イベントレポート
2019年4月6日桜満開のなか、つながりシェア保育園・よよぎうえはらにてトークイベント、「新しいつながりを生む『シェア保育園』の可能性~日本初クラウドファンディングで作るシェアハウス併設型保育園とコミュニティ作りの未来~」が開催されました。後編では、本プロジェクトの出資者がどんな想いで出資に至ったのか、クラウドリアルティ代表の鬼頭も交えたリアルトークをお届けします。クラウドファンディングの意義は?お金のやりとりから生まれる幸福感とは?など熱い議論が繰り広げられました。
(前編はこちら)佐別当ここでこのプロジェクトの出資者であるNさんが参加いただいていますのでお話を聞いてみたいと思います。
Nさん私は幼稚園の頃から社会人1年目くらいまで代々木上原に住んでいましたので、ここは地元です。クラウドリアルティで出資して、この施設ができあがるのをずっと楽しみにしていました。建築中も前を通って「あ、できてきてるな」と勝手ながらチェックしていました(笑)。
Facebookの投稿でこのプロジェクトを知って、「これは絶対参加しないといけないな」と思ったのがきっかけです。自分の地元ですし、保育園が足りていないなと感じていたところですので。もしかしたら自分もお世話になるかもしれないなと思って。
シェアのコンセプトがすごく時代を先取りしているなと思っています。社会課題である待機児童の話と最先端のシェアリングという話と、たまたま自分の地元だったことが重なって、そしてプロジェクトに関わる方が人生かけて取り組んでいる熱い想いを応援したい!ということで出資を決めました。
佐別当近くに住んでいる人から出資いただけること、地域の人に求められてできるのが本来的なあるべき姿ですよね。「子どもができたらこういうところに預けたい」とか「これだったら子どもをつくってもいいかな」という共感が出資という形に繋がったのかなと考えています。
佐別当本日はクラウドリアルティの鬼頭代表にもイベントに来ていただいています。鬼頭さん、クラウドリアルティについて詳しく聞かせてください。
鬼頭このプロジェクトの土地を購入する資金調達のためにクラウドリアルティを使っていただきました。我々は個々の不動産を証券化し、クラウドファンディングという手法を使っていろんな方々から資金を集めることができるプラットフォームを運営しています。出資いただいた方は約3年間のプロジェクトの期間でイベントに参加したり、友人や家族に勧めたり様々な形で関わっていただいて、その期間中に我々が分配金を出資者に返していく形でやっています。
拡大家族、関係性の話がありましたが、"金融"というのも本質的には将来に向けた"関係性構築"と捉えています。今日はこのプロジェクトに出資された方も何名か来られています。自分は保育士としてこのシェア保育園に関わることができない、わざわざ引っ越してこのシェアハウスに住むことができない、という方もクラウドリアルティでは"出資"という形でプロジェクトを支えていくということができます。このような新しい人の関わり方を生み出すプラットフォームとして、このプロジェクトをサポートさせていただきました。
佐別当クラウドファンディングって寄付型とか購入型とかいろいろありますが、クラウドリアルティの場合は出資者へのリターンがお金なんですよね。このプロジェクトは公益性のある保育園と事業性があるシェアハウスが組み合わさってできています。そこに共感する人に出資いただくことで事業性もあり共感性もあるチャレンジでした。ずばり、クラウドファンディングの意義は何でしょうか?
