起案者ストーリー
全国的に空き家が社会課題となる中、京都市は京町家を所有者から借り受け、地元の不動産会社にサブリースに出して再生・利活用するというモデル事業を始めました。その第一号となったのは、新選組の屯所があったことでも知られる「壬生(みぶ)」の京町家。京都市からサブリースを受けてリノベーションするのは、IzutsuRealty(イヅツリアルティ)株式会社です。同社の山下善彦代表取締役に、本事業に申し込んだ経緯、そしてリノベーション費用をクラウドファンディングで調達する理由について伺いました。
——今回のプロジェクトは、「京都市の介在する京町家賃貸モデル事業に係るサブリース事業者募集に関する公募型プロポーザル」という行政の介在する事業でもあります。空き家となっている京町家を、京都市が所有者からマスターリース契約で借り、地元の不動産会社にサブリースをする。不動産会社は住宅部分を含むかたちでリノベーション工事をして、賃貸に出すという仕組みです。なぜ京町家の利活用に、このように複雑な仕組みが必要なのでしょうか。
そもそも京町家とはどういったものかという説明からする必要が出てくるのですが、京都市の条例では、建築基準法が施行された昭和25年(1950年)以前に建築された木造建築物で、伝統的な構造、形態、意匠を有するものを「京町家」と定義しています。
これだけ古いと担保価値がない。よって、金融機関から融資を受けることができない。所有者がリフォームしようとすると1,000万円以上かかりますが、融資も受けられない中そこまでお金をかけられませんよね。かといって、先祖代々の土地を自分の代で手放すわけにはいかない……。こうした理由で京町家が空き家になってしまうんです。
それを解決するために、京都市と共に私の所属する「京都府不動産コンサルティング協会」等で今回のサブリースの仕組みを考えました。
売ることは難しくても、定期借家として行政に貸すことならできる。そういうオーナーさんはたくさんいらっしゃるので、京都市は自分たちが借りることで、課題と考えている空き家問題の解決につなげる。そして、行政にない不動産賃貸のノウハウは我々民間の力を使って地域を活性化する。そうした狙いがあります。
——なるほど、京町家のオーナーと行政、そして地域に暮らす方々それぞれが解決したいと考えている「空き家問題」を解決するためのスキームなんですね。
おっしゃる通りです。そして、このスキームの発案者のひとりでもあることから、今回のプロポーザルに応募し、1号案件を弊社が担当することになりました。このスキームのメリットが理解されれば、後に続く企業がどんどん出てくると思います。
——京町家の利活用に必要なスキームであることは理解したのですが、なぜ資金調達をクラウドファンディングで行うことにしたのでしょうか。
冒頭に申し上げたように、京町家は古くて担保価値がないんです。しかもこのスキームだと土地の所有者はオーナーなので、土地を担保にした借入もできません。事業者のクレジットで借りられるケースもありますが、金融機関は基本的に融資してくれないと考えていいでしょう。
一方で、歴史ある京町家に価値を見出している方々もいる。それゆえ、京町家をリノベーションした宿泊施設が近年これだけ増えたわけですよね。
そうした京町家に価値を感じる方々から資金を募るのがいちばん現実的ですし、行政が京町家を借り、民間がクラウドファンディングで資金調達してリノベーションし利活用する——。そんなスキームを、京町家を愛する方々と一緒に確立していきたいと考えたからです。
——クラウドリアルティの投資家の方々にも、多くの京町家ファンがいます。ただ、今回は住居兼職場にリノベーションするそうで、宿泊施設にしていたこれまでの京町家プロジェクトとは異なります。
実は私も「本町五丁目 京町家再生プロジェクト」に貸主兼投資家として関わっています。内覧会にも参加し感じたのは、「単純にお金を出すだけでなく、事業を共につくっていきたい」という投資家の方々の意向です。
調整が必要ではありますが、工事の過程を見ていただいたり、完成時の内覧会を開催したりとできるだけオープンにしていきたいと考えています。
また、リノベーション後に入居を予定している企業さんも、住宅兼職場ではありますが、職場部分はコワーキングスペースにしたいという意向もお持ちなので、実際に投資家の皆さんに使っていただける施設になるのではないかとも思っています。
——今回のリノベーションは、京町家本来のすがたを残したものだと伺いました。
そうなんです。京町家とは本来「職住共存」の空間でした。手前の部屋で商売をし、奥に行くにしたがってプライベートな空間になる。
今回のリノベーションでは、手前をコワーキングスペースにし、奥と2階にプライベートな空間を設けることで、この京町家本来のすがたを残すことを意識しています。
また、台所スペースには「火袋(ひぶくろ)」という京町家ならではの吹き抜けも残すなど、細かい部分でも本来のすがたをとどめられるよう、入居予定企業さんたちとも密に打ち合わせをしています。
——最後に、本プロジェクトへの出資を検討されている方々にメッセージをお願いします。
京町家を自治体がオーナーから借り、民間企業にサブリースする。そして民間企業はクラウドファンディングを使って資金調達し、空き家だった京町家を利活用する。行政と民間が協力して空き家問題に取り組む、京都市では初めての試みです。
成功すれば、京都市や京町家だけでなく、全国の古民家再生にもつながるスキームだと考えています。
ぜひ、京町家や歴史ある建物を後世に残していきたいという皆様からご支援いただければと考えております。よろしくお願いいたします。
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