起案者ストーリー
ワークライフバランスや働き方改革という言葉が生まれ、ICT(情報通信技術)を利用して時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方「テレワーク」や、リゾート地などでバケーションもかねてリモートワークを行う働き方「ワーケーション」など、働き方の選択肢が広がってきています。一方で、そうした様々な働き方を支える「働く場所」の整備はまだ十分とは言えません。
九州アイランドワーク株式会社(以下、KIW)は、九州内に数百ヶ所の拠点を設け、各地の拠点を自由に行き来できる「分散型ワークプレイス」のネットワークを構築することで「はたらくをオフィスから解放する」ことを目指し事業を進めています。
KIWの事業概要やそのニーズについて、代表・馬渡侑佑さんと、親会社である株式会社一平ホールディングス(以下、一平HD)の代表・村岡浩司さんに語っていただきました。
株式会社一平ホールディングス代表取締役社長
九州アイランドワーク代表取締役会長
村岡浩司(KOUJI MURAOKA)
“世界があこがれる九州をつくる”を経営理念として、九州産の農業素材だけを集めてつくられた九州パンケーキミックスをはじめとする、「KYUSHU ISLAND®︎/九州アイランド」プロダクトシリーズを全国に展開。現在では多数の飲食店を経営する一方、九州各地にて様々な地元創生活動や食を通じたコミュニティ活動にも取り組んでいる。カンブリア宮殿、NHKワールド、日経ビジネスなどメディアにも多数出演。日本を元気にする88人(フォーブスJAPAN)に選出。著書に「九州バカ 世界とつながる地元創生起業論」。
九州アイランドワーク株式会社代表取締役社長
馬渡 侑佑(YUSUKE MAWATARI)
宮崎県出身。佐賀大学理工学部都市工学科卒業、 ITベンチャー、コンサル会社を経てチームラボに入社。チームラボ「学ぶ!未来の遊園地」の立ち上げに従事し、別府での展覧会で大分を訪れたのを機会に、東京都から大分県竹田市に移住。 竹田市に移住してからは、主にチームラボキッズの九州案件を担当しながら、竹田の城下町の空き家対策や、中心街の活性化を目的として「竹田まちホテル」などを展開。2019年1月、一平ホールディングスのグループ会社として九州アイランドワークを設立。
馬渡侑佑(以下、馬渡):まず、一番最初にみなさんが疑問に思われるのは、分散型ワークプレイスってなに?と言うことではないでしょうか。
簡単言うと、コンビニのように色々な場所に大小様々なワークプレイスをつくります。そして、それらを定額制で自由に利用できるようにしていきます。働く場所を1ヶ所に集中させず、様々な設備や様々なロケーションの分散するワークプレイスが新しい社会インフラを構築します。
私は、東京で働いていた時からあまり会社へ出社することはなく、カフェや図書館、自宅近隣のコワーキングなどを利用しながら働いていました。東京にはスポット的に働ける場所がたくさんあり、様々な場所を転々としながら、テレワークをしていた経験が、分散型ワークプレイスの構想に繋がっています。
村岡浩司(以下、村岡):僕は30代の頃から宮崎の中心市街地で商店街活性化の活動や、まちづくりの活動をしていました。しかし人口減少や生活様式の変化など社会が日々目まぐるしく変わっていく中で、既存の小さな街というくくりに行き詰まり感を感じていました。その頃、東日本大震災や災害で街が変わっていく姿も目の当たりにし、「地域という概念をもっと広域に捉えるべきではないか」と、僕の中で意識の変化がありました。
そこで九州全県から食材を集めて1つの商品をつくるという事業を開始。この仕事で九州中を旅しながら多くの方に出会い、この島独特のつながりの強さや多様性を感じたことを契機に、「世界があこがれる九州をつくる」というコンセプトを掲げて事業を展開するようになったんです。
このビジョンを実現させるためには、イノベーションが必要です。だからこそこの九州という島に住む多様な人々が出会い、そこで新しいアイデアを生んでいく、そんな場所を作りたいと思うようになりました。
それと同時に私たちの人生の中で大きな割合を占める、“働く”という行為。この行為を1つの場所・組織から解放すると、実はもっと地域の未来を変えていくアイデアが生まれるのではないかとも考えていたんです。
そこで、最新のテクノロジーを活用したシステムやデジタルコンテンツ開発を行うチームラボで空間ディレクションをしつつ、大分県竹田市でテレワークをしていた馬渡君に、経験を生かして事業を推進してほしいと話を持ちかけて。
