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今回のテーマは、少額から始められる不動産投資の選択肢のひとつ「J-REIT」。
調べるとその種類や銘柄の多さに困惑してしまう方が多いのではないでしょうか。そこで、自身でJ-REITへの投資もされている金融ライター・山下耕太郎さんに、J-REITの選び方をご解説いただきました。
REITとは、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルやマンション、商業施設など複数の不動産を購入し、その賃料収入や売買益を投資家に配分する商品です。REITの仕組みはアメリカで生まれましたが、日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT(日本版不動産投資信託)」と呼んでいます。
J-REITは投資信託の一種ですが、証券取引所に上場しているので株式と同じようにリアルタイムで取引できます。さらに、分配金利回りが4.8%(2020年3月末現在)と高いのも魅力です。
J-REITは、不動産を購入しなくても不動産投資の恩恵を受けられます。不動産投資は、アパートやマンションを購入して家賃収入を得る仕組み。ただ、数百万~数千万円の資金が必要になるため、ローンを組んで購入するのが一般的です。一方のJ-REITは、数十万円あれば買えます。不動産投資のようにまとまった資金がなくても不動産投資できるという魅力があるのです。
J-REITが投資対象(用途)には、以下の6つがあります。
用途別比率は、以下の通りです(2020年3月現在)
それぞれの用途を選ぶときのポイントを解説します。
J-REITの分配金は主に家賃収入なので、オフィスREITを検討するときは現在と過去の賃料を比較し、どちらが高いかを判断するようにします。都心のオフィス賃料は2008年のリーマンショックで下落しましたが、2014年頃を底に回復傾向にあります。
オフィスの投資物件は、東京や名古屋、大阪・福岡・札幌などの都市部が中心。オフィスREIT選びでは、とくに投資先が多い都心5区(中央・千代田・港・渋谷・新宿)の空室率や賃料を確認しましょう。
三鬼商事の発表によると、2020年3月時点の平均空室率は1.5%、平均賃料は22,594円となっています。2020年3月は、コロナショックによりJ-REITの価格は大きく下がりましたが、平均空室率や平均賃料はほとんど変わっていません。ただし、今後は悪化する可能性もあるので、注意が必要です。
商業施設REITは、飲食店やショッピングモールなどの施設が集まった地域・建物の総称。都市型の商業施設では、景気感度がやや高いという特徴があります。2019年10月の消費税増税により、2019年10~12月期のGDPは年率7.1%減となりました。2020年になってもコロナショックによる大幅なマイナス成長が予想されており、商業施設REITには厳しい環境が続きそうです。
商業施設REITでは、契約期間中に中途解約条項と、賃料の更新頻度を確認します。中途解約条項とは、契約の有効期間満了前でも一方的な意思表示によって契約を終わらせることができる条項。
長期の賃貸契約であっても、中途解約条項があると、契約満了せずに解約されてしまうケースがあります。商業施設の理想的な条件は、中途解約条項なしで10~15年契約していることです。中途解約条項を非公開にしている銘柄は、気をつけるようにしてください。
住宅REITは景気変動に影響されにくいため、分配金の安定性を重視している投資家に適しています。常に一定の需要があり、比較的賃料が安定しているからです。住宅REITの投資エリアは東京・大阪・名古屋の3大都市圏が中心ですが、大阪や名古屋は供給が増えているので入居者を確保するのが難しくなっています。
ですから、東京都心の割合が高い銘柄の方が優良である可能性は高いといえます。また住宅REITは、他の用途に比べて借入金比率が高い銘柄も多いので、安定した分配金を望むなら、借入金の固定金利比率が高い銘柄を選ぶようにしましょう。固定金利の比率が高ければ、金利変動リスクを抑えられるからです。
物流REITは、倉庫や物流センターなど物流拠点となる施設を中心に投資するREIT。インターネット通販の利用者が増えていることを考えると、物流施設の必要性は今後も高まることが予想されます。また、テナントの入れ替わりが少ないので、一定の賃料収入が中長期で期待できる点も魅力です。住宅REIT同様、分配金の安定性を求める投資家に適した用途と言えるでしょう。
物流REITを選ぶときは、借入金比率をチェックします。物流REITは、借入金利の固定化や長期化を進めている銘柄が増えています。そのような銘柄は、金利変動リスクを抑えられるので長期投資に適しているからです。
ホテルは景気に影響を受けやすい投資先です。そして、J-REITの中でも変動賃料の割合が高いという特徴があります。変動賃料は歩合賃料ともいい、テナントの業績によって賃料が変わる賃貸借契約です。
ホテルREITの変動賃料の割合は、低い銘柄で10%、高い銘柄で45%とさまざまです。変動賃料の割合によって収益の安定性が変わるので注意が必要です。ホテルREITの中には、昨今のインバウンド需要の高まりにより、外国人観光客に比重を置いたホテルが含まれている場合があります。
そのような銘柄は、新型コロナウイルスの感染拡大により外国人観光客の数が減少し、ホテルの稼働率が下がると、分配金の減少につながる可能性があります。
ヘルスケアREITは、高齢者向けのシニア住宅が中心。将来性や社会的ニーズの高まりから市場の成長性は期待されていますが、過酷な仕事環境と介護士不足により入居者に対する暴力行為などの事件も起こっています。
今後は、リハビリテーション施設や病院などシニア住宅以外の銘柄上場が望まれます。
これまで紹介してきたのは、オフィスビルや商業施設、物流施設など特定の用途に集中投資する「特化型REIT」です。J-REITのタイプには、「オフィスビルと住宅」といったように2種類の用途の不動産を組み合わせた「複合型REIT」や、3つ以上の用途に投資する「総合型REIT」もあります。
複合型REIT・総合型REITは複数の用途の不動産に投資しているので、特化型REITよりもリスクが低い傾向にあります。
J-REITの投資が初めてという人は、複合型や総合型J-REITから始めてみるのもオススメです。
今回は、J-REITの用途別の選び方について解説しました。新型コロナウイルスの感染拡大により、景気に影響を受けにくい住宅REITや物流REITの安心感は高いでしょう。
ただ、投資口価格(J-REITの値段)が下がるリスクはあります。複数の銘柄に分散してリスクを抑えながら、長期的な視点で投資を行うようにしましょう。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011