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「不動産に投資したいけれどまとまったお金がない」「REITで積立投資したい」という人は、REITの投資信託(REITファンド)の購入を検討してみてはいかがでしょうか。REITファンドなら少額から不動産投資をはじめられ、積立投資の選択肢として適しているからです。
今回は、REITファンドの魅力とメリット・デメリットについて解説します。
REITとは、多くの投資家から集めたお金で、オフィスビルやマンション・商業施設など複数の不動産を購入し、その賃料収入や売買益を投資家に分配する金融商品です。
REITは「Real Estate Investment Trust」の略で、米国で誕生しました。日本のREITは、JAPANの「J」をつけて「J-REIT(ジェイ・リート)」と呼ばれています。
J-REITの詳しい仕組みについては、以下の記事をご覧ください。
【参考記事】日本版不動産投資信託「J-REIT(ジェイ・リート)」とは?メリット・デメリットを解説
REITファンドとは、複数のREITに分散投資して運用する投資信託のことです。複数の不動産に分散投資できるのがREITの魅力ですが、その特徴をさらに追求して分散効果を高めたのがREITファンドなのです。
REITファンドの主なメリットは、以下の3つです。
実物不動産投資は数千万円から数億円の資金が必要になります。また、REITは少額から複数の不動産に投資できますが、最低でも数万~数十万円の資金が必要です。一方、REITファンドなら通常の投資信託と同じように1口1万円程度から購入できます。ネット証券を利用すれば100円から購入することも可能です。
私がもっとも便利だと思うのは、少額から金額を指定して購入できるので、積立投資ができることです。不動産投資で毎月コツコツ買い付ける積立投資ができるというのは、大きなメリットではないでしょうか。
REITが取引されている市場は、日本国内だけではありません。海外の不動産市場に気軽に投資できるのもREITファンドの特徴。とくに世界のREIT市場の6割以上を占める米国にアクセスしやすいというのは大きな魅力です。
2018年3月末時点での国・地域別REITの時価総額は以下の通りです。
海外REITファンドには、運用のプロが不動産市況を見ながら組み入れるREITを厳選するアクティブタイプもあれば、米国のREIT指数に連動するインデックスタイプもあります。さらに欧州やアジアのREITに投資する商品もあるなど、世界中の不動産に投資できるのです。
海外REITファンドには「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」がありますが、「為替ヘッジなし」を選べば、為替差益を狙うことが可能。円高のときに海外REITファンドを購入しておけば、将来円安になったときに為替差益を期待できるのです。
REITの主な収益源は賃料収入です。賃料収入は株価のように大きく変動しないので、REITを投資対象とするREITファンドでも安定的な収益を得ることが可能です。
また、日本のREITの場合、運用利益の90%超を分配金として投資家に分配すると、法人税が実質的に免除される仕組みがあることも、さらに分配金が得やすくなっていると言えます。
ただし、銘柄を選ぶときは分配金の高さや利回りだけでなく、「トータルリターン」で判断することが大切。トータルリターンとは、基準価額(投資信託の値段)の騰落に分配金の実績を加えたものです。いくら分配金が高くても、本来の実力以上に分配していると基準価額が下落し、トータルリターンはマイナスということもあるからです。
海外REITファンドのなかには分配金利回りが10%を超えるものも多くありますが、かならずトータルリターンを確認して銘柄を選ぶようにしてください。
REITは株式と同じように取引されているため、日々価格が変動します。そして、REITの値動きは決して小さくありません。世界的な低金利が続くなか、機関投資家は利回りが期待できる商品としてREITを多く購入しているからです。
ファンダメンタルズ(国や経済などの経済状態)とは関係なく、機関投資家の大口取引によって値動きが左右される可能性があるという点には注意が必要です。
REITファンドは投資信託なので、販売手数料や信託報酬といった手数料が発生し、REITに投資するよりもコストがかかるという点がデメリットです。REITファンドを選ぶ際には手数料が安い投資信託を選んだ方が、利益を多くできます。
また、REITファンドは毎月分配型が主流ですが、分配金は支払われるたびに税金がかかります。税金はコストになるので、少ない方が利益は多くなります。最近では分配頻度を抑えた商品も増えているので、将来に向けた長期での資産形成のためには、分配頻度の少ないファンドを選ぶようにしましょう。
海外の不動産を投資対象としている海外REITファンドは、為替相場の変動次第では為替差損を被る恐れがあります。為替差損の発生を抑えるためには、「為替ヘッジあり」を選択する方法がありますが、別途手数料が発生するので注意が必要です。
REITファンドのリスクをできるだけ回避するには、同じ商品内容の投資信託を選ばずに、投資地域を分散することです。複数の地域のREITファンドを保有していれば、一つの投資信託が値下がりしても、ほかの投資信託でその値下がりをカバーできる可能性があります。
ただし、海外REITファンドといっても組み入れ銘柄の地域配分はさまざまで、地域別のパフォーマンス格差も大きいことから、投資信託を選ぶ際には、各ファンドの地域配分の特徴を把握することが重要です。
とくに「グローバルREITファンド」と名前がついていても、米国REITの組入比率が5割超となっているファンドが多いことから、ほかの地域とのバランスを意識してポートフォリオ(銘柄の組み合わせ)を考えるようにしましょう。
それでは、国内外の純資産総額が大きく、人気が高いREITファンドをご紹介します(数値は2020年3月10日時点)。
国内に上場しているJ-REITに投資し、安定したインカムゲインの確保と、投資信託財産の中長期的な成長を目指すファンド。原則として、毎月(年12回)収益の分配を行います。国内REITファンドでは最大の規模を誇り、毎月配当をもらいたい投資家の人気が高い投資信託です。
国内の金融商品取引所に上場しているJ-REITに投資するファンド。東証REIT指数に連動する投資成果を目指します。このファンドも毎月分配型で、純資産総額は国内REITファンドで最大規模です。
「フィデリティ・USリート・マザーファンド」への投資を通じて、主に米国証券取引所に上場されているREITに投資する毎月分配型ファンドです。純資産総額が5,000億円を超え、海外REITファンドで最大の規模を誇ります。ただし、為替ヘッジをしないので、為替リスクに注意が必要です。
ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
ダイワ・US-REIT・オープン・マザーファンドを通じて、主に米国の金融商品取引所に上場および店頭登録のREITに投資します。配当利回りを重視した運用を目指す、毎月分配型のファンドです。このファンドも為替ヘッジはしません。
REITファンドは、国内外のREITを投資対象とする投資信託です。個別のREITを買うよりも少額から投資でき、複数のREITに投資するので分散効果もあります。
また、国内だけでなく海外のREITにも気軽に投資できるという魅力があります。ただし、値動きは決して小さくありませんし、海外REITは為替リスクにも注意が必要です。
少額から投資をはじめ、複数のREITファンドに分散投資してリスクを抑えた運用を心掛けてください。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011