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少額でできる投資手法について調べていると、J-REIT(ジェイ・リート)の利回りの高さに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、J-REITの高い利回りの理由、そして現在から将来への利回り推移について、元証券マンの金融ライター・山下耕太郎さんが解説します。
J-REITの分配金利回りは、株式や債券などと比べて高くなっていますが、その理由は何でしょうか。今回はJ-REITの利回りの求め方と今後の見通しについて解説します。
J-REITの分配金利回りの計算方法は、以下の通りです。
たとえば、年間予想分配金が10,000円のJ-REITに200,000円投資した場合の分配金利回りは、
10,000円÷200,000円×100=5%
となります。
過去10年間の分配金利回りの推移は、以下の通りです。
2020年3月時点のJ-REITの分配金利回りは4.80%、東証1部の配当利回りは2.77%、長期金利(10年国債利回り)は0.01%となっています。
J-REITの分配金利回りは、過去、東証1部の配当利回りや国債の利回りよりも高く推移していることがわかります。
J-REITの魅力は、高い分配金利回りです。3~5%の高いリターンを得られます。高利回りには、税制上の秘密があります。J-REITは投資法人という形態をとっているので、税金を免除されているからです。
投資法人では、決算期に配当可能利益の90%超を分配するなどの要件を満たすと、法人税がほとんどかからない特典が認められています。ですからJ-REITの多くは、儲けの9割から全額を分配金に回しているのです。
またJ-REITの分配金は、不動産の賃料収入がメインになっています。しかも多数の不動産に分散投資をしてリスクを抑えているので、J-REITの分配金は長期で安定したものになっているのです。
実物不動産でも、J-REITに匹敵する利回りが期待できます。しかし、実物不動産では物件選びが重要です。物件選びの大きなポイントは、立地と物件タイプ。物件タイプには、マンションやアパート、駐車場、倉庫などがあります。物件を購入しようと考えている地域に、将来どの程度の人口の流入が期待できるのか、周辺地域にはどのような物件が多いのか、ライバル物件の家賃相場はどの程度なのかを考えながら、立地と物件タイプの組合せを考える必要があります。
しかし、人気エリアに物件を保有していても安心はできません。築年数が古くなれば、新しい物件に入居者を取られてしまう恐れがあるからです。その場合、賃料を下げたりリフォームやリノベーションをしたりする必要があります。こうした物件の管理、運営にかかる費用なども、実物不動産の収益を左右する要因となるのです。
一方のJ-REITは、実物不動産投資に比べれば手間がかかりません。分散投資によってリスクを抑えているので、収益のブレが少なく、分配金利回りの予想が比較的しやすいというメリットがあるのです。
2019年のJ-REITの分配金利回りは、3%前半まで低下しました。その背景には国内機関投資家の買いがあります。FRB(米連邦準備理事会)が2019年1~3月期から利下げに転じ、世界の金融環境が、ふたたび緩和的になったことがターニングポイントになりました。
米国は2019年の上半期で金利が3%から2%台に低下し、日本は引き続き長期のマイナス金利局面に入ったのです。そんな中、国内の機関投資家は世界的な低金利環境において、債券投資では利回りを確保できず、厳しい運用環境が続いています。
ですから、3~4%程度の安定的な利回りが見込めるJ-REITに目をつけ、買いを進めたのです。
金融庁が発表した「老後資金2,000万円不足問題」によって、人生100年時代を見据えた資産形成を意識する人が増えました。株式の値上がり益(キャピタルゲイン)に比重を置いた資産形成に取り組んでいる人もいるでしょう。
ただ、株式投資などで大きく値上がりする銘柄を見つけるのは難しく、損失がでるリスクもあります。もし大きな失敗をしてしまうと、「二度と投資はしたくない」という思いにもなりかねません。
中長期で資産形成を行う場合、分配金や利子による収益である「インカムゲイン」に着目した投資への関心が高まっていくと考えられます。J-REITは3~5%程度の高い利回りなので、インカムゲインが期待できる金融商品の代表格といえるでしょう。
老後資金として2,000万円をJ-REITで保有しておけば、利回り4%だと年間80万円(税引後約64万円)が確保できます。それだけの現金収入があれば、老後の生活費の一部として大きな足しになるでしょう。
J-REITは高い利回りが確保できるので、長期で保有するなら価格変動リスクを過度に気にする必要はありません。また過去の実績から見ると、株式に比べてJ-REITは優れた投資対象といえます。
東証REIT指数とTOPIXの推移(配当込み指数)を見てみると、2003年からの17年間で、東証REIT指数は約3.5倍になり、約2.5倍のTOPIXを大きく上回っているからです。
2020年のコロナショックにより、東証REIT指数は乱高下しています。2月21日の年初来高値2,250.65ポイントから、3月19日の安値1,145.53ポイントまで、約50%も下落したのです(配当なし指数)。
相場が崩れたきっかけは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。株式などが値下がりし、大きな損失を抱えた投資家が、資金を引き揚げる動きを強めました。REITも例外ではなく、東証REIT指数も急落。
2019年にJ-REITを大量に買い進めた地方銀行が、投げ売りに走ったことも価格下落の原因となりました。経営環境が厳しい地銀がJ-REITを売り、現金を確保しようとする動きが強まったからです。
ただ、3月19日時点の分配金利回りが6.7%まで上昇したことから、3月26日には1,682.68ポイントまで急反発しました。しかし、2020年3月末時点の分配金利回りも4.80%と高い水準をキープしています。
ただ、REITが投資している物件の収益が悪化するという懸念もでてきています。とくに欧米の状況は深刻です。新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的とした「ロックダウン(都市封鎖)」の影響で、多くの商業施設が存続の危機に立たされています。賃料を引き下げてでもテナントをつなぎ止めようとする動きが広がりかねない情勢になっているのです。
J-REITが投資している国内の物件はそこまで深刻でないものの、今後の収益悪化には注意が必要です。
しかし、米10年債利回りがFRB(米連邦準備理事会)による大規模な金融緩和で一時0.3%台まで低下。4月に入っても1%割れの水準が続いています。国内でも超低金利が続く可能性が高く、5%近くまで上昇したJ-REITの分配金利回りは魅力ではないでしょうか。
J-REITは、オフィスや住宅などの賃料がメインの収益です。賃料は景気悪化してもすぐには大きく変動しません。新型コロナウイルスの影響で国内の企業業績が悪化する可能性は高く、物件の借り手である企業や個人の収入は大幅に減るでしょう。それでも、J-REITの収益は安定して推移すると見込まれています。
ただし、個別のJ-REITでは分配金が大きく下がる銘柄もでてくる可能性があります。リスクを軽減させるため、東証REIT指数に連動するETFや投資信託(リートファンド)に投資することをおすすめします。
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金融・投資ライター
山下耕太郎
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011