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今回のテーマは、J-REIT。少額から不動産に投資できるとあって人気のJ-REITですが、その仕組みや用語についてよくわからない……という方もいらっしゃるのでは。
そこで、金融ライターの山下耕太郎さんに、株式投資と比較してご解説いただきました。
J-REITは株式と同じように取引できます。しかし、「株価」のことを「投資口価格」とい呼ぶように、使われている用語が異なるので混乱する人もいると思います。まず、J-REITと株式の用語の違いを確認していきましょう。
J-REIT | 株式 |
投資法人 | 株式会社 |
投資主 | 株主 |
投資口 | 株式 |
投資証券 | 株券 |
投資口価格 | 株価 |
分配金 | 配当金 |
分配金利回り | 配当利回り |
投資法人とは、投資家から集められた資金などによって保有・運用をおこなう法人。投資法人と株式会社の一番の違いは、事業性があるかどうかです。投資法人は株式会社のよううに事業を行うことはありません。資産の取得や管理といった事業は、すべて外部の資産運用会社に委託しているからです。
投資法人における出資者のことで、株式会社の「株主」に該当します。
株式に相当するのが「投資口」です。
株式会社の株券に相当するのが「投資証券」。投資法人における投資口を表示する証券になります。
証券取引所で売買される価格が「投資口価格」。株式会社の「株価」に相当します。
株式の配当金に相当するのが「分配金」です。そして、配当金利回り(配当÷株価)に相当するのが、分配金利回り(分配金÷投資口価格)になります。
次に、銘柄数や時価総額の違いを見ていきます。
株式(東証1部) | J-REIT | |
時価総額 | 約633兆 | 17.02兆円 |
銘柄数 | 2,159銘柄 | 64銘柄 |
利回り | 2.22% | 3.49% |
投資スタンス | キャピタルゲイン重視 | インカムゲイン重視 |
取引時間 | 9:00~11:30 12:30~15:00 | 9:00~11:30 12:30~15:00 |
※2020年1月末時点 |
2020年1月時点における、J-REITの時価総額は約17兆円。2001年10月に2,500億円から始まったので、市場規模は大きく伸びています。しかし、2020年1月の東証1部の時価総額は約633兆円なので、J-REITの時価総額の約37倍もあります。
成長著しいJ-REITですが、株式市場の規模に比べると、まだまだ小さいといえます。
2020年1月時点のJ-REITの平均予想分配金利回りは3.49%で、東証1部の株式配当利回り2.3%を大きく上回っています。株式よりも高い利回りが得られるというのもJ-REITの魅力です。では、なぜJ-REITの分配金利回りは、株式の配当利回りよりも高いのでしょうか。
J-REITの収益源は、物件を却した時の売却益(キャピタルゲイン)と、保有物件からの賃料収入(インカムゲイン)です。株式もキャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙えますが、銘柄によっては短期間で2~3倍になることも珍しくないので、キャピタルゲイン狙いの投資家が多くなっています。
一方のJ-REITは賃料収入がメインなので、短期間で大きな動きをすることはほとんどありません。賃料は上昇・下落のいずれも動きは緩やかで、仮に何かあっても家賃がいきなり半分や3分の1になることはほとんどありません。
しかも賃貸の契約期間は住宅で2年程度。オフィスビルや物流、商業施設などでは、さらに長期にわたるケースが多くなります。
長期の契約期間があり、賃料収入の見通しが立ちやすいので、株式よりも収益の安定性があるといえるのです。ただし、景気が良くなっても急に賃料を上げられるという訳ではありません。契約期間も決まっているので、少なくとも期間内は上昇の恩恵を受けられないのです。そのため賃料収入の安定性が、状況によってはデメリットになってしまう可能性があります。
J-REITの方が株式よりも税制面で有利です。通常、株式会社は事業活動などを通じて得た利益に法人税が課され、そこから内部留保を差し引いた残りが、配当金の原資です。
一方のJ-REITは、すべて投資法人制度に基づいています。「〇〇投資法人」というのは、一般企業の「〇〇株式会社」と同じように、法人格を表しています。投資法人制度に基づくJ-REITには、数人の役員がいるだけで、従業員はいません。資産の運用や保管、そのほかの一般事務などは外部の専門家に委託することが義務づけられているからです。
つまり、投資法人とは単に「器」のようなものであり、実際の運営は外部の運用会社などがおこなっているのです。
また、J-REITは賃貸用不動産を取得・保有し、賃料収入を得るというシンプルな会社であるとともに、利益のほとんどを投資家に分配するファンドでもあります。そして、税引き前の90%超を投資法人が投資家へ還元する条件を満たせば、実質的に法人税が免除されるという恩恵が認められています。
ですから、投資家は事業を営む株式会社へ投資する場合に比べ、J-REITからより多くの分配金を受け取れるのです’。
J-REITも株式も証券取引所に上場しているので、基本的な売買方法は同じです。証券会社に口座を開き、すでに株式を売買している人は、あらためてJ-REIT専用の口座を開設する必要はありません。
J-REITは上場株式と同じように、証券会社の窓口やインターネットを通じて取引可能です。J-REITの銘柄には証券コードがあり、証券会社のサイトやアプリで投資口価格の推移などを確認できます。
ただ、J-REITで複数の銘柄に分散投資しようとすると、多額の金額が必要です。個別の銘柄を分析する時間もノウハウもないという人もいるでしょう。
そうした人は、ETF(上場投資信託)やJリートファンドを通じてJ-REITに投資することもできます。投資信託の手数料(信託報酬)などがかかりますが、ETFなら数千円、Jリートファンドなら100円と少額から投資できるのが魅力です。
J-REITの決算の時、投資家に対して支払われるお金を「分配金」といいます。株式会社でいえば、「配当金」に相当します。
J-REITの多くは、年に2回決算をおこないます(年1回のJ-REITもあります)。通常、株式は3月と9月に決算期が集中しますが、投資法人の決算期は、以下のように1年を通じて分散しています。
ですから、銘柄の組み合わせ次第では、分配金を毎月受けとることが可能になるのです。リタイア世代で「少しでも年金などの足しにしたい」といった声は根強くあります。そのためにJ-REITをうまく活用することは有効です。
今回はJ-REITと株式との違いについて解説しました。J-REITは株式と同じように証券取引所で売買でき、高い分配金利回りを狙えるのが魅力です。株式投資をキャピタルゲイン(値上がり益)メインで取引している人も、J-REITでインカムゲイン投資を始めてみてはいかがでしょうか。
ただ、銘柄数や時価総額は株式に及ばないので、今後の発展が望まれます。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011