齋藤クラウドファンディングという手法で所有者が多数になることによって、サービスの受給者と供給者の垣根をなくそうというのが私の最大のチャレンジでした。先日シェアハウスに集まってみんなで本棚を作ろうというイベントが開催されまして、出資者の方も参加して一緒に作っていくという光景が見られました。そのなかで出資者が、自分の足跡を残していくといいますか、お金のリターン以上に子どもの顔をみたり、イベントで一緒にごはんを食べたり、そういうことによって自分が出資した対象が目に見えないお金だけじゃなくて、リアルにモノが動いている、あるいは人が動いている、それによって街ができていることを実感してもらえたのではないかと感じていいます。
そんなことが起こるプロジェクトになってほしいなということが最大の目的でしたのでこのプロジェクトを通じて、今までもすごく実感できています。今後も大きな期待を寄せています。
佐々木ここでクラウドファンディングの本質は何かということを考えてみたいと思います。単なる純粋な応援なのでリターンはいらないんです、っていうのはボランティア精神が強すぎてそれもちょっと違うかなと。アメリカの人類学者でデヴィッド・グレーバーという方がいるんですが、「負債論」という著書があります。
今は貨幣経済です。貨幣経済の前の狩猟採集時代は物々交換であったとみなさん学校で習いましたよね。でも彼は違うと言っています。お金がない時代には"等価交換"なんかできなかったわけです。何が等価か難しいよねと。デヴィッド・グレーバーは物々交換とは等価ではなくて単なる送り合いだったんじゃないかと言っています。
"互酬経済"という言い方がありますが、例えば鹿を10kgあげて、その人がジャガイモ20kgもってきた。そこでジャガイモの方が価値が高くて、借りができたと思う。現代人は「返さなきゃ」って思う。昔の人は返さないんですね。次会ったときはもっと価値があるもので返す。もらった人はまた借りができたと思ってまたいつか返さなきゃいけないと思う。
つまり、"貸し借りは帳尻を合わせない方がいい"という話です。我々、貨幣経済で生きている人間は帳尻を合わせようとします。10万円借りたら10万円返さなきゃと思うんですけど、昔の人は帳尻を合わせないことで実は、「人間関係が続くのだ」っていう考え方なんですね。
例えば10万円借りて10万円返したら、返した瞬間に清算されてしまうんです。もう会う理由もなくなってしまう。貸し借りがある間はずっと「返さなきゃ」「貸しているよね」と感覚が頭に残るので、人間が関係性を続けるためのひとつの礎になっています。
貨幣経済以前の狩猟採集時代の人間関係はこのような構造だったのではないかとグレーバーは言っています。貸し借りがあって、それが人間関係のつながりの土台にはさまってくる感じっていうのは悪くないのではないかと思いますね。
クラウドファンディングはひょっとしたらそういうものを生み出していく。例えば、このつながりシェア保育園に10万円出資しました。この10万円がすぐリターンを生み出さないかもしれないけど、関係性をつなげるための何かベースになるということです。最終的に損するか得するかは本質ではなくて、関係性を作ることが大事、それが人生を豊かにしていくことではないかなと思うのです。
お金が介在すると人間は不幸になるとさんざん言われてきました。あくせく働いて来年の収入がどうなるかを心配する。そんなことをみんな思ってしまいがちな現代です。そんな中でシェアリングエコノミーやクラウドファンディングが普及することによって、お金のやりとりそのものが人の幸せ感につながるような仕組みとして、社会が再スタートするきっかけになるのではないかと思います。
鬼頭クラウドリアルティというプラットフォームを通じて人と人が直接つながれることを大事にしています。新しい事業にチャレンジしたい方と、それを出資という形で応援したい方が出逢える場を提供させていただいています。
そこで間に入る金融機関自体が大きくなりすぎてしまうと、その存在感や影響力が大きくなってしまい、どうしても帳尻を合わせないといけなくなります。それが金融機関というものですので、佐々木さんがおっしゃっていたような、貸し借りでバランスがないと成り立たないところなのですが、直接つながる関係をデザインしていくことが、今後我々が目指したいという姿だということを改めて感じました。
佐別当一般的なクラウドファンディングのプロジェクトは単発の取り組みが多いですよね。クラウドリアルティのプロジェクトは運用期間の約3年間でいろんな方たちと関わることができるんですよね。最後に、齋藤さんより一言お願いします。
齋藤コミュニティづくりはすべて丁寧にやらなくてはいけません。ですから、丁寧にここに合う方を呼び寄せて、仲間、住む人、子どもを預ける人以外も含めた人が関わる仕掛けをつくっていきたいです。子どもたちをみんなで育てよう、というコンセプトがここでどう展開されていくのかは住む人のパーソナリティによるのかなと思っています。私が引っ張るというよりは器として、アプリケーションとしての提示と考えています。時代が作っていくと思いますのでその器になれるようにきちっと取り組んでいきたいと思います。
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