馬渡:僕は東京の企業で働きながら、大分県竹田市という地方に移住しました。生活の質は間違いなく向上したのですが、仕事の面では悩みもあって……。
地方でのテレワークという働き方を選択したものの、なかなか仕事に集中できる場所がなくて苦労したんです。当時、竹田市にはコワーキングオフィスがなく、ほとんど近くのコンビニのイートインコーナーで仕事をしていました。
市外のコワーキングオフィスも検討したのですが、コミュニティが出来上がっていて入りにくかったり、その時の雰囲気によっては集中しづらかったりということがあると聞いていたので敬遠していました。都会のように近くにたくさんコワーキングオフィスがあるわけではないので、色々なところを見て回って自分に合うところを使うというわけにもいかないんです。
「どこで働いてもいいよ」とオフィスに縛られない働き方を認める企業は増えてきましたが、まだまだ仕事に集中できる場所は十分整備されているとは言えず、コワーキングオフィスを進化させる必要性を感じていたタイミングで村岡さんからお声がけがありました。
村岡:馬渡君の指摘の通りだと考えています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて政府もテレワーク拡大には力を入れており、今後そういう働き方をしていく人が増えていく中で、地方では圧倒的に場所が不足しています。個人がスポット的に使える働く場所が求められています。
馬渡:冒頭でも説明しましたが、KIWがつくるのは、九州全域に複数点在する拠点を1日や数時間単位で利用できる「分散型のワークプレイス」です。月額の会費を払えば誰でも利用できる中間領域のような場所で、しかも九州一帯全ての拠点が利用できるようにしていきます。
直営のワークプレイスに加え、既にコワーキングとして稼働している場所とも提携したり、さらにNEXCO西日本と共同のプロジェクトではサービスエリア上に無人のワークプレイスを用意します。近くのワークプレイスの検索、無人拠点の解錠、設備の予約などはKIWが提供するアプリで簡単にできます。
村岡:なぜ1ヶ所だけでなく全ての拠点を使えるような設計にしたかというと、各拠点を止まり木のように訪れてもらって、旅するように自由に働いてほしいからなんです。
九州の人口約1,300万人のうち、主要ターゲットとなるフリーランスは約94万人、大学生は約24万2,000人。加えて出張で九州を訪れるのは年間約976万5,000人もいることから、九州で暮らしている人だけでなく、出張や観光で訪れる人の利用も想定しています。
馬渡:KIWが進める事業は、単にコワーキングオフィスを各地につくるというものではありません。直営、提携など様々な形態で数百ヶ所の働く場所、つまりワークプレイスをつくり、これらの拠点は全て月額1万5,000円(税別)で使い放題となります。九州全域の拠点が使い放題という、これまでのコワーキングオフィスにはなかったスケールが特長の事業です。
具体的には、2020年春から宮崎市内で4つの直営ワークプレイスの運営をはじめます。それと同時に、九州内にある既存事業者のコワーキングオフィスも会員が利用できるよう、約30ヶ所と提携を進めています。
旅をしながら働ける九州をつくり、社会を変えていこうとしています。親会社の一平HDの経営理念が「世界があこがれる九州をつくる」なのですが、この新しい社会インフラによって日本中、世界中からワーケーションをする人々を九州に呼び込み、ワーケーションの聖地と呼ばれるようになるかもしれません。
この事業については村岡さんと2年近く議論を重ねて、ようやく実装段階に入ったところです。
村岡:2,000km圏内に東アジアの主要都市が存在する福岡は、「アジアの玄関口」として多数の航空路線が就航。空港から中心部へも地下鉄で約10分ほどとアクセス良好なため、多くの国際会議なども行われています。
まずは九州で暮らす人や国内から出張してくるビジネスマンの利用を想定していますが、長期的にはアジア圏のビジネスマンの利用も想定し、福岡での拠点整備も早急に取り組むつもりです。
馬渡:宮崎から社会実装を始めて、九州全域に広げていくというのが僕たちの最大のミッションです。誰もが使いやすいワークプレイスを九州全域に整備して、一平HDの経営理念である「世界があこがれる九州」を実現していきます。
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