イベントレポート
「はじめてのクラウドリアルティセミナー」が2019年9月10日、東京・日本橋兜町MUFG The Garageにて開催されました。不動産クラウドファンディングに興味がある方、クラウドリアルティの会員で今後出資の検討をされている方を対象にした本セミナーでは、クラウドリアルティ代表の鬼頭より、初心者の方にもわかりやすいようスライドを使って解説が行われました。全2回のセミナーレポートの後編では、参加者からの質問に回答するかたちで、クラウドリアルティの仕組みや特長をご紹介します。
前編はこちらから株式会社クラウドリアルティ
代表取締役 鬼頭 武嗣(TAKESHI KITO)
東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。ボストン・コンサルティング・グループを経て、メリルリンチ日本証券の投資銀行部門にてIPO・公募増資の主幹事業務、不動産の証券化に関するアドバイザリー業務などに携わり、多数の案件を執行。2014年、株式会社クラウドリアルティ設立、代表取締役就任。 一般社団法人Fintech協会理事、革新的事業活動評価委員会委員。
株式会社クラウドリアルティ参加者調達した資金は何に使われているのでしょうか。
鬼頭クラウドリアルティが支援しているのは基本的に不動産の取得、敷金、リノベーションなどにかかわる資金調達です。
たとえば、先ほどお話しした京町家をリノベーションして宿泊施設として運営しているトマルバの場合ですと、物件の取得やリノベーションの工事代金など京町家に関わる資金調達はクラウドリアルティで支援しました。
一方、トマルバ自身の事業活動にかかる資金は、ほかのベンチャーキャピタルから調達しています。
少し専門的なことを言うと、コーポレートファイナンス*1と言われる会社のための資金調達はクラウドリアルティの外で行う、あるいは自己資金が潤沢で資金調達をする必要のないという企業もあります。
コーポレートファイナンスは増資や借り入れになるので企業の財務体力によって限界も出てきますが、クラウドリアルティで行っているのは不動産という裏付け資産をもとに行うアセットファイナンス*2です。バランスシートの外で資金を確保できるので、トマルバはベンチャーキャピタルで事業活動の資金を調達しつつ、クラウドリアルティで資金を募り運営施設数を増やしているところです。
これと似たような仕組みでよく知られているのは星野リゾートです。星野リゾートも不動産は持っていません。不動産は星野リゾート・リート投資法人が持ち、運営と分離させています。
星野リゾート自身は運営にフォーカスして、事業のための資金はここで集め、不動産取得のための資金は証券化を通じて確保しています。
ただ、この星野リゾート・リート投資法人が使っているJ-REITのスキームだと弁護士や監査法人の費用、証券会社に支払う手数料など初期コストだけでも1億~2億円程度かかるので、どんな企業でも使えるわけではありません。一方、クラウドリアルティの証券化スキームだと数十万円ほどでできます。
つまり、大きな企業でなくても似たような金融の仕組みを安く使えるというのが、我々が資金調達者側に提供できている新しい価値の一つではないかと考えています。
参加者出資者にはどのようなリターンがあるのでしょうか。
鬼頭少し広い視点で、出資のメリットについてお話しします。
クラウドリアルティの金融スキームの特徴は、不動産の証券化とクラウドファンディングを組み合わせているところにあります。
不動産を購入するとなると、かなりの資金が必要ですよね。これを企業が株主に株を渡して資金調達するように、一つの不動産に多くの人が小口で出資してみんなで保有するのが不動産の証券化です。
つまり、不動産に小口投資ができるというのが実物不動産と比較した際のメリットの一つです。
J-REITも証券化スキームの一つなので、同じように小口投資ができますが、厳密に言うとJ-REITは様々な不動産を抱える投資法人への出資ですので、個別の不動産への出資ではなく「オフィスビル」「商業施設」といった物件群への出資になります。その点クラウドリアルティですと、京町家や保育園など自分の興味関心に基づいて個別の不動産に出資できます。
利益分配についてですが、先ほどお話ししたトマルバの京町家プロジェクトでは、3年間のトータルの想定利回りをIRR(内部収益率)*5ベースで10%としています。この中には期中の事業収益も、キャピタルゲイン(売却益)*3も含まれています。つまり、日々の宿泊料や稼働率の上下も、エグジット(出口)*4の際の市況によるキャピタルゲインの上下も反映されます。
ただ、すべてがこのように事業収益や市況の影響を大きく受けるというわけではありません。渋谷区上原シェア保育園のプロジェクトでは、保育園の底地の資金調達を行いました。月々の地代は決まっているかたちで、このプロジェクトはIRR6.5%を見込んでいます。
参加者今後はどれくらいの規模のプロジェクトが出てくるのでしょうか。
鬼頭クラウドリアルティは、すべての不動産、すべての人の資金調達に使えるような普遍的なプラットフォームを構築しようとしています。これまでは京町家、保育園、飲食施設など数千万円~2億円程度、つまりロングテールの右端寄りのプロジェクトが多かったのですが、今後中長期の目標として、左側にあたる比較的大規模な不動産の証券化にも取り組んでいく予定です。
ただ、クラウドリアルティはあくまで中立なプラットフォームを運営する事業者として、お声がけいただいたうち審査をクリアしたプロジェクトを実施します。我々のほうからお声がけしたり、特定の物件に注力したりということはありません。重要なのは、資金調達をしたいというニーズと、出資したいというニーズの「需給マッチ」が実現するプラットフォームをつくることだと考えています。
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*1 コーポレートファイナンス = 事業に必要な資金を市場から調達すること。
*2 アセットファイナンス = 不動産や動産、債権、知的財産権などを裏付資産(アセット)として、そこから生み出されるキャッシュフローを返済原資とする資金調達のこと。
*3 キャピタルゲイン = 株や不動産などの保有資産の売却で得られる売買差益のこと。
*4 エグジット = 不動産では、売却により収益を確定させることをいう。
*5 IRR(内部収益率)= Internal Rate of Returnの略。投資の効率性を測る指標の一つで、複利計算に基づいた、投資に対する収益率(利回り)を表す。たとえば、出資金額を100万円とした場合、分配金額が以下のように返ってくるケースであれば、いずれにおいてもIRR 10%となる。
1年後に110万円(= 100万円 × 110%)が返ってくるケース
2年後に121万円(= 100万円 × 110% × 110%)が返ってくるケース
3年後に133.1万円(= 100万円 × 110% × 110% × 110%)が返ってくるケース
なお、「銀行預金」を「投資」と位置付けた場合、IRRは銀行金利と同一となる。元本を100万円、金利1%の場合、1年後に返ってくる金額は101万円(= 100万円 × 101%)、2年後に返ってくる金額は102.01万円(= 100万円 × 101% × 101%)となる。この場合、IRRは1%。