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コツコツ少額からできることから、老後資金のためにと始める人も多い投資信託。実は、リートを購入することも可能です。
今回は、証券マンとしてリートの投資信託を販売していたライター・ikumiさんに、なぜ自身でも購入しているのかについて教えていただきました。
現在、投資信託の市場規模は100兆円を超え、約6,000本もの商品が運用されています。
NISAを始めて、「投資信託が良いと聞いたけれど、どれを買ったらよいかわからない」と思っている人も多いのではないでしょうか。
投資信託では、株や債券だけではなく、リートと呼ばれる証券化された不動産に投資できるものもあります。投資の基本である「分散投資」を考えれば、リートも選択肢の一つです。
今回は、私がリートの投資信託を実際にお客様にご案内し、自分も購入し保有し続けている理由についてお話します。
リートとは簡単に言うと、不動産を証券化したものです。株式と同じように市場に上場しており、売買することができます。
リートの投資信託は、たくさんの投資家から集めた資金で不動産へ投資をし、その賃料収入や売却益を配当に回すしくみです。
個人の投資家にとっては、不動産を小口で買えることと、実物不動産より流動性が高いことがメリットと言えます。
リートの市場規模は、アメリカが世界最大です。「J-REIT」と呼ばれる、日本のリート市場もここ20年で6倍になっていますが、アメリカに比べると約10分の1です。
ここでは、特にアメリカのリートファンドのお話をさせていただきます。
投資信託の中には、「1兆円ファンド」と言われる、投資信託の規模を表す純資産総額が1兆円の商品がいくつかありました。規模が大きいことが必ずしも良い商品とは言えませんが、資金が集まっている人気ファンドと言えます。
2000年に初めての1兆円ファンドが日本で誕生してから、さまざまな投資対象の投資信託が1兆円を達成しました。2020年2月以降は、新型コロナウイルスによる相場下落の影響で、2020年5月現在、1兆円ファンドは存在しません。
リーマンショック前に、5兆円を超える大型ファンドで一世を風靡したのは、「グロソブ」と呼ばれる商品です。正式名称「グローバル・ソブリン・オープン」は、毎月分配型で債券のグローバル分散投資というコンセプトが好評で、多くの資金が集まりましたが、リーマンショックと低金利の影響で、純資産総額は1兆円を下回ってしまいました。
一方で、リーマンショック後に残高が増えたのは、リート系の投資信託でした。2012年以降は、世界的な金融緩和で、長期的な低金利と円安傾向の見通しが強くなり、海外の不動産へ投資できるリート系の投資信託は日本国内で大流行し、純資産総額の上位を占めていました。
リート系の投資信託で1兆円ファンドを達成したのは、「フィデリティ・USリートB」と「新光 US-REITオープン」、「ラサール・グローバルREIT」の3本です。
2014年に私自身も「フィデリティ・USリートB」を購入しました。購入した理由は、2012年以降パフォーマンスが良く、見通しも明るかったからです。
その頃の年間のトータルリターンは、2012年で約30%プラスとなり、2013年が約20%、そして2014年は約50%プラスでした。2012年に購入した人は、3年で2.5倍になりました。
お客様に見通しをお話しするうちに、価格の変動があっても長期保有であれば、配当収入で負けないのではないか、と考え自分でも買いたくなったのです。
また、毎日さまざまなニーズのお客様とお話しする中で、分散投資の一つとしてリートのご案内をしていたので、自分の資産に不動産がなかったことも投資をした理由のひとつです。
残念ながら、アメリカのリート市場は、金利上昇により不動産価格が下落し、残高も減少傾向です。リートを保有するデメリットは、金利上昇局面に弱いことです。
私が保有している投資信託も、投資対象はアメリカのリートです。アメリカの不動産価格の変動と、米ドルの値動きにより、価格が変動するので、最近は基準価格が下落しています。
ただし配当収入があるので、約6年の運用期間で30%ほどのプラスです。評価としては一時80%プラスという時期もありましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、利益幅は減っています。
今は基準価格が下がっていますが、私がUSリートを保有する理由を、メリットと合わせて3つご紹介します。
実物不動産に投資をしようと思うと、手間と労力がかかります。ましてや海外の不動産への投資をすることは、一部の富裕層以外難しい話です。
しかし有価証券であれば、比較的簡単に、海外の不動産へ投資をすることも可能です。
もちろんコストはかかります。近年コストが安い投信が良いという風潮がありますが、私は手数料を払ってでも、個人で投資できない分野に投資ができるのは良いことだと思っています。
投資信託というかたちで投資することで、投資対象の分散投資が可能になります。
不動産に関しては、深い知識が無く、勉強する時間も取れないので、1つの不動産だけでなく分散投資をし、かつ専門家に任せた方が良いと考えています。
少し乱暴な言い方になりますが、利回りが5%のもので運用できれば10年で50%の利益がでる計算です。つまり投資対象が半分になっても、投資額と同じ金額ということになります。
投資対象が値下がりしても、金利の部分で挽回できる可能性があるので、余裕資金で投資し、長期間保有することで、価格変動のリスクを下げることができると言っても過言ではありません。
保有しているのは、「毎月分配型」の投資信託ですが、「複利の効果」を期待するには再投資で運用する必要があります。ここでは、毎月分配型投信の注意点を2つお伝えします。
残高が多かった毎月分配型の投資信託ですが、今ではすっかり下火です。当たり前の話ですが、投資対象の価格が変動するため、一定の分配金を出し続けた場合、基準価格は値下がりしていきます。
実際私が投資した投資信託も、2014年7月は基準価格が5,000円台でしたが、今は3,000円を下回っています。基準価格は40%下がっていますが、約6年の運用の間に分配金は約4,500円出ており、パフォーマンス自体は悪くありません。しかし、基準価格の目減りを気にする人は、毎月分配型の投資信託への投資は向かないと言えます。
分配金は、再投資にすることも可能です。再投資とは、出た分配金を再び投資に回す方法です。「複利の効果」を期待する方が、運用効率が良いと言えます。
商品によっては、「資産成長型」という分配金を出さないしくみのものがあります。長期で運用を考えるのであれば、分配金は受け取らない方が本当はおすすめです。
投資信託はコストがかかります。コストを気にするのであれば、インデックスファンドや個別の株やREITを購入することをおすすめします。
しかしコストが高くても、自分で管理の難しい不動産を購入できることが、リート系の投資信託の魅力と言えます。
私自身の運用は、一時80%プラスの時期がありましたが、現状は30%プラスと、価格の変動は大きいです。しかしアメリカの不動産に投資ができる点と、相対的に見ても利回りが高い点を気に入っており、今後も長期投資で、継続保有しようと考えています。
自分の資産をすべてリートに投資するわけではなく、分散投資の一つとして検討してみても良いのではないでしょうか。
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金融ライター
ikumi
国内大手証券会社で約10年間、資産運用コンサルティングビジネスに従事。有価証券・不動産運用、保険、相続・事業承継対策等の、資産にまつわる相談に対応。夫の転勤を機に退職し、専業主婦へ。2019年より家計管理と運用、FPとしての実務経験をもとに、金融系ライターとして執筆活動開始。不妊治療を経て第一子を出産し、絶賛子育て奮闘中。