのが特徴です。
時価総額ベースの上位セクターは、以下の通りです(2019年2月時点)。
日本では40%以上を占める「オフィス」が9%しかありません。
2015年から2018年の3年間のパフォーマンスでは、インフラが+59%ともっともパフォーマンスがよく、インダストリアル(物流)+54%、データセンター+39%なども高いパフォーマンスです。
インフラは、携帯電話の無線基地局などに投資します。時価総額最大の「American Tower」は、1995年に設立されて2011年にREITに転換しました。米国を含む16カ国の基地局や分散アンテナシステムを保有しています。
American Towerの2019年2月末の時価総額は778億ドルで、セクターの52%を占めています。時価総額2位はCrown Castleの493億ドル、3位はSBA Communications Corpの205億ドル。上位3社でセクター全体の98%を占めています。
これらの銘柄は、米国を代表する株価指数であるS&P500の組入銘柄にもなっています。
また、データセンターは2012年以降に急成長しているセクターです。データセンターREITの時価総額は2019年2月末時点で685億ドルですが、Equinix、Digital Realty Trustの2銘柄で全体の84%を占めます。
Digital Realty Trustは、米国内外12カ国のデータセンター195件超を保有しており、2017年には三菱商事と合弁会社を設立。東京と大阪のデータセンターも運営しています。
豪州は住宅セクターが下落傾向にあるものの、オフィスセクターは空室率も低く、賃料も取れていました。2019年の豪州REITの上昇率は+14.2%、配当込みのトータル・リターンで+19.6%と堅調なパフォーマンスでした。
豪州REIT最大の投資対象は商業施設です。安定した経済成長と人口増加が不動産市場を支えていました。しかし、2020年2月下旬になり、新型コロナウイルスの感染拡大が広がると、豪州REITにも売り圧力がかかりました。3月23日時点では、年初来の騰落率が-43.9%まで拡大したのです。
2020年3月は、NYダウや日経平均株価など株式市場は波乱の展開になりましたが、REIT市場も大きく下落しました。3月の1ヶ月間で、海外REITは24.9%も下がったのです。これは、米国株の13.7%や日本株の9.7%よりも大きな値です。
米国REITは全セクターが下落しました。人の移動が制限されていることもあり、とくに利用者数の減少が懸念される小売セクターやホテル・リゾートセクターの下落が大きくなったのです。
豪州も、新型コロナウイルスの感染拡大による景気下振れ懸念が、テナント需要の減少など不動産市場に悪影響を与えると見られています。ただ米国・豪州ともに積極的な金融緩和が行われており、今後、新型コロナウイルスの感染拡大一巡や各国の景気支援策などをきっかけにマーケットの混乱が収まれば、海外REITの投資の好機となりそうです。
2008年のリーマンショックでは、米国REITのパフォーマンスは-49.5%でした。しかし、2009年には+31.3%、2010年に+11.6%となり、損失をほぼ取り戻したのです。
海外REITは、高い利回りが魅力です。しかし、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのように大きく下落するリスクがあります。たとえば、米国REITは米国株と同程度の価格のブレがあり、米ハイイールド債よりもリスクは高いのです。
ですから、海外REITは一括投資ではなく、コツコツと積立投資することをおすすめします。積立投資ならドルコスト平均法により、平均購入価額を平準化できるからです。さらに、投資信託を利用すれば100円と少額から海外REITに投資できます(ネット証券の場合)。
私も海外REITファンドを分散投資の一部として購入しています。株式市場の戻りに対して海外REITの戻りは鈍いものの、10年以上の期間で考え、長期での積立投資を続けていきます。
それでは、人気がある海外REITファンドをご紹介します(数値は5月13日時点)。
日本を除く世界各国のREITに投資することにより、S&Pグローバルリートインデックス(除く日本)に連動する投資成果を目指すファンド。原則として為替ヘッジは行いません。また、購入時と換金時の手数料がかからないというメリットがあります。
世界各国のリートを中心に投資を行い、比較的高い分配金利回りを安定的に目指すファンド。年1回決算を行います。運用は、ラサール・インベストメント・マネージメントが担当します。
REITは1960年に米国で初めて導入され、世界各国に普及しました。時価総額の60%は米国ですが、日本やオーストラリア、フランス、英国、シンガポールなど世界中にREITは広まっています。
海外REITには投資信託を通じて投資できます。2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのような経済危機で価格は大きく下げますが、投資信託なら100円からコツコツと積立投資が可能です。
リスクを分散させる効果もあるので、資産運用に海外REITを組み入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
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