起案者ストーリー
定額制で全国どこでも住み放題の多拠点コリビング(Co-living)サービス「ADDress」。2019年4月のスタート以降、全国に25拠点(2019年9月時点)を展開しています。2020年3月開業予定の北鎌倉の新拠点は、クラウドリアルティで拠点開発のための出資を募集。なぜ北鎌倉なのか、「2030年までに20万物件」を掲げるADDressの今後の展望について、株式会社アドレスの佐別当隆志代表取締役社長にお話を伺いました。
株式会社アドレス
代表取締役社長 佐別当隆志(TAKASHI SABETTO)
2000年株式会社ガイアックスに入社。広報・新規事業開発を経て、2015年秋よりシェアリングエコノミーに特化したWebメディア「Share! Share! Share!」をリリース。2016年一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し事務局長に就任。2017年株式会社mazel設立、代表取締役に就任。内閣官房IT総合戦略室よりシェアリングエコノミー伝道師に任命。総務省シェアリングエコノミータスクフォース委員。2018年、経済産業シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会委員。株式会社アドレス設立、代表取締役社長に就任。2019年シェアリングエコノミー協会常任理事に就任。
株式会社アドレス「やはり、今回取得した物件との出合いが大きいですね。初めて現地を訪れた時まず、『これはすごいな』と思いました。
北鎌倉駅から歩いて数分で、延べ床面積は200平米ほどあります。全国を探しても駅から近くてこれだけの規模がある物件はなかなかないだろうと思いました。緑を抜ける坂のアプローチが美しく、建物にも趣きがあります。閑静な住宅街の中、寺社に囲まれ自然も多いエリアで落ち着いて暮らせる点も魅力です。」
「一方で、もともと住居用途であったため宿泊業を行うには法的な制約があるうえに、規模も大きいことから活用方法がかなり限られてくる物件だとも思いました。言い換えると、ADDress向きの物件だったのです。
この物件同様に宿泊業ができないなど用途が限定されていたり、個人が借りて住むには広すぎたりと、ADDressの仕組みでないと活用が難しい物件は全国各地にまだまだあるので、そうした物件の活用にもつながる第一歩だと考えました。」
物件周辺の様子(左)と、高台から望む北鎌倉の景色(いずれもアドレス提供)
「また、この物件には面白い物語があります。古くはここで寺の修行僧が共同生活を営み、その後は著名な考古学者が居を構えていました。いわば元は修行僧のシェアハウスであったものを、現代のニーズに合ったシェアハウスに再生するというのが今回のプロジェクトです。
室内には修行僧の勉強のため、たくさんの本棚が設けられています。考古学者も本棚を受け継ぎ、本に囲まれた生活を送っていたそうです。この建物の記憶を継承し、新しい拠点に再生したいと思っています。」
趣きのある吹き抜け階段(左)と、建物とともに歴史を紡いできた本棚(右)は、そのまま拠点の象徴として活用していく(いずれもアドレス提供)
「北鎌倉には既にADDressの拠点があります。都心まで電車で1時間程とアクセスも良く、全国の拠点の中で最も稼働率が高い拠点の一つで、鎌倉の新拠点も同様の稼働率を見込んでいます。
また、ADDressは一人に一つずつ固定ベッドがあり、固定ベッドを置いている拠点で賃貸借契約を結ぶシステムです。そのため、収益は稼働率とは関係なく固定ベッドの数で決まります。詳細についてはまだ検討中ですが、北鎌倉の新拠点はドミトリー形式の固定ベッド12床、個室形式の固定ベッド1床、これ以外にも予約した人が利用できるベッドを設けることも予定しており、最大規模の拠点となります。」
「既存拠点のおかげで地域との関係性も良好です。新拠点についても、ADDress会員と地域住民のシナジーが生まれることを期待しています。」
「ADDressはプラットフォームであって、あくまでも中心は地域です。地域で活躍する個人を増やしていくためのシェアサービスだと考えています。
よそ者だと思われては活躍できません。そこで重要になってくるのが『家守(やもり)』の存在です。ADDressの拠点には家守と呼ばれる管理人がいるのですが、地域との関係構築に大きな影響を与える存在なので、なるべく地域の人を採用したいと努力しているところです。
ADDressを通じ、短期的な観光ではなく、定期的に特定地域を訪れたり関わったりする『関係人口』を増やし、消費活動や地域活動を活性化する。そして、人の流れだけでなくお金の流れも変え、地域のコミュニティを生み出していくことが目標です。」
「実はある地方で、空き家のオーナーに『うちの家をよろしくお願いします』と泣かれたこともあります。
盆や正月の年に数回だけ今も利用している、仏壇をそのままにしておきたいなど、空き家だからといって簡単に売ったり貸したりできない事情を抱えているオーナーはたくさんいて、そうした方々からご連絡をいただくことが多く、期待の高さを感じています。
ADDressは定住ではありません。家を使わない時だけ貸すというかたちも可能です。また、出来るだけいいもの、思い入れのあるものはそのまま使っていきたいと考えています。オーナーの物件への思いも受け継ぎたいからです。」
「2030年までに、拠点を全国に20万物件まで増やし、会員数を100万人まで伸ばしたいと考えています。特に需要のある東京都心部から1〜2時間以内の首都圏と、大阪・京都を中心とした関西圏を重点的に増やしていくつもりです。」
「会員に関しては法人契約も行なっていて、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社や株式会社リクルート住まいカンパニーなど、働き方改革に前向きな企業にご契約いただいています。ニーズも高く事業の安定性にもつながるので、法人会員については今後より一層の強化を図っていきます。
具体的には、新入社員の寮としての活用などのお声かけがあります。就職で地方から土地勘のない東京に来て、家探しで苦労された方も多いのではないでしょうか。ADDressを活用すれば、そういった負担をなくすことができ、住まいの中で同僚、他の会員、家守、地域の方とつながることで安心感が生まれます。」
「会員数100万人というと、政令指定都市程度の規模です。これだけの人が動き、働き方、住まい方が変われば、子どもの学校の選択なども変わっていくでしょう。一つの学校に通わなくても、複数の学校を行き来できる時代が来るかもしれません。社会の流れが変われば、法制度は変わります。多拠点が当たり前の社会になれば、多様な暮らしを支えるように法制度は必ず変わります。」
「私たちが行っているのは単なる不動産賃貸ビジネスではなく、全国での分散型の共同体づくりです。」
「従来のヒエラルキー型の仕組みは、少子高齢化で人口減少が進む時代には合いません。様々な社会問題がさらに顕著化、拡大化する中で、なんでも国任せ、公共任せでは対応しきれなくなってきています。そこで力になるのがコミュニティです。これからの時代は、国や地方自治体が担っていたものを、地域の共同体で解決し、支え合っていくのだと思います。
これからの社会を支える分散型の共同体を、ADDressが全国につくっていきます。」
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