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複数のJ-REIT銘柄を運用対象にするJ-REIT ETF。ETFには投資初心者にありがたい様々なメリットがありますが、どんなデメリットがあるのでしょうか。今回はJ-REIT ETFの仕組みからおすすめの銘柄までを、元証券マンで投資ライターの山下耕太郎さんにご解説頂きました。
REITとは「Real Estate Investment Trust」の略で、投資家から集めたお金で複数の不動産を購入し、そこから生じる家賃や売却益を投資家に分配する、不動産に特化した投資信託です。運用は不動産に精通した専門家が投資先を厳選し、複数の不動産に分散投資します。
REITは、不動産投資信託全般を指しますが、日本国内の不動産を対象にしたREITを「J-REIT(ジェイ・リート)」といいます。
J-REITは東京証券取引所に上場しているので、株式のようにいつでも売買可能です。また、実物不動産投資は数百万~数千万円の資金が必要になりますが、J-REITは多くの投資家から資金を集めて不動産に投資するので、少額から取引できます。
【参考】日本版不動産投資信託「J-REIT(ジェイ・リート)」とは?メリット・デメリットを解説
J-REITに投資するには、個別銘柄に投資するだけでなく、複数のJ-REIT銘柄を運用対象にするETF(上場投資信託)に投資する方法もあります。東京証券取引所に上場するJ-REITの銘柄数は64銘柄(2019年12月時点)あるので、「どの銘柄を選べばいいのかわからない」という人におすすめです。私もJ-REITに投資する時は、ETFをメインにしています。
ETFはExchange Traded Fund(上場投資信託)の略で、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動する運用成果を目指し、金融商品取引所に上場している投資信託。
連動する指数は株式だけでなく、債券やREIT、コモディティ(商品)の指数もあるのです。
2019年9月時点で、東京証券取引所には14銘柄のREIT ETFが上場。時価総額は、1兆5,063.59億円になっています。
J-REIT ETFのメリットには、大きく分けて以下の3つがあります。
たとえば、東証REIT指数に連動するETFを購入すれば、それ1本で東京証券取引所に上場する64本すべての国内REITに投資しているのと同じ効果があります。J-REITも多くの不動産に分散投資しているので、現物不動産投資より安全性が高いと言われていますが、J-REIT ETFはJ-REITをさらに分散投資した商品だからです。
また、J-REITでは数十万円する銘柄もありますが、J-REIT ETFなら最低投資金額が2,000円前後の銘柄もあります。少額でJ-REITに投資することが可能なのです。
2つ目のメリットは、保有コストの低さです。ETFも投資信託も信託報酬が発生しますが、ETFは投資信託よりも信託報酬が比較的低いという特徴があります。
投資信託の場合、販売会社(証券会社や銀行など)・運営会社(投資信託委託)・管理会社(信託銀行)へ信託報酬を支払いますが、ETFの場合は販売会社への信託報酬が発生しません。
ですから、ETFの方が投資信託よりも発生する信託報酬が低くなる傾向にあるのです。
私が感じる一番のメリットは売買のしやすさです。J-REIT ETFは証券取引所に上場しているので、取引所が開いている時間内であれば、いつでも取引可能です。株式と同じようにあらかじめ指定した価格で売買する指値注文もできます。
J-REITも証券取引所で売買できますが、流動性が低いため思ったような値段で売買できない銘柄もあります。しかし、流動性の高いETFを取引すれば、自分が希望した値段・数量をリアルタイムで取引できるという特徴があるのです。
10年国債の利回りはほぼ0%で、東証1部に上場している株式の平均配当金利回りは、2.24%(2020年3月時点)。一方、J-REITの分配金利回りは3.49%(2020年1月時点)です。過去10年間の利回りを見ても、J-REITの方が国債や株式よりも高い利回りだということがわかります。
またJ-REITの個別銘柄を保有していて破綻した場合、分配金の減少や投資口価格の下落などの影響を受けますが、ETFなら複数のJ-REITに分散投資しているので、1つの銘柄が破綻しても影響は少なくなります。
個別のJ-REITの中には、J-REIT ETFよりも利回りが高い銘柄もありますが、リスクを抑えた運用をしたい投資家には、J-REIT ETFがおすすめです。
私は、J-REITの分配金利回りが4%を超えたら積極的に購入するようにしています。
J-REIT ETFのデメリットについても確認しておきましょう。
東証REIT指数が対象のETFなら、個別のJ-REITよりも倒産や上場廃止のリスクは低くなりますが、証券取引所に上場しているので価格は日々変動します。安定した分配金利回りが得られ得るというメリットがありますが、東証REIT指数の値は大きく動くことがあります。
過去10年の推移をTOPIXと比較してみましょう(配当なし指数)
2003年3月31日の値を1,000として、その後の推移を表したものです。東証REIT指数は、リーマンショック前の2007年5月に高値2,612.98ポイントをつけていましたが、リーマンショック後の2009年3月には770.18ポイントまで下落しています。リーマンショックのような大きな金融危機の時には、約3分の1まで下落することもあるので注意が必要です。
ただ、私はJ-REIT ETFの分配金を重視して運用しています。以下の図をご覧ください。
東証REIT指数とTOPIXの配当込み指数の推移です。東証REIT指数は過去10年間、3~6%という高い分配金利回りをだしてきたので、配当(分配金)込み指数では、リーマンショック前の高値3,047.85を大きく上回っていることがわかります。
これが長期投資の「複利効果」です。複利効果とは利息(分配金)を再投資して利息が利息を生んで利益が膨らんでいくことです。実際の分配金には税金がかかりますし、再投資する場合は売買手数料もかかるので、実際のリターンはこの値よりも下回るものの、複利効果で運用することにより、高いリターンを得られることがわかります。
2020年3月現在、東京証券取引所にはJ-REIT関連の指数に連動するETFが14本上場しています。指数も東証REIT指数だけでなく、予想分配金利回りの高い銘柄を組み入れた「野村高利回りJリート指数」や、時価総額の大きい銘柄で構成される「東証REIT Core指数」などがあります。
J-REIT ETFのおすすめの銘柄を3銘柄紹介します(数値は2020年3月時点)。
J-REIT市場全体の値動きを表す「東証REIT指数」への連動を目指すETF。私もメインで売買しています。日本で最初(2008年9月)に上場し、もっとも純資産総額と売買が多いJ-REIT ETFだからです。約2万円から購入できます。
東証REIT指数に連動することを目指すETF。基本的な仕組みは「1343 NEXT FUNS東証REIT指数連動型上場投信」と同じですが、売買単位が1口なので、2,000円前後で取引できるのが魅力です。
「野村高利回りJリート指数」に連動する投資成果を目指すETF。野村高利回りJリート指数とは、J-REITすべての銘柄の中から、予想分配金利回りの高い銘柄を組み入れた指数です。少しでも高い利回りを狙いたいという投資家にオススメです。
今回は、J-REIT ETFについて解説しました。東証REIT指数に連動するETFを購入すれば、J-REIT全銘柄に分散投資しているのと同じ効果があり、3%以上の高い分配金利回りが狙えます。
J-REIT ETFは価格が大きく動くこともありますが、短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、分配金を再投資しながら長期で運用することをオススメします。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011